車体工場

車体工場 


 第一世代の工場ではプレス部門と溶接部門は独立した工場であった。 第二世代以降の工場ではこの2つの部門は連携することによって、1つの工場になった。 更に、プレス部門が段取り替えの短縮によって、後工程である溶接部門に生産を同調して連携し、運搬の効率化を図っている。

 Youtubeでは車体工場の様子を、ブランキング、プレス、溶接組立から塗装工場の原着塗装(下塗り)までを見せてくれます。

 BMWの工場

 Miniの溶接組立から塗装工場までを紹介しています。

 Miniのオックスフォード工場No.1


プレス部門(Stamping)


 自動車会社のプレス部門は、通常次の2つの工程から成り立っている。 自動車工場では、大物プレス部品を扱うので、板取り効率を優先し、次の2つの工程に分かれている。

  1. 鋼板のコイルから板取りするシャー(ブランキング)の工程

  2. 板取りした鋼板をプレスする工程

 一般に、鋼板コイルの納入、シャー(ブランキングシャー)、プレス、立体倉庫、溶接部門と直線的にレイアウトされ、運搬のムダを排除している。 これはプレス機械の振動防止技術が進んだから、振動に弱い車体ラインとプレスは隣接できた。
 小物プレス部品では、この2つの工程が一体となった順送プレスもある。

 プレス工場は、自動車工場の中では高さの高い工場である。 プレス機械そのものが高さが高い。 更に、その上に天井クレーンが付いていて、金型を運んでいる。 工場内部は、大きな四角な箱のような形をしたトランスファープレスや、大きな積み木を立てて並べたようなダンデムプレス機械が設置されている。 それらプレス機械の間に、金型置き場が点在している。 工場の一角には、これからプレスする板金(ブランクと呼ぶ)と、プレス後の製品置き場、そのパレット置き場がある。 次に述べているように、ブランキング・シャのある工場、ない工場がある。 ブランク、プレス部品やパレットは、大型フォークリフトで運んでいる。

 プレス機械の下には、ピットの孔が開いていて、プレスで切り落とした板金が落ちるようになっている。 落とした板金の切れ端は、コンベアーでスクラップベーラに運ばれる。 スクラップベーラは、それら不要になった板金を四角状に固める装置である。 スクラップベーラで固められた鉄は、鋳造工場等で使われる。 ボディの床下等の板金には、メッキ鋼板が使われているため、それらの鉄を使う鋳造工場ではメッキの亜鉛をとばす工程が必要になる。


シャー(ブランキング)工程


 自動車に使用される鋼板は、通常ホットストリップミルで1〜2ミリの厚みにされた後、コールドストリップミルでさらに薄くされる。 製品はそれぞれ熱延鋼板、冷延鋼板と呼ばれる。自動車には熱延鋼板も使われるが、大半は冷延鋼板が使われる。  鋼板コイルはシャー(ブランキング)で板取されてからプレス機械にかけられる。 板取りされた鋼板をブランクと呼ぶ。 シャーにはコイルから取り出すアンコイラーが取付けられている。

 使用する鋼板はコイルセンターと呼ばれる会社で、加工されることも多い。 特に、協力会社では、ほとんどコイルセンターで加工された鋼板が使用されている。
加工の種類には下記がある。

  1. スリッター(フープ製)
     コイルを縦に割った形の製品
  2. レベラー(シート製品)
     コイルを横にカットした長方形の製品、フープ製品をレベラーにかけて更に小さいシート製品を作ることも多い。
  3. ブランキング(ブランク)
     金型を使用し、任意の形状の鋼板を切り抜く、自動車メーカーの大型プレス機で使用されることが多い。

参考ホームページ


プレス工程


 自動車工場の中で量産効果が重視されるのが、プレス工場である。 金型の中には、油圧で孔を明ける機能がついている。 孔の明け方によって、ひとつの金型で複数の種類のプレス部品をとることも少なくない。 その場合には、数量の少ない部品から、プレスしていく。
 「大量生産の効果をもっとも発揮するのは、プレス及びプレスからできてくるボデーの製作である。 したがって自動車工場は、プレス工場が1つの標準の大きさに達しなければ、相手と競争することはなかなか難しいのである」(1996年最高顧問・豊田英二)
 「(金型でつくる)単品部品の種類は抑える必要があるが、“組み合わせ”でつくる組立部品の種類は、顧客が要求するかぎりいくら増えてもかまわない。 いまは“組み合わせ”は(電算機による自動化)システムで対応しているのだからコストもかからない」(1993年専務(当時)・和田明広)(100ページ『トヨタ経営システムの研究』)
 プレス機械にはダンデムプレスとトランスファープレスの2種類ある。 ダンデムプレスは一つのプレス機械に1つの金型をセットし、複数のプレス機械を連動させる。 トランスファープレスは1つのプレス機械に複数の金型をセットして、ブランクをこれら金型に順次を送り加工を行うプレスである。 日本の自動車メーカーが1つのプレス部品を加工するのに、最高5組の金型を使用している。 以前はシングル段取りと呼ばれ、10分を切る型交換が言われていた。 しかし、現在では2分で段取りできる自動段取り装置の付いたプレス機械が一般的となっている。 なお、プレス工程はスタンピング工程とも呼ばれている。

 プレス機械は2つの自動化がある。ひとつが板取りした鋼板を、ドラムフィードから金型を次々と流していく自動化である。 トランスファープレスでは、この自動化はプレス機械といっしょになっている。 ダンデムプレスの場合は、上記の (株)オリイメック のホームページに見られるロボットを使って、自動化を行っている。
もうひとつの自動化は金型の自動取付(ロード)、取り外し(アンロード)である。 これらのプレスの自動化は1970年(昭和45年)頃から全自動化していったという。
 それはダブルボルスター型金型交換装置と呼ばれるシステムである。 それは、作業の終了した上下の金型をボルスターという台にのせたまま、左あるいは右にトコロテン式に押出し、同時に次の作業に必要な金型をほぼ自動的にプレス機械に搬入する仕組みのことである。 このような交換システムを利用すると、プレス作業を行っている最中に傍らで、次に使う金型の準備作業を行うことができる。

日産の追浜工場のプレス工程 左側にトラバーサに乗った金型が見える。現在の加工が終るとトラバーサに乗った金型がプレス中央に移動し、自動セットされる。 使用している金型は自動的に取り外され、トラバーサによってプレスの右側に出される。 このような金型交換はQDC(Quick Die Change:急速金型交換)と呼ばれ、1960年(昭和35年)ころから導入されていった。 自動段取りと初品検査までの時間が内段取り時間で、トラバーサによってプレス機械の外に出された金型を撤去して、 次の金型を準備する間の時間を外段取り時間という。

日産の九州工場のプレス工程

本田技研の鈴鹿工場のプレス工程 最後の写真は自動車の左右1組みの部品を同時に加工している。

 金型の段取りを確実に行うために、チェックリスト(QC工程表)をクリアーファイル等に入れ、確実に金型が準備できたかを確認する。 また、金型交換して最初の1枚目は、初品検査として正しいスペックで出来ているかをチェックする。
 完成したプレス部品は通常溶接部門との間に設置されている立体倉庫に保管され、溶接部門に運ばれ溶接組立てが行われる。 この時AGV等の自動搬送車が使われることが多い。 一部は有償支給部品として協力会社(外注工場)に支給され、サブアセンブリーされてから溶接部門に投入される。  プレス部品の不具合は、鋼板の不均衡性による不具合の頻度が多いという。 このことを称して、“コイルは生きている”という表現をしている。 このようなコイル鋼板に起因する不具合の多くは、クッション圧調整によって解消される。 ノックアウトピンやクッションピンと呼ばれる上下の金型にかかる圧力緩衝装置内の空気圧調整(クッション圧調整)を行う。 ただし、どの程度のクッション圧にすれば各製品の要求精度を達成できるかは、主に鋼板の厚さの不均等性、金型ならびにプレス機械・装置の状態によって大きく左右される。 そのため、製品の不具合原因に対して適切かつ迅速に対処できるためには、コイル鋼板、金型、プレス機械・装置の3つに対する的確な知識と豊富な問題処理経験に基づいた不具合原因の論理的推理能力が不可欠である。 (『イノベーション・マネジメント入門』264ページ)
 自動車のボデーというのは、薄い鉄板を溶接やボルト締めでつくる柔らかい箱物なので、溶接の際の歪みとか自重などによって、設計図面に対してどうしても部分的に5ミリ程度は変形する。 ほかにボデーを変形させる要因は、鉄板のロット違いとか在庫期間などの微妙な要因もあり、その数は数十に上る。 ボデーの変形要因管理は、非常に難しい領域である。 そこで、ボデーが変形してもドアとかパネルが相互に干渉しないように、相互の間に一定の隙間を設けたり、変形しても組付け、調整できるようにボルト締め用の孔を、円形ではなく長円形にしたりする。
 前記の記事では触れていないが、トヨタ車のボルト孔は円形である。 トヨタが、ボルト孔を円形のままで前部と後部のドア間の隙間を7ミリから4ミリに狭めることができたということは、数十に上る微妙な変形要因をすべて管理できるようになったということである。 前部と後部のドアの隙間を7ミリから4ミリにする技術というのは、並大抵の技術ではない。(244ページ『トヨタ経営システムの研究』)
 「ドア、ボンネット、トランク・リッド、フィラー・リッドなどの“ふた物”は、全車、組み立てでの調整はなく、締め切りで一発OK。 これは10年前(1970年代末)に確立している。 生産技術とボデー構造の技術の融合した成果だ」(245〜246ページ『トヨタ経営システムの研究』)

表面処理鋼板・高張力鋼板・レーザーミラー鋼板

車体パネルのレーザー加工

プレス工場の生産計画
参考文献


溶接部門(Welding)


 溶接部門(溶接組立てライン)は複数の板金部品を主にスポット溶接によって車のボディを作る工程である。 トヨタ自動車では、溶接組立ライン単に“組立ライン”とのみ言っている。 艤装ラインのことは総組立と呼んでいる。

自動車会社では、100点程度のプレス部品と協力会社がサブアセンブリーしたコンプと呼ばれる部品によってボディを生産している。 3000点強の数のスポット溶接と、スポット溶接できない場所数10点のアーク溶接(ロウ留め)している。 協力会社でスポット溶接するので、自動車工場内でのスポット溶接は2500点程度である。 スポット溶接にはロボットを使用するので、多額の設備費用がかかる。 1台のロボットが行なうスポット溶接は、数点に過ぎない。

 スポット溶接は丸い後が付き、目に見えるボディ外板には使用できない。 また、袋状になってスポット溶接もアーク溶接も出来ない部分、例えばサイドストラクチャーのピラー内部には接着剤が使われる。 また、スポット溶接では、板金と板金の間にわずかながら隙間があく。 それらの隙間は、ほとんどの部分は塗装工場内のシーリング工程でふさがれる。 一部の隙間は、板金が干渉してシーリング塗布用のノズルが入らない箇所がある。 それらの箇所は、プレス部品を組み立てる前にシーリング材を塗る。  溶接組立ラインでは、溶接ロボットだけでなく、ハンドリング用ロボットも必要になる。 搬送装置も使っている。 それらの機器を保守点検する優秀な人材も多く必要としている。

 溶接組立てしたボディのことをホワイト・ボディ(White Body)と呼び、W/Bと書くことが多い。 ホワイト・ボディには、艤装部品を留めるためのナットやボルトが溶接されている。 クリップやタッピン(スクリュー)を付けるための穴も開けられている。 ホワイト・ボディの精度の善し悪しが、最終的なクルマの品質に結びつく。 ホワイト・ボディの良し悪しは、プレス部品の良し悪しで決まってくる。

 日本の自動車会社では、生産ピッチを上げ量産するため、溶接組立ラインは長く、多くの溶接ロボットを使用している。 KD生産を行っている少量生産国では、短くて、コンパクトなラインでボディは作れる。 品質管理さえしっかり行なえば、短いラインでも同じ品質のボディは作られる。 ただ、このような複数のラインを作ると、ラインによる精度のバラツキを調整しにくくなってしまう。 そのため、長いラインを作ることになる。

 ロボットを導入したことによって、1台のロボットが何人分もの人の仕事を行なっているように誤解している。 実際には、1人の作業者の作業をそのまま1台の多関節ロボットが行なっているに過ぎない。
 手作業でスポット溶接をやっていた頃は、(タイマー)電源、コイルとスポットガンがあった。 高電圧・高電流のため、電源遮断機も必要になる。 コイルは天井からぶらさげられ、スポットガンのみを人が操作していた。 スポットガンはスプリングバランサーで吊るし、重さを調整して使っていた。

 最初に、多関節ロボットが導入された頃は、人の作業をそのまま多関節ロボットが行なっていた。 コイルとスポットガンの間には、電源コードと冷却水のチューブがあり、これがボディと干渉する問題も抱えていた。 最近では、多関節ロボットはコンパント化されたコイルとスポットガンを持って作業している。 そのために、スポット溶接の多関節ロボットは大型化している。

 スポット溶接ガンの先端には、銅(合金)のチップを使用している。 作業終了後、このチップ研磨や交換を行なっている。 最近では、自動研磨機もあり、それにも小さいながらコントローラーが必要である。

 それに対して、台数は少ないが、アーク溶接ロボットは小型である。 スポット溶接同様にアーク溶接も、作業者の行なっていた作業をそのまま行なっている。 アーク溶接のガンが小さい分、多関節ロボットは小さくなっている。
 スポット溶接もアーク溶接も人が作業する場合には、足場を確保しなくてはならない。 しかし、多関節ロボットの場合は、アームを伸ばすだけなので、その分効率がよい。 但し、多関節ロボットを設置する場所が必要であり、アームの届く距離も限りある。 スポット溶接の場合には、溶接する部位によってガンの種類を変える必要がある。

 ハンドリングロボットは、重量部を運ぶには有利である。 部品を掴む作業は手作業の方が早いが、重量物を動かすのはロボットの方が有利である。 人が重量物を動かすにはホイッスル等が必要になり、天井にレールが必要で、動かす範囲が決められる。 これに対して、ロボットの場合にはアームが届く範囲で自由に動かせる。

 多関節ロボットにはコントローラが必要であり、ティーチングボックスもある。 ロボットは誤作動の可能性があるため、人と機械を分けるためのフェンスで囲まれている。 コントローラーはフェンスの外側から操作できるように配置されている。

 ロボットで接着剤やシーリング材を塗る場合、塗布する面が平面に近いほど有利である。 曲面で少量塗る場合は、手作業で行なっている方が多いのではなかろうか。 接着剤やシーリング材の塗布のためには、ポンプや保温のためのホースが必要である。

 溶接組立ラインは大きく分けると、コンポーネントラインと増打ライン、ドア等を取り付ける建付けライン、検査ラインから成り立っている。 ボディの構造は、アンダーボディにサイドストラクチャー、ルーフ等を溶接し、ドア等を取り付けている。 アンダーボディは、フロントエンド、フロントフロアー、リアフロアーから成り立っている。 サイドストラクチャーは、外側のサイドパネル、中間のリインフォース(補強材)、内側のインナーパネルの3層からできている。
 これらの構造はそのままモジュール生産の構造になっている。 アンダーボディは、フロントフロアーを変えることによって、ホイールベースの異なる派生車種を生み出すことが可能となった。 フロントエンドの上部にあるカウルトップ(インパネ等を取り付ける)を変化させることによって、RV車を作ることもできる。 フロントエンドの他の構造とリアフロアーの構造が同じであれば、フロントとリアには同じサスペンションが使用可能となる。

 このようなモジュール生産の利点は、設備中心のラインでは効果は絶大である。 モジュール生産に移行することで、設備をコンパクトにでき、設備投資を削減できる。 このことは、そのまま保守点検に必要な優秀な人員が少なくて済むことを示している。 労働人口が減少に向かっている現状においては、ますます優秀な人材の確保は難しくなるだろう。
 モジュール生産のためには、プレス部品はもとより、コンポーネントラインの冶具の精度も重要になる。 戦後、日本がデミング博士から教わった品質管理が、現場合わせの品質から標準部品への品質管理であった。 どの部品をとっても同じ精度になる品質管理があって、モジュール生産が可能となった。

 コンポーネントラインは、精度が要求される、価格の高い治具では、仮止めだけを行なう。 増打ラインは、テレビの資料映像でよく使用されているラインである。 ボディに必要な強度を出すために、スポット溶接を追加している。 増打ラインでは、フルモデルチェンジや生産する車種が変わった時、大幅な設備改良することなく、ロボットの制御を変えることで対応できることが多い。

 最近では、屋根の両サイドにモールのあるモヒカン方式のクルマが増えている。 屋根をロウ付け(アーク溶接)せず、スポット溶接でき、軽量化と高剛性というメリットをもたらしている。

 組立ラインは下述しているように、本田技研鈴鹿工場のゼネラル・ウェルディング・マシン等によって、アンダボディにサイドボディとルーフ等を取り付ける工程である。 ゼネラル・ウェルディング・マシンは、治具を交換することによって、どのような車種にも対応できる装置である。 このようにできたボディはベアボディと呼んでいる。

 サイドストラクチャーの外側のアウターは、フェンダーの後ろから車体後部まで、クルマのボディの中で一番大きなプレス部品である。 これに付属のプレス部品をスポット溶接して、外側のアウターができる。
 これの内側に、補強材を入れる。 後ろドア付近から前のインナーと、後輪部分のクォーターパネルを重ねて、3層のサイドストラクチャーをスポット溶接で一緒に留めている。 後輪部分のクォーターパネルが独立していることにより、プラットフォームとクルマ前部が同じで、クォーター部分のみ違う派生車が作りやすくなっている。
 ピラーはフロントピラー、センターピラー、リアピラー、テールゲトピラーと呼ぶこともあれば、A、B、C、Dピラーと呼ぶこともある。 これらのピラーは、ロードノイズを室内に伝えるパイプ構造になっている。 それを防止するため、ピラーの途中に、サイレンサーを入れている。 塗装工場の現着塗料を通すために孔が開いているが、現着乾燥炉で加熱されてスポンジ状に膨らみ、孔を塞ぐ。 最近では液状のサイレンサーも使われている。

 スポーティ車には、ルーフにアルミが使われているクルマもある。 エムハート社のセルフピアスリベットの機械を使えば、どの自動車会社でも生産することができる。 問題は、採算に合うかどうかである。 機械化すれば人件費は減るが、その機械の稼動が少なければ機械代と保守点検費用をまかなうことができなくなる。

 プレス部品やコンプの供給は、パトロール供給と呼ばれている。 プレス部品のパレットが空になつたのを見て、パレットを交換する。 交換する部品パレットは、近くに駆り置きする必要がある。
 順序納入はこの方式を変えるかもしれない。 艤装部品でも同じであり、順序納入はキッド納入に似た面を持っている。 やり方によっては、計画的に順番にパレットを交換できる方法である。

 かつて、本田技研では1ラインに流す車種は少なかった。
 鈴鹿工場を隅々まで見学した。マツダとは全く違った組み立てラインだった。 複数車種を同時に組み立てるマツダに対して、ホンダはラインを車種ごとに調節する1車種集中方式だった。 マツダの工場を見慣れた私にとって、それは不思議な光景だった。(214ページ『フォードvsマツダ 日米戦争に学ぶ ビジネスマン 明日への12章』)
 このために、クルマの売れ行きによって、生産ラインを変え、弾力的に生産量を増減させることができなかった。
 トヨタは基本的には1ラインで2機種が3機種しか作らない。それだけに、1ライン当たりの生産台数も多く安定している。 ところがホンダは総量が少ない上に、多機種を同じラインで作るからどうしてもバラつきが出てしまう。当時は、これがホンダの弱点だった。
 そればかりか、その頃から世の中が多様化し、顧客の注文(オーダー)が月ごとにもの凄い勢いで変動するようになったのである。 基本的には市場と連動して生産しようとしたのだが、市場の変動が激しく、かつホンダの生産ラインはバラつきが多いため、トヨタ流にいえば「ムダばかり」の状況。 それが理由で、1つの車種がコケたらすぐに売れ筋のクルマの生産を増やす、そんなシステムがホンダには必要だった。(90ページ『トヨタとホンダ』)
その対策として、ボディそのものはプラットフォームの統合が行われ、溶接組立ラインでは、ひとつのラインで8つの異なるボディを組み立てることができるようにした。
 「プラットフォームの共通化というより、むしろホンダはいろいろなものを、設備を変えないで作ることができるように工夫してきた」(黒田博史取締役)(94ページ『トヨタとホンダ』)

 ホンダはステップワゴンなど、売れ筋のクルマが集中した鈴鹿製作所から、CR−Vの生産を短期間のうちに狭山製作所に移してしまった。 その方法を極限化したのが、2000年に完成した1ラインで8機種も生産する「超」フレキシブルなラインだ。 これを「多機種対応汎用生産ライン」と呼んでいる。
 専門的になるが、クルマというのはボディのサイズがそれぞれ違うため、通常は4機種ほどを同時生産するのが限界だ。 ホンダも以前は4車種が限度だった。 それを今度の改革で、溶接や塗装、組立のプロセスを変えて2倍の8車種にしてしまったのである。(90〜91ページ『トヨタとホンダ』)

 それまでは自社製の重厚長大な溶接機を使っていたのだが、それを投げ捨ててしまった。 新たに導入したシステムでは、特定の機種ごとに対応する「汎用」溶接機に分けている。 さらに部品の搬送は搬送専用の工程で行う「すっきり」した溶接ラインを作りあげたのだ。
 この機種ごとに「変化するところ」と、どの機種でも「変化しないところ」をきっちりと分けたのがホンダの知恵だ。 そうすることによって新しい機種が導入されるときは、「変化するところ」だけを変えればいいわけで、これで専用投資コストが大幅にダウンする。 そして、スポット溶接などの工程は、電動サーボガンと電動ロボットで高速化した。(93ページ『トヨタとホンダ』)

 youtubeの動画では、アンダボディにサイドパネルやルーフを取り付ける工程をみせてくれます。

 モノコック プレス

 むしろカネのかかるのは、溶接の治具(ロボットなど機種ごとの溶接設備に付帯する機器)だ。 プラットフォームにかかる金型などは、フロアー(床)を1枚作っても1億円かからないが、溶接の治具はその何倍もの費用がかかる。 だから、新しいクルマを作るときに、溶接の治具を共通に使うことができれば、プラットフォームの共通化よりも大幅なコスト削減になるというのだ。
 これは工場内で作るボディだけでなく、その中に組み付ける、大きな「コンプ」と呼ばれる構成部品の溶接工程でも同じことだ。 この工程を汎用設備と専用設備に分ければ、新機種の導入の際、工場のメインライン同様に設備の投資コストが大幅に削減でき、ひいては部品コストが大幅に下がるわけだ。(94ページ『トヨタとホンダ)

 しかもホンダの場合は、系列の部品メーカーが溶接部品を作るので、部品メーカーのラインも問題なく改善することができた。 これがホンダが2000年に完成させた生産体質改善の一例だ。(94ページ『トヨタとホンダ)
 なお、「コンプ」とは、ホンダの場合では 高尾金属工業(株)菊池プレス工業(株)(株)丸順(株)ヒラタ(株)本郷 等の協力部品メーカーで作られるサブアセンブリーされたプレス部品である。 これら協力部品メーカーのホームページを参照してください。

 自動車メーカーでは外板大物プレス部品を、部品会社では小物プレス部品を作ることが多い。 部品会社では、高速で動く順送プレスが使われるのが一般的である。 順送プレス金型は、ひとつの金型の上に10数工程が作りこまれている。 1秒に2ストロークという高速で、高速・大量生産に適している。

     
      (株)ササヤマのホームページより

 トヨタ自動車では1986年に導入したFBL(フレキシブル・ボディー・ライン)は大量生産工場向けだった。 車体部品を上下、左右、前後の外側から治具で持ち支えながら溶接ロボットで仮付けしていた。 治具の狭い隙間から溶接するので手作業には不向きであった。
 1996年から導入を始めたGBL(グローバル・ボディー・ライン)は、内側からボディ部品を支えるため、作業がしやすくなり、大量生産工場でも少量生産工場でも使用可能になった。 言い換えれば、先進国でも発展途上国の工場でも使える。そういう意味でグローバルなのである。

 実際GBL導入では旧型のFBLと比べ、工程数は半減、ライン重量は6割、使用機器の種類はそれぞれ7割削減した。 結果、初期投資額、保全コスト、CO2排出量のすべてで半減に成功している。(29ページ、週刊東洋経済2003.2.22)
 バランスの取れた生産・販売を実現するため、世界規模でのフレキシブルな生産調整を可能にする世界標準生産設備の導入も始まった。 トヨタは、1つの治具で8種類の車種に対応できる最新のフレキシブルボデー溶接ライン『グローバルニューボデーライン』を、2002年中に全世界の量産ラインすべてで切り替えを完了すると発表した。(日経産業新聞2001年11月1日) (298ページ、『トヨタ経営システムの研究』)
 溶接組立ラインが複数存在する時は、生産計画に合わせて、定期不定量生産となる。 つまり、艤装ラインの混流生産に合わせて、一定時間内の生産台数が変動してしまう。 生産台数に合わせて、作業者の数を増減できるのが理想である。 しかしながら、設備中心で作業者をほとんど増減できないのが現状である。 ボディ・ストックで調整できるのは残業時間相当の生産台数に限られるのが一般的だろう。

参考ホームページ

 溶接組立ラインは、次の4つの要素から成り立っている。
  1. 多関節形ロボット
  2. 治具
  3. 搬送装置
  4. ALC(assembry Line Control)
1.多関節形ロボット

2.治具 3.搬送装置 4.ALC(Assembly Line Control) 5.車のボディの構造  フィアット127は同社のウノーにとって代わられた。 フィアット127の276のボディー部品は4280点の溶接個所があったが、その72%が自動的に行われていた。 これと対照的にウーノのボディーは、わずか2692点を溶接するだけですむ171の構成部品で組立てられ、99%は自動化された。 (フォーディズム、144ページ)

6.溶接部門の様子

7.協力工場との関係

最近の自動車ボディの大きな流れ


 最近の自動車ボディの大きな流れは、オールアルミの自動車ボディが登場してきたことである。 アルミボディのクルマとしては、少量生産のスポーツカーの本田技研のNSXがあった。 この秋発売予定の本田技研のインサイトに採用され、アルミボディの量産が行われる予定である。 また、アウディも来年前半にはアルミボディの量販車A2を発売予定という。
 自動車ボディのアルミ化の目的は、自動車重量の軽減による燃費の向上にある。 アルミニュームという素材は、既存のプレス部門、溶接部門、塗装ラインをほとんどそのまま使用できる。 また、鋼板の場合にはプレス加工と溶接組立てが必要だった部品が、アルミダイカストや押出し加工によって生産できる。 これらの方法によって加工コストと加工時間の短縮になる。 アルミボディの最大の欠点は素材が高価な点にある。しかし、これはリサイクルにとっては有利に働く。

 この自動車のアルミ化に対して鉄鋼業界は、差厚鋼板によってクルマの軽量化を図り、クルマのアルミ化に対抗しようとしている。 軽量化と衝突安全性確保のために厚さの異なる鋼板を張り合わせて使用するレーザ加工とマッシュシーム加工が行われている。 レーザー加工は鋼板をくっつけてレーザーで溶接するので、断面の形状の精度が要求されるとともに設備費が高い。 その反面、マッシュシーム加工は設備費用は安いが、鋼板と鋼板を重ねるので外板パネルには使用できない。

 アルミの押出し加工に対して鋼管のハイドロフォームがある。 特にGMが技術的に進んでいると言われていたが、この6月にフルモデルチェンジした日産自動車のセドリック/グロリアの部品に採用された。 鋼管を金型に入れて、鋼管の中に水で満たし、圧力を上げて鋼管を膨らませる成形法である。

 従来の工法では2枚の鋼板をプレスし、スポット溶接した部品に比べ工法が簡単で、軽量化できる。 金型はハイドロフォームでも、従来の工法でも必要である。

参考文献


自動車工場の概要, 車体工場, 塗装工場, 艤装工場, 部品納入, エンジン工場等, 新車開発概論, 新車開発(モデル決定まで), 新車開発(モデル決定以後), プラットホームの統一について, 開発センター, 開発主査(チーフエンジニア), クルマの安全問題について, クルマの安全問題(衝突実験), クルマの環境問題T, クルマの環境問題U, 燃料電池自動車, 電気自動車, リサイクル, 欧州の自動車リサイクルについて

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