塗装工場
塗装工場(Painting)
1.車の塗装
車の塗装はボディの素材である鋼板の錆を防止し、美観を整えることを目的にしている。
塗装は基本的には下塗り、中塗り、上塗りの3段階の工程があった。
下塗りはボディ鋼板と塗料のなじみを良くするとともに、防錆塗装としても大きな役割を果たす。
中塗りは下塗りの塗装表面を平滑にして、上塗りの仕上がりの美しさを出すサーフェーサーとしての役割を持っている。
外色より安価な塗料を使用している。
そして最後が上塗りで、ソリッド塗装とメタリック塗装がある。メタリック塗装はカラーベース、メタリックもしくはパール層、クリアー層にからできている。
カラーベース塗装の色で車の色が決まる。このベース塗料のみの塗装がソリッド塗装だった。
最近では、カラーベースの上にクリアーを乗せている。
メタリック塗装はベース塗料に鱗片状のアルミ片を混入して、この上に透明なクリヤー塗装をかけ表面を保護したものである。
同様にパール塗装またはマイカ塗装は、アルミ片に石英の粉を付着させたものであり、メタリック塗装とは微妙に輝きが異なる。
白色の塗装は光の反射率が大きく、人の目になじむように、かつては少しクリーム色等にしていた時もある。
最近では、まっ白い色を好むため、マイカ塗装で塗装表面で光を乱反射させて、目になじむようにしている。
下塗りから上塗りまで含めて平均150ミクロン(0.15mm)の厚みしかない。タバコのセロハン2枚分の厚みしかない。
高品質と言われているベンツ車は、日本での塗装品質の評価は決して高くない。
日本のPDIでクルマの塗装を手直していると言われている。
これはベンツ車の塗装品質が低いわけではなく、塗装評価の基準が異なっているためである。
日本人と欧州人の目の能力が異なるのが原因と言われている。
日本人が欧米に行くと、欧米人はうす暗いところでも新聞等が読めるが、日本人には暗いという。
また、日本には四季がはっきりしていて、色を細かな種類まで見分ける能力が欧米人に比べて高いと言う。
決して、日本の塗装技術そのものが優れているというわけではない。
日本人は仕上げの良さにこだわるという作り手の態度と、顧客の要望を反映したものである。
最近、VWのポロが車体色を従来の倍程度増やした。いろいろな色が選べるということで好評であった。
これは日本メーカーの小型車にもすぐに取り入れられた。
ただ、一部の日本メーカーには、単に色を増やしただけで、色そのものにこだわりがないように見受けられる。
単にいろいろな色が選べるだけではないようである。
赤・橙・黄色系は暖色と、青・緑色系は寒色と言われている。
暖色で明度と彩度が高いと温かく、大きく見える。寒色で明度と彩度が低いと冷たく、小さく見える。
明度が高いほど軽く見え、明度が低いと重たい感じを受ける。
明度が高く、彩度の低い暖色は柔らかく見え、明度が低く、彩度の高い寒色は硬く見える。
その時、明度差がないほど柔らかく、明度差があると硬く見える。
以前はクルマのデザイン(スタイリング)と関係なく、流行色ということで塗色を決めていた。
言い換えれば、車種にあまり関係なく、塗装工場で塗る色を決めていた。
最近ではスタイリングによって外色を決める方向にある。
トヨタ自動車ではスタイリングのデザイナーの他に、カラーデザイナーがいる。
本田技研のフィットは外色が変わると、クルマのイメージも変わって見えると感じる人も多いと思う。
塗色を変えることによって、クルマのイメージが変わることを取り入れたスタイリングが行われる傾向にある。
塗装の彩度・明度によって、スタイリングによる陰影の見え方が変わってくる。
そのために、スタイリングと外色が密接に関係し、それによって微妙な変化を付けることが多くなった。
特に、小型車ではこの傾向が強いように感じる。
小型車はスタイリングの自由度が少なく、価格も安く、量産を前提にしなければ成り立たない。
しかし、同じスタイリングのクルマが道路に溢れると、消費者の購買意欲は落ちてしまう。
それを避けるために、外色が異なればスタイリングが同じでも受ける感じの異なるスタイリングを重視しているように感じる。
設備面では、外色の多色化に対応した設備が必要となるとともに、低コストで多色化に対応できることが必要になった。
同じラインで多品種を流している工場では、既存設備にある色を塗ることから、車種ごとに選んだ色を塗る必要になると考える。
2.塗装工場の概要
塗装工場は次の4つの工程からできている。
これらの工程の後には炉があり、その後は炉の熱を冷ます待避ラインがあって自主検査を行っている。
つまり、これらの工程は自律完結ラインとして成立っている。
- 前処理+下塗り塗装
- シーリング
- 中塗り塗装
- 上塗り塗装
日産の九州工場の塗装工程の工程図 が参考になる。
中塗りと上塗り工程は、3階がエアクリーナーがあって、埃のない空気を塗装ブーツに送っている。
2階は塗装ブースになっている。
塗装ブースでボディに付かない塗料は床下の水の中に落とす。
この水処理が1階にある。
塗装ブースのある部分は、塗装工場の他の部分より高くなっている。
中塗りと上塗り塗装の後には、乾燥炉がある。
乾燥炉からは煙突が出ているので、航空写真等で見ただけでほぼ塗装工場と区別が付く。
乾燥炉の後は、ボディの熱をさます退避ラインがある。
順番が逆になったが、前処理と下塗り塗装は2階建て程度の高さがある。
上には湯洗、水洗や下塗り塗装槽があり、下は水処理であり、更に地下には水処理水槽がある。
下塗りしたボディのことをEDボディとも呼ぶ。
EDはElectric Dippingの略であり、メッキと同様に槽の中にボディを入れて、電気を通す。
槽から出したときに電解液が排出されるように、ボディには孔や隙間が開いている。
それらの孔は樹脂プラグや金属プラグでふさがれ、隙間はシーリングで塞がれることが多い。
検査等で人が作業行なっている場所は、塗装工場内に長屋のような蛍光灯を縦に並べたスラット・ラインで行なっている。
その中で、検査やバフの作業を行なっている。
スラット・ラインの間をボディが動くようになっている。
塗装工場の設備メーカーは専業メーカーが多く、数が少ない。
自動車メーカーの設備は、同じ会社の設備を入れていることも多く、似たりよつたりである。
そのためもあって、塗装工場の一般社員の出入りを規制している。
見学コースからも外れ、実態がよくわからない工場でもある。
3.前処理+下塗り塗装
塗装の障害となるのは錆と油である。
鋼板に発生する錆は、鋼板の品質の向上等と防錆油によって防いでいて、前処理工程では少量の錆しか前提として処理していない。
一方、油は防錆油やプレス加工時、特に絞り加工を行う時、潤滑油として使用している。
前処理はこの油をとる脱脂工程と、さび取り、塗装が鋼板に付きやすくするための表面調整と、リン酸化皮膜の作成の4つの工程である。
脱脂工程は化成ソーダーを使用して油脂を取る。
錆び取りは、塩酸や硫酸を使かう。
電着塗装(Electro Diptation)は1963年にアメリカのフォード社が、自動車ボディの下地塗装に採用して以来、急速に全世界の自動車工場に普及した。
電着塗料の原理は電気メッキと同じである。
タンク中に水溶性または水分散形塗料を入れ、塗装する伝導性被塗物である自動車ボディを浸漬する。
自動車ボディを陰極(−)とし、タンク陽極(+)とし、この間に通電すると、荷電を持った樹脂粒子は電気泳動によって自動車ボディ面に移動して析出する。
電着塗装開発の初期には、アニオン形が主流であったが、現在では防食性に優れ、つきまわり性が向上したカチオン形に替わっている。
自動車ボディ作製段階で最も多く使用するスポット溶接では、溶接面の周囲に微小ながら隙間ができる。
電着塗装面では電気抵抗が上昇し、抵抗の少ないところに塗料が析出していって、つきまわり性が向上する。
その後、電着槽から引き上げられた自動車ボディは水洗して余分な塗料を除去して、焼き付けを行う。
前処理から電着塗装設備の大手企業が、
パーカーエンジニアリング(株)で、自動車の塗装設備の様子が見られる
日産の追浜工場の前処理工程(水洗)
日産の九州工場の現着塗装工程
日本パーカライジング(株) 前処理剤
4.シーリング
スポット溶接では板金部品と板金部品の間に、微細な隙間があることは既に書いた。
その隙間から室内への水漏れ防止のために、ビニール樹脂を主としたシーリング材で目止めを行う。
同時にタイヤハウス内等に飛び石等による塗装の剥落防止のためにアンダーコートを塗る。
シーリングとアンダーコートは大部分が自動化されロボットで塗られる。
また、フロアーに固有振動や共鳴を防ぐためのサイレンサーとして、防振材を敷く。
かってはアスファルトシートとも呼ばれていた。今はPVCとも呼ばれ名前のとおり塩化ビニールでできている。
かつてはシートをフロアーに敷いていたが、最近ではPVC樹脂を直接クルマのフロアーに塗布することもある。
その後シーリング炉で焼付けを行い、樹脂をボディに硬化させる。
参考ホームページ
5.中塗り・上塗り塗装
中塗り・上塗りは安定した塗装面を得るため、専用のブースの中で静電塗装機を使って行っている。
静電塗装機は被塗物、つまり自動車ボディを陽極(+)に、塗装噴霧装置を陰極(−)として、この間に数10kVの高電圧を加えて静電界を形成する。
塗料粒子を(-)に帯電させて噴霧すれば、静電引力によって被塗物に吸着される。
これにより塗着効率とつきまわり性が向上する。
中塗りは、上塗りを綺麗に塗るためのサーフェサーの役割をしている。
上塗りは、色の付いたベース塗料の上に、最近透明なクリアーという塗装を塗ることが多い。
クリアーはフッ素樹脂塗料が使われていることが多い。
かつて、白色は水垢が目立ち、青や黒は塗装面が少し軟らかく、傷つきやすかった対策である。
カラーベース塗料の上にクリアー塗料を塗り、一度に焼付けする。
メタリック塗装やマイカ塗装は、メタリックもしくはマイカを含むカラーベース塗料の上に、クリアー層を塗っている。
この場合は、ベース塗料を塗って、表面が乾いた状態で、その上からクリアー塗装をし、焼付け炉に入れる。
かつては下塗り、中塗り、上塗りの3コート3ベークでした。
下塗り、中塗り、上塗りごとに焼付け炉に入れていた。
最近では、中塗りした後に焼付け炉に入れずに、その上に上塗りして、その後に焼付け炉に入れる。
これによって、コストの削減とCO2排出削減ができる。
一部の軽自動車や小型車で行なわれている。
中塗り廃止ラインとも呼ばれている。
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右の写真は米国日産スマーナ工場の上塗り塗装工程と思われる。
静電霧化方式の塗装方法で、最終のクリアーを塗る工程と推測される。
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 米国日産スマーナ工場 |
静電塗装装置には、静電霧化方式とガン型方式がある。静電霧化方式はランズバーグのベル型とも呼ばれている。
静電霧化方式はディスクの回転で塗液が薄膜なり、電荷の反発力によって微粒化が進行する。
ガン型方式は通常のスプレー塗りと同様に塗料圧力により、微粒化した塗料粒子を帯電させて静電的に吸着させるものである。
静電霧化方式は塗着効率が非常に高く、ガン型方式は塗料効率は劣るものの、取扱いやすい利点がある。
下記でみられるのは静電霧化方式であり、レシプレータに取り付けられており、左右・上下することによって塗装する。
ガン型方式は塗料を叩きつける感じがあるが、扱いやすい面がある。
一方、静電霧化方式は乗せるような感じの塗装になるといわれている。
そのため、まずガン型方式で塗り、その後静電霧化方式で塗ることが多いと言われている。
その後、焼付けのための炉に入る。
焼付を行うことによっと鮮やかな発色があり、耐久性が向上する。
最近の傾向として、環境対策とコスト削減の意味から、多関節ロボットで必要な所のみに塗料噴射し、塗料を節約している。
なお、NUMMIの塗装工場での焼付け温度と時間が下記のように記されている。
| 下塗り | 340゜F(171゜C) | 40分 |
| シーリング | 320゜F(160゜C) | 20分 |
| 中塗り | 300゜F(149゜C) | 30分 |
| 上塗り | 285゜F(141゜C) | 30分 |
となっている。
1980年ころから、静電塗装機が主流になってきた。
それまでは町の自動車板金修理店と同じようにスプレーガンを持って塗装していた。
当時の機械化は、溶接ロボット同じ多間接形ロボットを使い、作業者が行っていた作業をそのまま行っていた。
静電塗装機が自動化を大きく進めた。
作業者は塗装の修正を行うだけになった。
NUMMIの乗用車の塗装時間は9時間、ピックアップトラックは12時間と書いてある。
一方、本田技研の鈴鹿工場では塗装時間は約4時間と書いている。本田技研の鈴鹿工場の時間は、純粋な作業時間のみ時間であると推定される。
実際には4回も焼付けを行うので、次の作業に取り掛かるには車体が冷えるのを待たなくてはならない。
その上に、下塗り・中塗りの後にボディの凸凹点検や、塗装点検と空研ぎ・水研ぎ作業がある。
空研ぎ・水研ぎ作業は、塗装表面を平らにし、塗装表面に細かい傷をつけ、上から塗る塗料の密着性を高める。
上塗りの後は塗装点検とつやを出すためにバフを掛ける作業がある。更にそれらの作業の間に待ち時間がある。
という理由で本田技研鈴鹿工場も塗装の時間としてはNUMMIと同様の時間が掛っていると推測される。
これらのことより少し乱暴な計算を行えば、下塗り、シーリング、中塗り、上塗りの工程は、作業時間と焼入れ時間を合わせて約1時間程度掛かっているものと推定できる。
それらの作業の後の点検作業等が約1時間ずつ掛かると推定される。それで塗装作業は全体で8時間という数字が出てくる。
ここでNUMMIの乗用車とピックアップトラックで塗装時間が異なっているのは、トラックの塗装は2トーン塗装になっているため、上塗りを2回繰返しているものと思われる。
1度上塗りし、その後マスキングし、再度上塗り塗装を行う。このため、3時間程度余分にかかっているものと想像される。
ボディの凸凹点検や、塗装点検と空研ぎ・水研ぎ作業、塗装の検査やバフ等は、スラット(slat)ラインと呼ばれる所で行なわれる。
スラットラインは蛍光灯が縦に並んでいるラインである。
塗装工場の中のラインの一部に、長屋のような建物を作り、その中に蛍光灯を縦に並べている。
スラットラインの周囲には、ボディの搬送ラインが並んでいる。
例えばツートンカラーの車の扱い。ツートンカラー車は塗装工程を2回通らなくてはならない。
単色の車と同じ扱いをすれば当然、納期が遅れる。そこでツートンカラー車は通常より仕掛かりを早める。
同時に、時間のかかる塗装工程では後に乗っている単色の車を先に出せるような追い越しラインを設ける。(90ページ『トヨタ「奥田イズム」の挑戦』)
2000年4月に、川崎重工業は神戸製鋼所の塗装ロボット部門を買収し、神戸製鋼所のロボット開発・営業・保守サービス業務を全面的に引継ぐ。
なお、神戸製鋼所は、塗装ロボットで約3割のシェアーを占めていた。
このロボットはガン型静電塗装装置を多関節ロボットに付けている。
塗装の補正等に使われる他、中塗りではボンネットやトランクルームの中を価格の安いメラニン系の同系色の塗料を塗ったり、ドアのサッシュ等の黒塗りに使われることが多い。
なお、黒塗りの場合はマスキングして上塗りを行う。
最近では、マスキングして黒塗り塗装を廃止して、上塗り塗装した上から黒いテープを貼るのが主流になっている。
その他の塗装機械業者は、
塗装ブースと焼付け炉の大手企業は次のとおりである。
なお、
日産の九州工場の塗装工程の工程図 では、省略してあるが、
前処理にいったん入ったボディは、途中で止めることができず、必ず電着炉までの処理を終えなければならない。
同様に中塗り、上塗り工程でも塗装の途中でラインを止めることはできない。
そのときにラインピッチを変えることもできない。
塗装ラインでは塗装機械をフル稼働させるために、バッファーとしてのボディストックが置いてある。
更に、昼休みや夜間には、人の作業が必要になる次の工程に進めることができないので、ボディを一時的に貯える待避ラインがある。
この待避ラインを含んだ塗装ラインは『塗装技術便覧』が詳しい。
なお、下塗りボディの事は電着塗装のエレクトロ・ディプテーションの略のEDボディと呼び、塗装ボディをペイント・ボディと呼び、P/Bと書く。
塗装工場は下塗りからシーリングまでは1本のラインで、入ってきた順番で流れている。
しかし、中塗りではバイパスラインがあったり、上塗りでは複数のラインがある。
そのため、その時々に流れるボディの塗色によって、待ち時間が異なるため、塗装時間は異なる。
トヨタ自動車の米国工場では、生産開始時に水道水の成分と女性作業員の化粧によって、自動車塗装に悪影響があったという。
これほどまでに塗装はデリケートなものである。(週間ダイヤモンド8/14,21号1999年,49p)
一般的に、塗装工場は埃を嫌う。
これに対する対策が行なわれているように言われているが、実態は食品工場に比べればおそまつなものである。
埃そのものは塗装工場の外から入ってくるだけでなく、塗装工場内でも空研、水研、バフ等によって発生している。
塗装ブーツ内では、一見埃に対する対策は万全のように見受けられる。
塗装ブースでは、VOC(揮発性有機化合物)を発生させる溶剤型塗料を使用している。
水性塗料に切り替わっていても、クリアーでは溶剤型塗料を使っていたりする。
工場内のVOCを外に排出しないために、塗装ブーツ内の空気を乾燥炉のボイラーで燃焼させたり、触媒と熱で分解している。
そのため、塗装ブーツ内はいつも負圧がかかり、外から埃等を含んだ空気がボディのコンベアを伝わり入っている。
食品工場では常にフィルターで浄化した空気を入れ、加圧することによって、そとから埃等が進入しないようななっている。
しかし、塗装工場の場合、作業エリアを分けているだけで、工場全体の空気の流れを考えていない。
塗装ブーツのような1社の設計で作られるものは、空気の流れを考えて設計されている。
だが、部分最適を実現しているだけで、工場全体を考えたものにはなっていない。
工場内には、エアシャワーの装置を付けている工場もあるが、ほとんど効果はないものと考えられる。
工場の床には電気配線がむき出しになっていて、埃のたまり場になっている。
コンピュータルームのような高床にして、配線を隠すようにすべきだという極端な考えも存在する。
その一方で、見えないところには埃をかぶった書類が山積みになっていたりする。
塗装工場は埃を嫌うことを名目に、社内からも実態がかくされ続けてきた。
工場全体の空気の流れを考え、水性塗料対応工事に合わせて改良が加えられるべきであろう。
6.水系塗料
2006年4月からVOC(揮発性有機化合物)規制に対応し、車体の塗装工場の水系塗料導入している。
既存工場ではVOC排出毎時10万立方メートル以上が対象で、2010年度末時点で700ppm以下である。
2006年度以降の届け出た新設工場は400ppm以下の排出基準を満たすことが義務付けられる。
従来のシンナー(有機溶剤)の使用では作業者の健康に良くないためと、シンナーが大気に放出され自然環境に良くないためである。
従来から、下塗りは水性塗料である電着塗装が用いられていた。
外観に大きく影響する中・上塗り塗料には揮発性有機化合物の多い溶剤型の塗料が使われていた。
それは、溶剤型の塗料に比べて水性塗料は仕上がり外観や光沢などが見劣りする傾向があり、溶剤型塗料はVOCの発生量は多いものの外観を重視する自動車塗装などには不可欠な塗料だった。
水系塗料は、従来から使用している油性塗料がベースになっている。
塗料は塗装するために希釈する。水系塗料では希釈剤が従来のシンナーから水に変えている。
油と水は混ざり合わないので、エマルジョン化させ、混ざり合うようにした塗料である。
それ故に、VOCの42%削減であって、VOCがほとんどゼロにはなっていない。
ボディに塗装した時点でかなりの溶剤は蒸発するが、水性塗料の場合は熱を加えるだけでは乾燥しないので、風(実際には温風)を当てて乾燥させている。
溶剤が乾燥した時点では、従来の油性塗料も水性塗料も同じであり、その後焼き付けを行なう。
中・上塗りでは水性塗料に代わりつつある。
ただ、表面に塗るクリアーは、まだ油性塗料が主流のようである。
水系塗料に切り替えるのに、100億円かかるという記事がある。
これは極端な例であり、塗装場所から焼き付け炉の間に、乾燥のための場所が簡単に確保できれば、100億円はかからないはずである。
全く場所がない場合は、100億円程度かかるかもしれない。
日産ホームページより 九州工場塗装工場
塗装工場では、前処理等の水処理にかなりのコストがかかる。
前処理では、ボディに塗ってある防錆油をとるためにアルカリ洗浄(化成ソーダ)や塩酸もしくは硫酸を使用する。
そのため、水の中に鉄分や亜鉛(メッキ鋼板)が溶け出している。
そのため、排水は焼却される場合が多い。一部では、セメント工場の冷却水に使われることもある。
塗装ラインでは、噴霧した塗料の全てがクルマのボディと付くわけではなく、一部の塗料は床下等の水の中に落とされる。
最近では、この塗料カスは遠心分離機にかけられ、分離されることが多い。
また、床面の網や塗装冶具に付着した塗料は、ブラストショットで塗装を掻き落とし再利用する。
その時にも、塗装カスが発生する。
埋め立てゴミゼロを目指している場合、この塗装カスや排水処理の汚泥は、セメントの材料として使われることが多い。
同様に、塗装工場が発生する温熱を使って、排水しない工場の場合、循環して水を使用すると、水の中の金属イオン濃度が高くなる。
金属イオンの高くなった水も同様にセメント工場の冷却水として使用することが多い。
7.粉体塗装
粉体塗装は新しい塗装方法である。
塗料を細かい粉末状(20−30ミクロン)にして、静電気でボディに付着させ、熱を与えることで塗装面としてできあがる。
一度の塗装で厚膜が得られる特徴がある。
現在、有機溶剤(シンナー)の代わりに水を使用した水性塗料が、作業環境も良く、環境にやさしいとされ、有機溶剤の塗装に置き換わっている。
水性塗料に置き換えても、塗装時に余った塗料は風圧によって塗装ブーツの床下の水といっしょに排水される。
そのため、排水処理施設が必要であり、余った塗料は産業廃棄物として処理しなければならない。
粉体塗装の場合には、余分な塗料は回収、再利用される。
そのため、従来のような水処理設備が不用になり、環境にやさしい塗装方法と言われている。
粉体塗装は、近い将来自動車ボディの塗装にも使用されるものと考えられる。
下塗りはボティへの塗料の付きまとわり性が良く、塗料の回収・再利用が行われているため、現在のED塗装が続けられるものと考えられる。
粉体塗装が利用されるのは、有機溶剤塗料や水性塗料が使用されている中塗り、上塗りであろうと考えられる。
粉体塗装は余った塗料を回収するため、同じ色を続けて塗る場合に使用されている。
ボディの塗装では1台づつ異なった色にボディを塗るため、塗装色ごとにブースを設ける等の対策が必要になるものと考えられる。
現在粉体塗装は、小さいものの塗装に向いていると言われている。
クルマではアルミホイールの塗装に使われている。
ドイツではBMWの塗装に使われていると聞くが、日本ではボディへの使用は聞いていない。
8.塗料の資材手配
塗装工場で塗られる塗料(上塗り)の種類は、ある車種の塗装色の数と同程度であり、そんなに種類の多いものではない。
塗料は生産開始の3日前の車体色の色巻き替えによって影響を受ける反面、調達期間が長くかかるため、簡易調達方法がとられている。
塗装会社の社員が工場内の在庫を見て、在庫を補充する方式が取られる。
時々、書物に書かれている“工場の外にタンクがあって、塗装会社の社員が定期的に残量を見て、補充する”は、下塗り塗装のことである。
9.塗装で最も重要なこと
塗装で最も重要な事柄は、何色に塗るかである。
塗装工場は設備中心の工場で、その設備は日本パーカライジング、大気社とダイフク等のほぼ同じ設備を使っている。
埃を嫌うこともあるが、設備が同じで歩留まりが違うと技術の差が明確になってしまうため、立ち入りを制限していることが多い。
でも、塗装はほとんど機械が行なうが、どの色を塗るかは人が決めなくてはならない。
パステルカラーは、微妙な色合いが消費者の購買態度に大きな影響を与えている。
黄色系統と赤・紫系統のパステルカラーは、色調が難しい。
青色系統も同様に難しいが、青系統が好きな人が多く、色調が少し異なっても、それはそれで好きな人が多い。
例えば、黄緑色は色見本で見たときよくても、大きな面積を塗ると黄色が強くなる傾向を持っている。
しかし、工場ではお客様のことを考えず、色見本に合っていれば良いと考えている。
塗装工場で仕事をしている人たちは色を塗ることのみしか考えず、色についての知識を得ようと考えない。
一般的に、工場の人たちは積極的に自ら知識を獲得することをせず、その知識を活用しリーダーシップを発揮して企業を良くしようとは考えない。
その結果、工場の人たち、もしくは生産部門の人たちは経営管理者には向いていない。
それらの人たちを経営管理者にすると、企業は破綻するであろう。
参考ホームページ
参考文献
自動車工場の概要,
車体工場,
塗装工場,
艤装工場,
部品納入,
エンジン工場等,
新車開発概論,
新車開発(モデル決定まで),
新車開発(モデル決定以後),
プラットホームの統一について,
開発センター,
開発主査(チーフエンジニア),
クルマの安全問題について,
クルマの安全問題(衝突実験),
クルマの環境問題T,
クルマの環境問題U,
燃料電池自動車,
電気自動車,
リサイクル,
欧州の自動車リサイクルについて
ホーム,
国内の自動車関連サイト,
自動車部品メーカーT,
U,
海外の自動車関連サイト,
自動車ニュース・雑誌,
モーターショー,
経済レポート,
ISO関連(品質、環境、労働安全),
自動車産業関連の本の紹介,
ビジネス本の紹介,
自動車工場の概況,
生産管理講座,
Do It Yourself,
コーヒーブレイク