『工程ばらしのノウハウ』(第2版)  関根 憲一著
1993年8月20日 日刊工業新聞社




 第1章   1年間で4倍の生産性を上げた電源組立ライン 
 第2章   工程ばらしの手順 
 第3章   小さなコンベアから、ばらそう 
 第4章   コンベアをばらしUラインにしよう 
 第5章   縫製工場のUライン化 
 第6章   ギヤー加工の生産性を2倍にする方法 
 第7章   電子部品組立のUライン化 
 第8章   板金工場の少人化ライン 
 第9章   動作のムダとり技術 
 第10章   製品倉庫の工程ばらし 
 第11章   ミクニの倍々作戦 
 第12章   オリエンタルモーターの1個造り生産方式 
 第13章   海外での工程ばらし実践例 

 “工程ばらし”は耳慣れない言葉であるが、トヨタ生産方式の中心となっている手法であり、著者の関根憲一氏の他にも“工程ばらし”を売りにしているコンサルタントも多い。 “工程ばらし"は、コンベア作業のムダをとりイッキに少人化してしまう技術をいう。 この本の韓国版は“工程編成少人化技術”、アメリカ版は“ONE PIECE FLOW”となっており、よく理解できると思う。
 著者はコンベアのムダを下記のように書いている。

 コンベア作業の利点は現場監督業務を不要にしたことにある。 言語、習慣のちがった外国人労働者をその日に雇い、その日にコンベアの前に座らせれば、物造りができたからである。  コンベア作業のヒントは、奴隷船ではないかと思う。 クサリにつながれた黒人の奴隷をドラムの合図によってエイヤコーリャ、エイヤコーリャとこがせたあれである。
 ピッチタイムという語源もひょっとすると奴隷船のドラムのピッチから生まれたのかもしれない。
 産業革命で生まれた分業の思想は、コンベア作業を発想させた。 コンベア作業は標準品を連続に多量生産していた時代には偉大な働きをした。 素人の作業者でも頭数さえそろえば、単純繰返しの分業であるから教育訓練はもちろん、働くための動機づけとか、職場の環境づくりとか、七面倒くさい人間管理の業務が省けたからである。


      コンベア7つのムダと原因系     
@手待ちのムダ         ラインバランス
A取りおきのムダ        コンベア作業
B仕掛りのムダ         ラインバランス
C手直し、不良のムダ      分業しすぎ
D切替えのムダ         一斉切替え
E助合いができないムダ     座り作業
F手扱い時間100%のムダ     短いピッチ作業

 ラインアンバランスをとるためにWF(ワークファクター)とかMTM(メソッド・タイム・メジャメント)があるが、あまり役にたたない。
 第一の理由は、機種切替えに伴い作業時間が変わり、工程別の標準時間の設定が追いつかないからである。
 第二の理由は、かりに標準時間が設定できても点の標準時間であり、習熟という掲経時変化が考慮された標準時間でないからである。
 コンベア作業のラインアンバランスが常時発生するとみたほうがよい。 それをMTMとかWFとか時間研究によって解決しようという発想そのものがムダなのだ。 ラインアンバランスは常時発生してもよいようなラインづくりに知恵をしぼったほうが賢明である。


 第4の手直し、不良のムダは、正確には不良が大ロットで出るムダである。原因の第1は大ロットで流すからである。 第2はコンベアによる分業は作業者間に見えないカーテンができる。 どちらかというと前工程の遅れを期待する。というのは自分の作業が楽になるからである。 また、他人のチョンボ、手直しについても喜ぶ心理がある。とくに、前工程でそれが発生しラインストップするとそれだけ休めるからだ。 したがって、前工程の出来栄えを順次点検したり、検査し、ミスがあったら注意せよ、といっても「村落社会」では通用しない。 前工程のパートの方がもと地主のおくさんで、注意したパートが小作人なら、たいへんなことが起こる。
 さわらぬ神にたたりなしで、たいていは前工程が不良を出しても知らない顔をして次工程に流す。


 このことはラインに限ったことでなく、なあなあで仕事をしていて誰も責任をとらない会社が多くあるのと全く同じである。  誰も責任をとらないこと以上に、向上心がなく、変化を恐れ、結局ムダを省くことができない体質や企業文化が問題である。 そのためにラインで作業する人たちの連帯を強めるため、多能工化し助け合いを行うことが必要になる。

 第7の手扱い時間100%のムダは、ピッチタイムが短いと簡易自動機を組み入れても全部、手扱い作業になってしまう。 たとえば、自動送りのついたねじ締付機でも作業位置が固定化されるので、手動ねじ締付機になってしまうのである。

 これは“工程ばらし”の生産性向上の本質を表している。 人が行う作業と機械が行う作業を分け、機械の動きに影響されず、作業者が100%正味作業に従事できるようにする。
 一方、品質は少人化することによって責任が、自ずと明確になる。 その上にU字型ラインの特徴として、原材料入れる人と完成した製品を検査する人が同じになる効果がある。

 工程ばらしの手順は下記の通りである。

   【手順 1】 現状の実態把握
   【手順 2】 現状の否定
   【手順 3】 目的を追求する
   【手順 4】 ムダとりの切口を見つける
   【手順 5】 ムダ発生の原因を考える
   【手順 6】 少人化Uラインを発想する
   【手順 7】 即、実践する

 現状の実態把握は、実際に現場に行って実際を見る。 しかし、目で見てもわからないムダがある。第一は多品種小ロット生産の実態であり、PQ分析をみればわかる。 A加工経路図、B流れ線図、C組立工程分析表である。

 この本には多くの工程ばらしの実例が載っていて、工程ばらしの技術を身に付けやすくなっている。

 加工経路は製品設計によって決まる面が多い。 最近では、実際の生産現場を反映した製品設計や、より省力化された生産方法を提案する製品設計によるスパイラルアップが主流になりつつある。 そういう意味で、生産現場の改善は無限であり、工程ばらしのノウハウは改善に役立ち続けるものと考える。


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