クルマの環境問題(燃料電池自動車)
燃料電池自動車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)
正確には、燃料電池電気自動車という。
1996年6月に、ベンツがコンセプトカーのネカー2に燃料電池を搭載し大きな反響を呼んだ。
燃料電池は電池というよりは発電機に近いものである。水を電気分解して水素と酸素になる反応を、逆にして発電するものである。
燃料電池の原理は1839年にイギリスのW.グローブ卿により発見され、特許が取得された。
具体的なシステムとして完成したのは、1965年に有人宇宙船ジェミニ5号に搭載されてからである。
燃料電池の構造は、電解質をしみこませた電解質板を燃料極と空気極がはさみこむ形になっており、水平に重ねられる。
これは、燃料電池の反応を起こさせ、電気を発生させる最小単位でセル(cell)と呼ばれる。
燃料極と空気極は電極で、水素側の電極が燃料極、空気(酸素)側の電極が空気極である。
燃料電池が発生する電圧は、単セルで1ボルト程度であり、実際には大きな電圧を得るために、この単セルを積み重ね直列につなぐ。
一方、電流は燃料電池の反応を活発かつ大量に起こさせる程大きくなる。
つまり、単位面積当たりの効率をあげるか、セルの面積を大きくする必要がある。
セルを重ねるに当っては、セルとセルの間に仕切板が入る。
仕切板はセルを重ねた時に、燃料極に入る水素と空気極に入る空気が混じるのを防ぎ、セパレータと呼ばれる。
燃料電池は燃料極に水素が補給されると、電極の触媒作用によって水素イオンになり、生成された水素イオンは電解質中を空気極に向かって移動する。
空気極では、供給された空気中の酸素と水素イオンが反応して水となる。
この時の反応エネルギーが電気として取り出されるという仕組みである。
また、燃料電池反応は発熱反応なので、運転中は冷却する必要があり、発電の時に発生した熱は室内の冷暖房用に使用するという。
燃料電池は電解質板に使用する電解質によって、アルカリ型、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、高分子型等に分かれる。
乗用車に搭載が予定されている燃料電池(Fuel Cells)は、高分子膜(PEM)型燃料電池である。
出力密度が高いため装置の小型軽量化が図れ、低温(100度以下)で起動できる利点がある。
セルは厚さが数10から数100マイクロメートル程度の薄い高分子膜を電解質として使用し、この膜の両側の面に燃料極と空気極を接合する。
セルはこの膜の両側から集電帯の薄い膜で挟んだ構造になる。
水分管理などの理由から、セルは垂直方向に並べて接続し積層電池又はスタック(stack)とする。
高分子膜型燃料電池等では、燃料極と空気極は、ともにガスが通過しやすい多孔質のカーボンに触媒の白金を塗布したものが使用されている。
燃料電池は白金を触媒として使用しているため非常に高価である。
この白金の使用量を減らし価格を下げることが、今後最大の課題となっている。
また、高分子膜中に水分が含まれていなければ、高分子膜がイオン伝導体として機能しないため、燃料ガスの水素に水蒸気を加えることが必要となる。
その反面、空気極と電解質との境界にできる水分を除去しなければ、この水分が邪魔して空気極の反応が進まなくなる。
燃料電池は固体高分子膜型で60から100度であり、熱効率は50%程度といわれている。
原油をベースとして考えても40%程度にはなるという。
かつては、燃料自動車の本格的な商業生産は、2010年と言われていた。
最近では、2015年頃から始まると言われている。
自動車搭載の燃料電池に使う燃料には、次の3種類が考えられている。
- 水素
- メタノール
- エタノール
- ガソリン(clean gasoline)
水素は圧縮水素ガスや水素吸蔵合金等を使って貯蔵した水素を使用する方法である。
現在の実証実験されている燃料電池車は、ほとんど高圧容器に圧縮された水素を使用している。
水素吸蔵合金では、マグネシウム系合金にや繊維状活性炭による水素貯蔵が研究されている。
水素単体で使用する方法は、燃料電池自動車としての開発しやすく、効率もよい。
水素を液化させるにはマイナス253度という低温が必要であるが、最近液化水素の利用も考え始められ出した。
しかし、貯蔵方法の技術的なネックと水素充填時間がかかる問題により、実用化は難しい段階にある。
現在、水素が再認識されているのは、地球温暖化対策によるCO2の排出削減によるところが大きい。
石炭からメタノールを作る方法やガソリンの改質では、化石燃料からのCO2が削減できない。
天然ガスからメタノールを作るより、直接水素を作る方法がある。
植物からバイオ・エタノールを作り、それを改質する方法もあるが、この方法では太陽電池で水を分解して水素を作る方法と変わらなくなる。
当面は、圧縮水素を使う方法が主流になるであろう。
現在、東京と大阪に水素ガスのステーションがあり、岩谷産業が水素を供給している。
東京都の持っている燃料電池バスに供給している。
メタノールとガソリンは改質器を使い水素を取り出す。
メタノールの改質には250度、エタノールでは580度、ガソリンでは900度程度の温度が必要と言われている。
一番低い温度で改質できるメタノールが手っ取り早い燃料と言われていた。
しかし、メタノールは人体に有毒であり、水と混ざると分離しにくいため、本格的な使用には社会的な合意は得られないと考えている。
前述のように地球温暖化対策としてのCO2の削減が大きな問題となり、化石燃料からメタノールを作るメリットが薄れてきた。
以前では穀物でしかエタノールを作れなく、木材等からはメタノールしか作れなかった。
最近の技術開発によって、木材等からもエタノールが生成できるようになった。
その結果、メタノール使用の可能性は低くなったのではなかろうか。
地球温暖化対策のCO2の削減と、発展途上国の石油消費の増加による原油価格の高止まりにより、バイオマス・エタノールの関心が高っている。
エタノールは直接ガソリンに混ぜてガソホールと使用する他、100%エタノールの使用も考えられている。
日本では2008年に3%のアルコールを混合したガソリンの販売が計画されている。
2004年のカルフォルニア州の総販売台数の10%はZEV(Zero Emission Vehicle)を売らなければ規制時期である。
ホンダがトヨタと同じく2003年、GM、フォード、ダイムラークライスラーの3社は2004年に実用化するとしている。(131ページ『トヨタはどこまで強いのか』)
トヨタはGMや石油メジャーのエクソン・モービルとともに、ガソリン系燃料の共同研究で提携している。
一方、フォード、ダイムラークライスラーはメタノールを使った燃料電池車で連合を組む。
いずれの方法にしても2003年に実用化するものは、「とりあえず」の域をでないというのが多くの人の見方だ。
本格的に普及するのは2010年以降で、それまではトヨタが世界をリードしているハイブリッドシステムが主役になる可能性も秘めている。(131ページ『トヨタはどこまで強いのか』)
その時の燃料電池はメタノール改質式だろうと想像されるが、少量販売に留まるだろう。
原油か天然ガスを原材料とした、ガソリン(オクタン)までの炭素数を持つ炭化水素を使用するだろうという見方が多い。
ガソリン改質は、ガソリンに含まれる硫黄分や飽和炭素類が改質の時に問題になると研究課題が多く、早くても2010年頃からの販売と見られている。
将来ハイブリッドカーのエネルギー効率が更に向上した時に、ガソリン改質の燃料電池自動車はエネルギー効率で劣ることもある。
燃料電池自動車はまだまだ技術的課題も多く、消費者の反応も不確定要素が多い。
そのため、燃料電池自動車は少量販売の時代が長く続き、その間ハイブリッド車の販売を本格化させるであろう。
なお、ダイムラー・クライスラー社は1999年11月にシンボジュームを開き、2020年には燃料電気車の普及率は20から25%になる見通しを発表している。
燃料電池の開発をめぐる競争枠組みは以下のとおりです。
燃料電池に対する多くの特許を持つカナダのバラード・パワー・システムズに、ダイムラークライスラー社とフォード社が出資を行ない、共同研究を行っている。
この共同研究にマツダも加わっている。
トヨタ自動車は2001年からGMと共同研究を行なっていたが、2006年3月末で共同研究を打ち切った。
1999年にダイムラークライスラー社はネカー4(NECAR 4)を発表した。
最高速度90mph(145km/h)、巡航距離450kmで水素吸蔵合金の方式を採用していた。
なお、ネカー3ではメタノールの改質によって水素を取り出す方法を採用した。
2003年12月4日に、F-Cellの名称で東京ガスに販売した。
ダイムラー・クライスラーは、2004年にかけて燃料電池自動車を全世界で60台販売する予定である。
2000年に、ネカー5を発表した。ネカー5では、またメタノール改質式に戻ったといい、このモデルが市販モデルになるという。
ネカー5は燃料電池で発電した電気で、直接モーターを回転させる方式を採用している。
同時に、クライスラー社としての車として、Jeep Commanderという燃料電池自動車も発表している。
この他ダイムラークライスラー社は、燃料電池電気自動車のバスのNEBUSを2002年に発売予定である。
また、ダイムラークライスラー社は、ドイツ国内で小型トラックを使用した燃料電池自動車の走行実験を2001年から始めると発表した。
なお、ネカー(NECAR)は New Electric CAR のことであるという。
現在も、Bクラスのボディを使用してスウェーデンで実証実験をしていると伝えられている。
BクラスF-CELLという燃料電池車を限定生産し販売する。
200台を生産し、欧州と米国の特定顧客に2010年初めから販売する。
燃料電池車は、2.0リッターのガソリン車と同等の性能を有していると発表している。
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 ネッカー5 |
現在、燃料電池自動車を実用化しているのはイギリスのZevco社であり、タクシーや小型トラックに燃料電池車を作っている。
トヨタとホンダは2002年12月2日に、計画を1年前倒しして燃料電池車のリース販売による官庁への納入を行なった。
トヨタ自動車が販売したのは、クルーガー燃料電池自動車である。
コスト面や氷点下の低温適応性(燃料電池内に残った水の扱い)に課題が残るため、限定20台の販売である。
燃料には圧縮水素を使用し、プリウスに似たハイブリット・システムを採用しているという。
トヨタ自動車とホンダは2005年6月17日、燃料電池車の型式認証を同日付で国土交通省から取得したと発表した。
型式認証を得たことで、通常のガソリンエンジン車などと同様に不特定多数の顧客へ販売できるようになる。
燃料電池車は従来、販売先をあらかじめ特定したうえで、車両1台ごとに大臣認定を受ける必要があった。
国交省は今年3月、道路運送車両の保安基準を改正した。
これを受け、トヨタが「トヨタFCHV」、ホンダは「FCX」でそれぞれ国内初の型式認証を得た。
また燃料電池の開発を行う“FC技術企画部”を新設し、トヨタグループの部品会社に分散していた研究者を集めたという。
同時に、トヨタ自動車は日野自動車の協力のもと、燃料電池バスの走行実験を行なっている。
燃料には圧縮水素を使うため、圧縮水素を充填できる都内等の運用に限定されると考えられる。
現在行なわれている愛知万博には、圧縮水素を使用した燃料電池バス運行されている。
ダイハツは第33回モーターショーにムーブベースのメタノール改質式の燃料電池電気自動車を展示した。
2003年1月に、ダイハツがムーブFCV-K-2の公道走行試験を始めた。
ダイハツの燃料電池自動車の開発は、今後トヨタ自動車と共同研究を行うと言われている。
同様に、本田技研は、水素貯蔵方式のロゴベースのFCX−V3である。
トヨタは水素電池を使ったが、ホンダは一時的に電池を貯えるキャパシタを使用した。
ホンダの福井威夫社長は2005年8月、インタビューに応じ、燃料電池車を10年以内に商業ベースにもっていきたいと述べた。
本田技研は燃料電池の固体高分子膜の改良を、ドイツのセラニーズ社と共同して行う。
本田技研は発電装置を小型化した燃料電池車を2008年に日米に特定顧客向けに販売する。
鈴鹿工場敷地内に、ハイブリッド向けモーターを20万台生産する工場を建設している。
ハイブリッド車向けモーターの生産能力は現在5万台、これを4倍に増やす。
小型車「シビック」程度の小型ハイブリッド専用車を新たに開発し、2009年に発売して世界で年間20万台販売する計画を発表している。
また、ディーゼル車向けのアルミニウム製エンジンブロックの鋳造工場も、鈴鹿工場内に新設する。
一方、日産自動車はルネッサベースの燃料電池自動車を試作、走行試験に入ったと発表した。
メタノール改質器を使い水素を取り出す。この水素を燃料電池で酸素と反応させて発電し、モータを駆動する。
モータの出力は公開していないが、最高速度100Km/h以上、航続距離300Km以上としている。
燃料電池は今回はバラード社から購入したが、ブラックボックスにしないために自社開発を行うと発表した。
しかし、日産自動車は、2002年12月10日に、X-TRAIL FCV を発表し、実証実験に入った。
2004年月に、エクストレイルFCVをコスモ石油に納車した。
GMは子会社のオペルのザフィーラ(Zafira)ベースの燃料電池車を試作している。
GMは2006年秋から大規模な実証実験を行ない、2011年からの商業販売を目指す。
スズキは米ゼネラル・モーターズ(GM)とハイブリッド車を共同開発し、2009年をめどに北米市場中心に投入する方針を固めた。
共同開発するハイブリッドシステムを排気量3000cc前後のSUV(多目的スポーツ車)に搭載することを検討している。
フォード社は2000年のフランクフルト・モーターショーから『フォード FC5』というメタノール改質式の燃料電池電気自動車のコンセプトカーを展示している。
2003年2月には、フォードがハイブリッドFCVの公道走行試験を始め、2004年までに商品化すると発表した。
その一方で、モンデオベースの『P2000HFC』という水素貯蔵式の燃料電池電気自動車の走行試験を始めている。
マツダは2001年2月からプレマシーFC-EVの公道走行試験を始めている。
平成14年度(2002年)の実証実験に、トヨタ、日産、ホンダ、GM、ダイムラー・クライスラーの5社で行なわれた。
燃料電池実用化戦略研究会が2001年1月22日の発表によると、2010年に5万台、2020年に500万台の普及を予測している。
燃料電池車の実証実験で水素の充填ステーションができたことによって、水素エンジンの実験も行なわれるようになった。
マツダは、水素を燃料に使うロータリーエンジン(水素RE)の実用化にめどをつけ、水素REを搭載したミニバンの開発に乗り出す。
マツダは水素REを搭載したスポーツカー「RX−8」を来年、リース販売することを決めており、水素タンクを搭載しても荷室を確保できる実用的なミニバンも商品化することで、水素RE車の事業展開を加速させる。
通常のガソリンエンジンでは吸気中に排気バルブの熱で水素が燃えるというバックファイヤーの現象が発生しやすい。
バックファイヤー対策のため、水素エンジンは大排気量のエンジンをベースに開発されている。
ロータリーエンジンには排気バルブはなく、バックファイヤー対策は必要ない。
ロータリーエンジンの燃焼効率の悪さは、水素の燃えやすさによって改善される。
コンパクトで大きさの割りにパワーのあるコンパクトな特徴を生かせ、水素を使い無公害である。
2006年9月のロスアンゼルスモーターショーで、本田技研はFCXクラリティを公開した。
2008年から、当面200台を目標にFCXクラリティを生産開始し、7月にリース販売を開始した。
3年契約で、月600ドルのリース料であった。11月には国内でも官公庁や企業にリースを開始した。
その後、ハイブリットカーや電気自動車に注目が集まり、燃料電池自動車は2012年まで棚上げされるだろうと言われている。
米国のカルフォルニア州のゼロ・エミッション・カーに対する動向によって、燃料電池自動車に対する態度が決まってくる。
BMWは、1978年から研究を続けてきた水素自動車を2007年4月に7シリーズで販売することを発表した。
当面、リースのみを行なう。
参考ホームページ
参考文献
『さよならエンジン こんにちは燃料電池』 山本 寛著 東洋経済新報社 1999年4月22日
『革新 トヨタ自動車』(世界を震撼させたプリウスの衝撃) 板崎 英士著 日刊工業新聞社 1999年4月20日
『プリウスという夢』(トヨタが開けた21世紀の扉) 家村 浩明著 双葉社 1999年3月22日
『あなたのクルマをEVに乗り換えよう』 田口 雅典著 オーエス出版(株) 1996年12月20日
『燃料電池のおはなし』 広瀬 研吉著 日本規格協会 1992年7月5日
その他の参考ホームページ
自動車工場の概要,
車体工場,
塗装工場,
艤装工場,
部品納入,
エンジン工場等,
新車開発概論,
新車開発(モデル決定まで),
新車開発(モデル決定以後),
プラットホームの統一について,
開発センター,
開発主査(チーフエンジニア),
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