呉線・瀬戸内マリンビューに乗る
今戦艦大和が話題になっている。映画「男たちの大和」が封切られ、そのロケ地になった尾道市向島造船所の実物大戦艦大和のセットや呉市に昨年オープンした大和ミュージアムが脚光を浴びている。そんな中、JR西日本は05年10月から呉線に臨時快速「瀬戸内マリンビュー」の運行を始めた。呉線は山陽本線三原-呉-海田市を海岸線沿いに結ぶ87キロの単線電化の路線。明治36年に海田市〜呉間で開業し、昭和10年には呉〜三原が開通して現在の全区間が出来上がった。そして昭和45年には全線電化が完成。戦前は海軍の呉鎮守府と広島を結ぶ軍用線の色濃い路線として重用され、戦後は山陽本線の補助線、地方交通線としての使命を帯び広島芸難地方の経済や生活を支える鉄道として活躍してきた。そんな予備知識を胸に三原駅12時29分発の観光列車「瀬戸内マリンビュー2号」に乗ることにした。
この列車はレールを瀬戸内海にキハ47型を改良した車両を大型クルーザーに見立てた2両編成の気動車快速。ヘッドマークはオールと浮き輪でデザインし、車内には海図・羅針盤・丸窓などもあってクルーザー仕様のデザインが乗る人の心を瀬戸内海の船旅に誘う。この観光列車は臨時快速なので普通切符や青春18切符で乗車できるが、510円追加して指定車に乗るとよりクルーザー雰囲気を満たしてくれる。1号車は2号車の自由席車両と異なり車内レイアウトもより豪華に、客室添乗員マリンメイトも乗車して観光案内をしてくれる。JR西日本はこの列車を運行するに当たり停車駅8駅に新しい駅名標と観光MAPを設置した。
その観光と云えば三原駅構内には三原城跡へ通じる出入り口があり三原城石垣などを見ることが出来る。定刻、マリンビューは座席指定車に6人の乗客を乗せて発車。列車は三原駅を出るとすぐに沼田川を渡り左にカーブして三菱重工三原工場を車窓に見ているとやがて須波駅だ。近くにすなみ海浜公園があって車窓からは瀬戸内の海が太陽にキラキラ輝いて美しい。そして左手にKOYOドックの赤い大型クレーンが見えてくると安芸幸崎駅。しばらくは瀬戸内海の多島美が楽しめる区間を列車は制限速度もあってか波打ち際をゆっくり走る。マリンメイトが遠くにしまなみ海道の多々羅大橋が見えると教えてくれた。12時50分列車は最初の停車駅、忠海に到着。忠海港からは戦時中毒ガスを製造し今は国民休暇村としてレジャー島に変身した大久野島へのフェリーが就航し夏には多くの観光客で賑わうと聞く。
呉線は三原駅と呉駅の区間を「瀬戸内さざなみ線」の愛称で呼ばれ車窓からの多島美を売り物にしている。列車は竹原火力発電所のある安芸長浜、大乗を過ぎて竹原駅に着いた。かぐや姫の駅名標に出迎えられた竹原は「安芸の小京都」と呼ばれ、駅から徒歩10分にある町並み保存地区は塗ごめ壁や格子窓の家並みが往時を忍ばせる。上り列車との交換があってマリンビュー2号は13時2分発車。自由席車は沿線の住民や学生さんで座席はほぼいっぱいだ。吉名を過ぎて左車窓に造船所が見えてくると杜氏のふる里・安芸津駅に着く。列車は県立豊田高校を左に万葉集に詠まれている風早を通過して沖合にカキ養殖のイカダが目に入ってくると次の停車駅、安浦が近い。
この地区は年間4000tの出荷量を誇る広島カキの一端を担っているとマリンメイトが説明してくれた。2面2線の安浦駅からは野呂山を右にみながら安登を通過して列車は筆づくりの町、安芸川尻に到着。この駅からは呉、広島への買い物客なのか多くの乗客が乗ってきた。そして列車はかつて四国と本州を結ぶ国鉄仁堀航路のあった仁方を過ぎ呉線の運転中枢の駅・広駅に着いた。広駅構内の広さは呉線随一でここを起点にクハ103、クハ104、クハ115系等の電車が東は三原へ、西は広島へ折り返し運転している。ここまでは観光路線の色彩濃い呉線だか広から西は快速安芸路ライナー・通勤ライナー等の広島方面へのダイヤが多数組まれ通勤通学路線としての顔を覗かせている。瀬戸内マリンビュー2号はそんな広駅を13時52分に発車して終着呉駅に向かった。
やがて呉線では一番新しい平成14年に開業した1面1線の新広駅、かつて呉市電が駅前から走っていた安芸阿賀駅を過ぎ2582mの呉トンネルを抜けると旧海軍の街、呉駅2番ホームに到着した。私の観光列車「瀬戸内マリンビューの旅」も駅から徒歩5分の所にある大和ミュージアムへ出向くことで最終章を迎えた。
大和ミュージアムは正式には呉市海事歴史科学館として平成17年4月に開館。1/10の戦艦大和などの展示をとおして呉市の産業史や造船技術の最先端を紹介し平和の尊さを教えてくれる。「海軍さんのカレー」を口に往時の呉の街に思いを馳せながら駅に戻った。
呉駅は明治36年に開業し現在の駅舎は昭和56年に建設された4代目の橋上駅ビルで「クレスト」という専門店街を併設した地方にしては珍しい立派な駅だ。呉線は呉軍港と広島を結ぶ路線として明治36年に呉〜海田市間で開業し今年で103年を迎える。現在、広〜広島間には快速安芸路ライナーや通勤ライナーが走り広島までを30分余りで結ぶ。呉線も時代の流れと共にその使命も大きく変化してきた。

呉―海田市間には戦前軍事輸送増強のために複線化を試みたトンネル等が残り、その路線は現在都市間輸送増強のために再び複線化しようという動きもあると聞く。また呉〜三原間は瀬戸内海の観光資源を生かした情緒ゆたかな観光ローカル線としての生き方を模索しているようにも見える。観光列車「瀬戸内マリンビュー」も期間限定の臨時快速列車としてこの3月31日までの運行だが、早晩定期化され呉線の目玉観光列車として定着することに期待したい。100年余り地域住民を支えてきた呉線は単なる沿線住民の生活路線のみではなく、豊かな瀬戸内海の観光振興をも図るこれからの鉄道事業の起爆剤として活躍することだろう。そんな想いを胸に車窓の風景を楽しんでいるうちに、快速安芸路ライナーは海田市駅を通過して終着・広島駅に到着した。

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観光列車「瀬戸内マリンビュー」
マリンビュー車内
客室添乗員のマリンメイト
クルーザー感覚の指定席車内
観光列車点描
(写真をクリックすると拡大します)
竹原町並み保存地区
呉駅外観
呉駅構内
大和ミュージアム
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呉駅から海田市・広島駅へ
2006/3/9UP
赤穂線に乗る
観光用新駅名標
自由席乗車口
クルーザー型の丸窓
サロン風の車内
瀬戸内マリンビュー
広駅構内の113系と103系電車