自動車産業関連の本の紹介(2003年V)


『グローバル戦略会計』(製品開発コストマネジメントの国際比較)  岡野 浩著  2003年12月20日
有斐閣  3,500円+税


 第1章  グローバル戦略と会計 −社会的・制度的実践としての会計− 
 第2章  戦略・組織・原価企画 −コストマネジメントの革新− 
 第3章  原価企画の海外移転・海外展開 −トヨタ自動車における事例を中心として− 
 第4章  ボーイングにおける原価企画 −顧客との情報共有と業績評価− 
 第5章  ダイムラー・クライスラーにおける原価企画と企業連合体− 
 第6章  マニエティ・マレーリにおける原価企画 −人材マネジメント・目標管理制度(MBO)との接合− 
 第7章  グローバル戦略会計の射程 

 会計は企業が行った経済活動を記録する財務会計と、経営管理に役立てる管理会計(management accounting)がある。 管理会計はコストマネジメントとも言われる。 コストマネジメントは、原価維持(cost maintaining)、原価改善(kaizen costing)、原価企画(target costing)に細分化される。 この本の表題にある『グローバル戦略会計』とは、コストマネージメントの中で最も戦略的な原価企画のグローバル化について書かれている。

 日本企業はグローバル化の進展によって、JIT(just in time)などの生産システムの海外移転は既に研究された。 最近では、研究・製品開発がアジアや欧米などに移転されるに伴って、マネジメント手法も移転され始めている。 製品設計および生産プロセスの設計について、グローバルで統一した考えを持つように変わってきている。

 原価企画は、下記のように定義している。
 製品の企画・開発にあたって、顧客ニーズに適合する品質・価格・信頼性・納期等の目標を設定し、上流から下流におよぶすべてのプロセスでそれらの目標の同時的な達成を図る、総合的利益管理活動(39ページ)
つまり、「どの活動が本当に顧客にとって価値を生むのか」および「その活動は効率的であるか」という観点を重視し、顧客にとって付加価値を生み、かつ活動が効果的なものだけが製品に配賦されるべき原価であると考えている。

原価は『発生』の『結果』としてではなく、主体による自主的な『決定』の『産物』として捉える必要がある。 原価の『発生』ではなく『決定』に焦点を当て、生産段階以前の時期において決定レベルでの原価管理を行う。

 原価企画と設備投資企画との分離がある。 原価企画は、設計技術者を中心とする設計図面の改善を行う活動である。 原単位(原材料の量)や加工方法、機能を兼ねる等の捉え方である。 例えば、スポット溶接のショット数を3ヵ所から2ヵ所に変更することである。
 一方、設備投資企画は生産技術部(エンジニアリング部門)が主導的な役割を担って、設備の共用や既存設備の有効利用を行うことである。 例えば、スポット溶接の1ショット当たりの原価を引き下げることである。

 トヨタ自動車の原価管理の特徴を下記のように書いている。
  1. 「たて」と「よこ」の管理
  2. 部品・ユニット別管理
  3. 時系列で見た原価管理の体制(原価企画、原価維持、原価改善)
  4.  「たて」の管理は、車種別損益管理、部門別・地域別損益管理、工場別損益管理の3つである。 「よこ」の管理は費目別管理である。 2番目の部品・ユニット別管理は、車種別に部品・ユニットを横並びに見て、原価低減を横展開するものである。 3番目は開発・設計段階の原価企画、生産・販売段階の原価維持・改善をあらわしている。

     トヨタ自動車は日本企業の中でもトップクラスの経営システムを持っている。 トヨタ自動車の原価管理システムを、日本的ということには若干の違和感を持たざるを得ないが、趣旨にはなんら問題ない。 欧米の伝統的財務管理は、もともとマネジメントコントロールの良し悪しを現す指標に過ぎなかった。 これを直接マネジメントコントロールに使用したため、頭でっかちの考え方と言われた。
     戦略的管理会計は、戦略的プランニング・コントロールの手法として使う方法である。 トヨタ自動車の原価管理は、戦略的管理会計である。 その特徴は、“ルールの埋め込み”という表現を使っている。 直接、マネジメントコントロールに使うのではなく、業務プロセスの強化というワンステップを踏んで、企業業績に反映される性格のものと考えている。

     自動車の場合、VEは販売部門が提案することが多い。 ボーイングの場合、商品の企画段階からユーザーの話しを聞く、市場主導型の開発プロジェクトを行っている。 それは「ワーキング・トウギャザー」と呼んでいる。

     ダイムラークライスラー社は、合併前の1992年2月から機能別組織をベースとしたマトリック組織から、プロジェクトチームを強調した『プラットフォーム・チーム』に移行した。 企業家精神を高揚し、コストおよび投資マネジメントに一層の焦点をあてることを目的としていた。
     クライスラー社は原価企画を推進するために、サプライヤーとの関係の強化である。 1992年から一次部品メースーを主に導入したSCORE(supplier cost reduction effort)プログラムである。 クライスラー社との年間売上高の5%を、サプライヤーから改善提案を求めた。 ここで注意する点は、「強制」ではなく「ボランタリー」である。

     合併後の1999年に、SCOREはVM&CI(value management & continuous improvement)ととして再編成された。 VA/VE、コストマネジメント、リーン生産ワークショップ活動からなる顧客価値マネジメント(CBVM:customer based value management)とともに統合された。 ダイムラー・クライスラーにおける原価企画の特徴は、目標市場価格から目標利益、固定費、製造原価、輸送費、保険代などを控除した差額が、目標材料費として、個々の部品に展開される。


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