生産管理とは
生産とは、販売に対応した経営機能のひとつであり、市場、顧客からの要求に応じて、目的とする機能と品質を持った商品を、経済的に(安く)、納期どおりに作ることです。
つまり、「一定の品質と数量の製品を、所定の期日までに生産するために、企業の資源、すなわち人的労力、機械設備、材料などを経済的に運用させること」です。
生産管理の特徴は、テクニカル・スキルとヒューマン・スキルが密接に関連していることです。
テクニカル・スキルとヒューマン・スキルは、混同されることも少なくないありません。
例えば、QC手法はテクニカル・スキルであるが、QCサークルはヒューマン・スキルで運営されています。
日本企業の特徴として、「一般の従業員が、会社のことを思って働いてくれる」ことです。
これは生産部門に限らず、事務部門や全ての部門に当てはまることです。
QCサークルは、生産部門の人たちに金が全てでなく、会社のことを思って働いてくれるようにすることでした。
ただ、生産部門の人材のバラツキは、事務部門のそれより大きいです。
その基本は、山本五十六大将の言葉と言われている「やって見せて、言って聞かせて、させてみせて、褒めてやらねば、人は動かじ」です。
人が意欲を持って働けるには、正当な賃金と仕事にプライドが持てることが重要です。
金のために言われたことをやれば良いという奴隷のような態度では、人は意欲的に働きません。
仕事量が少し増えれば、すぐに品質問題が発生してしまうデリケートな職場です。
最初は、確認作業が疎かになり、品質問題となります。
生産現場では、褒めて、褒めて、褒めまくって、その気にさせることが必要です。
訓練の場所を○○道場と言ったり、部品を運ぶ台車に少し工夫すればカラクリ台車と呼んだり、カッコをつける必要があります。
事務部門では恥ずかしくて、やれないことをやる必要があるのが生産部門です。
「生産部門は円単位のコスト削減を行なっている」というのも同様のスローガンです。
本人がその気になつて、ボルトの1本でも大切に扱ってくれれば、円単位で費用の増加を止めることができるのです。
前述したように、限界まで仕事量を増やすことは、品質問題が発生するので、とうてい無理な話です。
余裕を持った範囲で仕事量を決めるしかありません。
靴の上から、足を掻くようなコスト削減しか出来ないのが現実です。
そのような環境の中でも少しずつスパイラルアップできることが重要です。
自動車会社を含む自社製品を生産する企業は、下記のようなビジネス・オペレーションのサイクルを持っています。
研究 − 開発 − 設計 − 試作 − 生産準備 − 調達 − 生産 − 販売
研究から試作までを“開発”、生産準備から生産までが“生産”、販売は“販売”の3つの部門に分けられることが多かったように思われます。
生産管理もマーケティングも思考フレームは異なりますが、同じように考えられます。
生産部門は設備・機械を持っているので、それらになじみがないだけです。
かつては3つの部門が別々に努力していたけれども、産業が成熟した現在では密接に結びつかなくてはなりません。
マーケティング部門でも、低価格の商品を開発するには開発や生産のことを知らなければなりません。
生産部門にもマーケティング部門と同様に思考を助ける思考フレームワークがあります。
思考フレームワークとは、囲碁や将棋の定石のようなものですが、定石ほど難しくはありません。
マーケティングの4Pや3Cは、マーケティングにおける思考フレームワークです。
同様に、生産管理には4M(機械、人、材料、方法)やQCD(品質、コスト、納期)の思考フレームがあります。
それぞれ別の思考フレームがありますので、お互いに理解しにくい面があったと思います。
それらの思考フレームを知ることによって、お互いの仕事内容もわかりやすくなります。
もうひとつ設備管理を持って仕事をする場合、例えば店舗管理では、店舗を管理する上での基本的な前提条件があります。
同様に、工場においても同様の前提条件があります。
その代表的なものが5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)であり、3定(定位置、定品目、定量)です。
身近に感じられる食品工場を考えれば、よく理解できると思います。
野菜や魚が床に無造作にころがっていれば、整理・整頓しなければならないと思うでしょう。
清掃して清潔にしなければいけないと思うでしょう。
従業員の人たちは手洗いをしているだろうかと思うでしょう。
これらと同じことが工場にも当てはまります。
職人かたぎと言いましょうか、工場の人たちは自分たちを特別な存在だと思い込みたいと思っているようです。
自分たちの仕事は、特に事務部門にはわからないと思い込ませたい面があります。
「汗をかいて仕事をしているのは俺たちだ」だと言うようなことを言います。
「汗をかいて仕事」するのも「神経をすり減らす仕事」仕事をするのも同じことです。
生産管理の思考フレームワークを理解すれば、工場の仕事もわかりやすくなります。
開発部門や生産部門では、自分たちは良い製品をお客様に提供していると思い込んでいます。
これが一般的な製造業の状況です。
職人気質の延長で、誰にとって良い製品なのかを考えてもらう必要があります。
いい商品を作って入れは、売れるとはずだと考え、売れないのは販売部門がわるいと考えています。
開発部門や生産部門にお客様のことを考えるように言っただけでは効果はありません。
このようにやれば、コストも上昇することなく、お客様が求めているものが作れることを示さなくてはならない。
そこまでしなくても、開発や生産についての知識を持っているだけで独断専行や官僚化を抑止し、組織を活性化することになります。
同様に、開発部門においても販売やマーケティング部門の思考フレームを理解する必要があります。
消費者がつい買いたくなる商品を開発しなければ、もはや製品は売れない時代になっています。
組織はお互いに切磋琢磨することで活性化します。
生産管理の第一次管理、二次管理
生産管理の第一次管理は、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)で、それぞれに対応して「品質管理(Quality control)」、「原価管理(Cost Management)」、「工程管理(Product Control)」の3種からなります。
これにP(生産性:Productivity)、S(安全:Safety)、M(モラール:Moral)を加えたPQCDSMが、生産管理の一次管理です。
P(生産性)はいまだ解釈が統一されていません。
最も主流の考えがProductivityの生産性と考え、生産しやすい設計を行ないます。
また、Productionsとし、お客様の望む商品を造るということです。
後から付け加えられたあいまいな概念です。
S(安全)は人間尊重の方向を意味するもので、危険や災害の防止として職場の安全・衛生等の作業環境と、公害防止やリサイクル等の地球環境問題をも含んでいます。
M(モラール)は従業員の労働意欲を高める、組織の活性化です。
生産管理の第二次管理は、生産要素に対する管理であり、生産主体(作業者)、生産手段(設備・機械)、生産対象(材料)、生産方法という4つのM(man、machine、material、method)です。
その後に、market、money、management をつけて7Mとすることもありますが、あまり使われることはありません。
生産管理の一次管理と二次管理を組み合わせることによって、個々の管理を行なうことができる。
(作業者、品質)・・・・標準作業、QCサークル(限定的)
(作業者、コスト)・・・IE、多台持ち
(作業者、納期)・・・・計画的な休暇の取得
(作業者、生産性)・・・多能工化、少人化
(機械、品質)・・・・・QC工程表、機械保全
(機械、コスト)・・・・日常点検
(機械、納期)・・・・・機械保全
(機械、生産性)・・・・生産技術(専門)
(材料、品質)・・・・・品質管理課(専門)
(材料、コスト)・・・・VE、定期発注方式、定量発注方式
(材料、納期)・・・・・進捗管理
(生産方法、品質)・・・ISO9001(全体的)
(生産方法、コスト)・・トヨタ生産方式、TOC(全体的)
(生産方法、納期)・・・生産計画と統制
一般に、生産管理改善のテーマには、次の2つの観点があります。
- 企業が成長していく段階で、企業規模に適した生産管理体制を構築します。
- 環境変化に対して、環境に適した生産管理体制に移行します。
第一の観点は、一般に中小企業が大企業に成長する段階で、成り行き管理を排して科学的管理への移行や、責任と権限の分散等があります。
言い換えれば、組織力の向上です。
中小企業等では社長個人のアイデアによって事業が行なわれることが多いように見受けられます。
トップダウン方式では、経営者のやり方に異義をとなえられなります。
一方、ボトムアップ方式では、企業全体を見渡す視点に欠けてしまいます。
折衷案として社長の持つ理想を企業理念とし、社員のアイデアによって事業を進めることであり、そのために組織や人事制度を変えていきます。
第二の観点は、新しい技術や競争関係等の経営環境に対する対応で、2つの観点があります。
ひとつ目が年々厳しくなる経営環境に適合して、管理水準を上げて行かざるを得ない競争環境への適応です。
1980年頃までの生産能力不足の時代は、作れば売れ、生産さえしていれば経営がなりたっていた幸運な時代でした。
それが一転して生産能力過剰の時代になり、消費者にとって個人の欲求をより実現しやすい環境になり、企業の競争は激化してきました。
それに対応して、IEやQC中心の生産現場中心の管理から、原価企画や企画・設計段階のVE等の消費者対応中心の開発に重心が移りました。
もうひとつが、不確実性が高くなるのに対応して、戦略レベルである経営能力の向上です。
世界的な視点を持って、消費者のニーズに基づいて開発されたものでなければ、良い商品は開発できなくなりました。
開発した製品のライフサイクルは短縮してきています。
クルマのフルモデルチェンジサイクルは4年でした。
しかし、新車効果と言われる新車発売時の販売台数が増加傾向にあります。
新車発売時の収益性の確保が、企業業績自体を左右されるようになっています。
従来の製品を発売してから、品質、コスト、納期の改善をしていたのでは役立たなくなっています。
また海外戦略においても、情報が速く伝わり、世界同時発売が重要になってきました。
情報時代の第一の特徴である「顧客主導」は、これまでいわれた「顧客志向」とか、「お客様第一主義」のような言葉とはレベルがまったく違います。
「顧客のことを考えましょう」といっていれば済む時代ではなく、顧客が自分の望むものを決める時代になっているんです。
「消費者はいまや、多種多様かつ大量の情報を獲得していて、自分のほんとうに望んでいるものが何であるかを知っている。
一方、供給者側の企業は必ずしも顧客ニーズをはっきり把握できているわけではない」−−
大量生産・大量消費型の時代とは違って、供給者側が出した商品やサービスが消費者の望んでいるものと少しでもずれていれば、消費者は見向きもしない場合が多いのです。
そのために顧客のニーズに対応した製品開発やマーケッティングを細かく行ない、生産オペレーションを適合させる必要があります。
サプライチェーン・マネジメントは、先端物流管理とかロジスティクスと呼ばれています。
IT化のメリットが出やすいように、物流業務を再編成することです。
現在マーケッティング管理の下で、開発、調達、生産、販売の全体の最適を考えたうえで、適切な生産管理を選ぶ必要が出てきました。
そのために重要視される内容も変わってきました。
- TOC(制約条件の理論)やSCMの成立
- フロントローディング
- 知識創造企業
1980年代にアメリカで発達したTOC(制約条件の理論)やSCMは、生産管理のパラダイムの転換であった。
日本の多くの企業が成功を収めるために最大の制約になっているのは、『部分最適化をベースにしたルール』を持ち続けていることです。
例えば、自動車メーカー等が採用している機能別組織が部門の壁を構築し、派閥化して、部分最適を追い求めています。
欧米に追いつくためのキャッチアップ体制が、ボトムアップ経営を生み出し、部分最適化に結びついたものと考えられます。
ボトムアップ経営は、右肩上がりの経済を前提として成立っていた面が大きかつたものと思われます。
右肩上り成長していた頃は、各部門が勝手に改善を行なっても、いずれフル稼動になり改善効果が出てきました。
改善に伴う余剰人員の処遇も問題ありませんでした。
しかし、現在のような生産能力過剰の時代では、従来の改善活動が意味を持たなくなっています。
70%の稼動を60%に下げたとしても、企業には何ら利益をもたらしません。
また、改善に伴って発生した余剰人員は、そのまま人員削減対象になってしまいます。
このような状況で、改善活動に取り組む人も少なく、数字合わせの改善活動になったり、改善活動に妨害も入りやすい状態です。
低価格が重視される経済環境では、切れ目のない流れを作り出し、人も設備もいかにリーン(贅肉のない)状態にするかが課題となりました。
言い換えれば、開発−生産−販売のビジネス・オペレーションの中で、企業全体として価値を生む組織への移行が重要になっています。
それはTOC(制約条件の理論)であり、それを社外に広げたのがSCM(サプライ・チェーン・マネージメント)です。
具体的には、販売に応じて、生産を上下させる等の不確実性に対処する仕組みが重要となってきました。
販売によって生産数量が変動に対応して生産でき、生産コストを変動させないのが真の工場力です。
『全体プロセスの可視化』し、『プロセス全体の効率性向上』する、換言すれば『収益構造の全体最適』です。
販売をボトルネックとして生産管理を連動させる技法であり、『客から仕事を獲得するうえで、製造現場で何ができるか?』を目指して、工場全体での最適化を図るものです。
TOC(制約条件の理論) のページもご参照下さい。
第2番目のフロントローディングは、トヨタ自動車が自動車開発に導入した方法です。
製品のライフサイクル短縮に対して、最も経済的な開発方法として選択されています。
問題点を開発の早い時点で発見し、なくする開発重視、源流管理の考え方に基づいています。
これを表す最適な言葉が、『品質は工程で造り込む』に代わって、『品質は設計で造り込む』という言葉です。
同様に、コストは原価企画の段階で作り込むことが重要になりました。
品質もコストも生産開始時には100%達成、垂直立ち上がりが要請されています。
製品の品質や性能はライフサイクルを通して、一定の条件を満たすことを保証しなくてはなりません。
以前は、製品発売時に品質や性能を確保するため、コストを犠牲にすることが多かくありました。
製品発売後の改善によって、コストを下げ、採算性を確保していました。
製品ライフサイクルが短縮するなか、この方法では十分な利益を上げることが難しくなりました。
自動車メーカーからは大量発注と設計の自由と向上のもと、部品会社にとっては当初からのコスト削減が求められるようになりました。
VEは企画段階・開発段階でのゼロルック・VEやファースト・ルックVEに重点が移ってきました。
それに伴って日本で発明された品質機能展開や田口メソッドが再認識されています。
デジタル・イノベーションに見られる設計、金型や機械の精度を上げることによる、設計で造り込む製造品質こそが評価されています。
モジュール生産やプラットホームの統合等の設計段階のコスト管理が重要になっています。
フロントローディングは、コア・コンピタンス(企業の中核となる能力)を移動したことを表しています。
第3番目は、日本のものづくりの強さのコアの部分が知識創造企業です。
日本のものづくりの強さは、知恵を使って低コストで生産方法や機械・器具を改良して、低コスト・高品質な製品をつくることにあります。
それに対し欧米企業は、白紙の状態から全く新しい商品を開発する時は優位を持っています。
野中郁次郎氏の提唱するSECIモデル(共同化、表出化、連結化、内面化)は、全く新しい知見を発見するのではなく、新しいモノの見方や考え方、切口といったものを提供してくれます。
具体的には、消費者行動に新しい切口を見つけ、より消費者に好まれる製品を作り出します。
また、機械化できなかった熟練者の行っている作業を、新しい切口で機械化するのが得意です。
この両者は、「すり合わせ技術」と言います。
生産における「すり合わせ技術」は産業が未熟であることを表しますが、ここでは設計段階の「すり合わせ技術」です。
この「すり合わせ技術」によって、より消費者に好まれる製品を市場に送り出しました。
『転写』をキーワードとして、開発部門、生産部門、販売部門を川の上流と下流に喩えて、直線的な(リニアー)モデルを主張する研究者がいます。
この『転写』の概念は、設計における『すり合わせ技術』とは相容れないものです。
この「すり合わせ技術」は、消費者に製品を使ってもらい、その反応によって製品を改良をし続けなくてはなりません。
生産での『転写』ではPDCAのスパイラルアップを必要としません。
しかし、設計での『すり合わせ技術』は長期的なPDCAが回ることを必要としています。
ピータ・ドラッカー氏も『ポスト資本主義社会』(1993年)で、資本主義社会の後にくる知識社会では、知識はただ一つの意味ある資源であると主張して、『知識労働者』(Knowledge Worker)が企業にとっての最大の資産だと論じた。
現在でも資本は国境を越えて自由に動く。
かつてのように、資本の力、つまり資本装備率に頼って生産性を上げることができなくなりました。
生産現場においても、世界一高い賃金水準を支えているのは知識であり、知的熟練です。
人材は企業が持つ最も戦略的で、最も重要な経営資源であり、日本の風土にあった人材開発の方法が知識創造企業でしょう。
2000年を過ぎて、新興国で生産される製品が低価格で先進国で販売されるため、先進国ではデフレ経済が続いています。
先進国で量産効果によって低価格を目指しても、新興国での低価格生産に勝てることはありません。
先進国では知識を使い、『すり合わせ技術』を使い、より消費者に好まれる製品を作ることに優位性があります。
その時、どのようにユニット化を行なうかが重要になってきます。
荒っぽいユニット化を行なえば新興国で生産する製品と差別化できなく、ユニット化があまりできなければコストが高くなってしまいます。
知識創造企業 のページもご参照下さい。
整流化から自動化へ
道路の場合には渋滞箇所は目で見えます。
しかし、工場の場合にはどこにボトルネックがあるか目には見えません。
それを目に見えるようにすることが、工場での改善の第一歩です。
そのための道具が『5S』とか『目でみる管理』であり、最近では『見える化』と言われています。
どこにムダがあり、渋滞があるのかを見えやすくします。
『5S』や『目でみる管理』はあくまでも改善のための前提条件です。
『目でみる管理』の最終的な目的は、生産現場をどのようにキャッシュフローが流れていることを見ることです。
言い換えれば、どの活動がキャッシュを生み、効果のない作業は何かを知ることです。
工場で改善を行なわせないようにするには、工場をブラックボックスにすれば良いのです。
ライン作業での合せ作業とか、作業時間内に5S活動と称し清掃を行い、ムダをわかりにくくすることも行なわれています。
5S”や“目で見る管理”を行い、工場は奇麗になったが、全く改善には手がつかないということもあります。
作業の安全活動という後ろ向きの仕事しか行なわず、工場のスリム化・効率化を行なおうとしていないこともあります。
さらに悪いのが、費用対効果のない改善活動です。
そのようなマンネリ化が進んだ企業では、トップの確固とした意識改革が必要です。
具体的には、隠し財産とかポケットと呼ばれる改善余地を隠し持つことです。
改善余地を隠し持つことによって、誰が見ても、すぐにはどこを改善してよいかわからなります。
この状態で、自動化(機械化)を行なうと、おおきなムダを固定化することになります。
トップはこれを断固とした態度で過ちを糾さなければなりません。
工場管理を主たる仕事としているコンサルタントは、
- 意識改革
- 5Sや目で見る管理
- 工場内の整流化
- 工程ばらし
- 自動化
を主にして改善を行っています。
整流化をわかりやすく言えば、在庫がなく、理想的にワークが流れている状態です。
動的には、作業工程がひとつの流れになっていれば、工程間をどのように仕掛品が流れているのが見てわかり、作業の進捗状況がよく分かります。
同様に、標準作業と標準時間を設定し、計画を立てて生産すれば、現場のまかせの体制よりは多く生産でき、生産性が上がります。
『目で見る管理』とは、生産する側も、管理・監督する側も、同じ尺度で現場・現物を見て同一の認識に立ち、全員が知恵を出して改善を行うことです。
つまり、誰が見ても現場の作業の状態が分かる、生産が遅れているのか進んでいるのか、品質不良が出ているのかいないのかがわかる仕組みの事です。
目で見えないものは改善できないということの裏腹です。
また、定点観測という方法もよく行われます。
同じ場所で、同じ方向に、改善の過程ごとに写真を撮っていくと方法です。
これによって、改善の途中経過を知り、改善の意欲を引き出し、改善過程を他のグループに示す事によって、改善ノウハウの共有を狙ったものです。
5S
5Sは、整理、整頓、清掃、清潔、躾の日本語をローマ字表示した時に、頭に全てSが付くことから5Sと呼ばれています。
顧客の価値観や好みによって、多品種少量生産を前提としなければ、企業は生き残っていけず、そのためにも5Sは重視されてきています。
整理・整頓で2Sとか、整理、整頓、清掃、清潔で4Sで使用されることもあります。
5Sは下記のとおりです。
- 整理(organizing)
いるものと、いらないものをハッキリ分けて、いらないものを捨てます。
- 整頓(orderliness)
いるものを使いやすいようにきちんと置き、誰にでもわかるように明示します。
- 清掃(cleanliness)
つねに清掃をし、きれいにすること
- 清潔(standardized cleanup)
整理、整頓、清潔の3Sを維持します
- 躾(discipline)
決められたことを、いつも正しく守る習慣づけ
食品工場では食品への頭髪の混入という大きな問題を抱えています。
これに対して、従来の管理手法では頭髪の混入の防止は完全に阻止できないのが実情です。
毎日髪の毛を洗うという個人のプライバシーである生活習慣にまで踏み込んだ対策が必要になります。
この躾は、科学的な合理性を持って指導すべきであって、権利の乱用は許されないものです。
小売販売業における接客マナーと同じようなものです。
ただ、工場という閉鎖された組織だと、どうしても権利の乱用が置きやすいので注意する必要があります。
工場に限らず、どの職場でも突然休んで、仕事に支障をきたすのが問題になります。
計画的な休暇で、事前に調整するする習慣づけが「躾」の第一にきます。
また、マレーシアでは5B運動、インドネシアでは5K運動として現地語に合わせて展開されています。
5Sは上から順番に整理、整頓、清掃、清潔、躾の順番に行なっていきます。
最初に整理するための『赤札作戦』があります。これは次の手順に従って行われています。
- 対象を決める。
普通、整理の対象は、在庫、機械・設備、それに床などスペースになる。
- 整理基準を決める。
必要と不必要との整理基準を決める。例えば、床在庫は、先1週間使わないものは不要とする。
- 赤札作成
不必要なものを、誰が見てもわかるようにするため、A4程度の大きさの赤紙を用意し、
不必要物の名称、管理担当など記載できるようにしておく。
- 赤札貼り
整理対象のもので、不必要なものは赤札を貼って回す。
- 不必要品置場の設定
赤札の貼られたものは、必要に応じ、時期をみて撤去する。
また、整頓するための看板作戦がある。
- 置き場所の決定と整備
整理した部品や部材、工具などについて置き場所を決める。
- 場所表示
ものをどこにおくか表示する。同時に、棚や場所も名称をつける。
- 品目表示
『この場所、入れるものはこれ』と決める
- 量表示
最小在庫量と最大在庫料を決める
5S活動の一環として、作業エリアと通路を白線を引いて分けることもよく行われる。その時、作業エリアと通路を色分けすることもある。
通路は人が通る通路と、クルマやフォークリフトの通る通路を色分けしている。
これは部品等の運搬中に、作業者に接触することによって直接・間接の労働災害を予防する安全対策にもなっている。
通路は運搬しやすいように、できるだけ直線にとる。
また、工場の床はコンクリートを打っていることが多い。コンクリートはタイヤの摩擦等によって表面が剥離して、ホコリが立ちやすい。
そのため、作業エリアや通路を色分けするのは、このホコリ対策も兼ねている。
5Sができたかどうかは、官能的な評価に頼らなくてはならないので、5Sモデル区域などを設けて、5Sをどこまでやれば良いのかの見本を作ることも大切である。
そして、5Sのやり方を公開することも重要である。
作業場の横には冷蔵庫とも呼ばれている部品置き場と、ストアーと呼ばれている製品置き場を設定する。
部品・製品置き場は通路に対して垂直に区分けをし、置き場は奥行きを深くするより、間口を広くし奥行きを短くする方が使いやすい。
部品・製品は三定(定位(どこに)、定品(何を)、定量(いくつ))を定め、部品・製品の過剰在庫を防止する。
改善の原則 ECRS
シックス・シグマで使われている手法です。
事務部門でも使える手法だと思います。
- 排除(Elimination)
業務の目的と手段の関係に分解整理し、上位目的から検討する。
- 結合(Combination)
別々に行なわれている工程を一緒にしてみる。
- 置換(Replacement)
工程の前後を入れ替えてみる。
- 単純化(Simplufication)
業務(作業)を分解し、複雑な部分を取り除き、単純化する。
合理化の3S(単純化、標準化、専門化)
一般に経営合理化の基本的な方向として、いわゆる3Sという考え方が導入されている。
これは5S等の情報整理の道具ではなく、IEのムダとりやTOC(制約条件の理論)と同様に改善の手段を直接示したものである。
- 単純化(Simplification)
多種多様の仕事を処理することはムダが多く、能率が上がらないうえに、
管理も厄介であり、ロスが多いので、なるべく製品や仕事の種類を減らすこと。
それには材料、部品、製品、治工具などを整理して、種類を減らすことが必要である。
- 標準化(Standardization)
単に減らすだけでなく一定の種類、内容のものに統一する(作業方法も一定化、明文化する)。つまり、作業の容易化や、原価の引下げに役立つ方向にまとめていく。
- 専門化(Specialization)
種類を減らすため窓口が狭くなるが、
その代わりに、作業や製品について技術的、品質的に特徴を打出し、同業の誰にも負けないような優位性を獲得する。
(専門メーカーとしての強みを発揮)
単純化は生産管理のみならず、管理の基本である。製品にしろ工程にしろ単純でわかりやすいことが、ムダを省き改善を進めやすくする。
標準化と専門化は、相反する概念であり、この2者は組み合わさることによって効果を発揮する。
つまり、マス・カスタマイゼーションの概念のように、専門化する部品は徹底的に専門化させ、共通化する部品を増やしていくことができる。
日本の競争力回復のために
今、世界の中で最も影響力のある競争戦略の経営学者は、マイケル・E・ポーター教授である。
ポーター教授は知日家でもあり、その理論には日本の経済環境になじみがある。
ポーター教授は下記のように書いている。
何十年も前、まだ素朴な製品を作っていた日本企業は、デミングの総合品質管理の原則を採用し、それを国際的な品質管理運動にまで昇華させた。
日本企業は、オペレーション効果をどうやって高めるかを世界に教え、その革命はいまだに進行中である。
だが、今やそのアプローチは、収穫逓減の段階に入っている。
日本企業は、かつてコストや品質についての考え方を改めたのと同様、戦略についての考え方を一新しなければならない。
(中略)
すなわち、競合他社の真似ではない独自の戦略をどうやって作り上げるか、産業構造をどう理解するか、情報技術の力をどうコントロールするか、企業の境界を再定義して多角化を考え直すにはどうすればいいのか、といった課題である。
(競争戦略論U 日本語版への序文より)
ポーター教授の生産性の考え方は、
生産性 = (製品の品質や仕様) X (生産する際の効率)
である。
オペレーション効率(operational effectiveness)とは、同様の活動を競合他社よりも上手に行うことである。
1980年代、日本企業はオペレーション効率(生産する際の効率)で世界を席巻した。
当時、欧米企業は経営・戦略を重視して、オペレーション効率はあまり重視していなかった。
日本企業は、ライバルよりオペレーション効率の点ではるかに上回っていたから、おざなりの製品を作っていても競争力があった。
しかし、欧米企業にオペレーション効率をキャッチアップされて、おざなりの製品では競争力がなくなった。
ただ、日本企業が欧米企業に対して開発で先行していた小型車やRVでは、競争力を維持していた。
そのためもあって、おざなりの製品を改めず、ただオペレーション効率の追求を行なった。
生産が増えない状況では、改善活動には限界がある。
競合する企業が、効率のよい外部企業に活動をアウトソーシングしていけば、アウトソーシング先が重なり、その活動は似たりよったりになってくる。
品質改善やサイクル・タイム短縮、供給業者との提携などをお互いに模倣すれば、戦略は同じものに収斂していく。
そして競争は、すべての企業が同じ道をひた走る、誰も勝利を得られないものとなってしまう。
オペレーション効率のみに立脚した競争はお互いを傷つけるだけであり、競争を制限することでしか止めようのない消耗戦になってしまう。
日本の強さは現場主義であった。現場感覚にあわない経営哲学や経営手法を排除してきた。
1980年代に日本の製造業の品質の高さとコストの低さで世界を席巻したため、現場主義の考えが歪められてきた。
本来の現場主義は、製造現場のみではなかった。
開発部門には開発の現場があり、販売部門には販売の現場がある。
理論や報告が、現場の情報と異なっていないを自分の目で確かめるのが本当の現場主義である。
開発部門や販売部門では、わからないことは試みに行なって、そこから学ぶことは重要である。
アメリカから科学的管理法の考えが入ってきて、計画重視の考え方が尊重されるようになった。
工場での生産は、コンピュータのプログラムと同じで、本来計画どおりに実施できる仕組みでなければならない。
人間の消費行動はほとんど解明されていないにも係わらず、工場の生産と同じようにコントロールできると考えてしまった。
現場主義を唱えながら、本来の現場主義を放逐してしまった。
最近、オペレーション効率は良いのだから、本社機能である戦略構築力を高めるべきだという考えがある。
デルのような経営戦略を強要されている、言いがかりのような話である。
『オペレーション効率は良い』けれども、自社の営業方法や経営方針に合っていないからである。
例えば、デルの場合では1人ひとりのお客様にパソコンを売るビジネスモデルを生み出した。
多くの企業では、デルのビジネスモデルの方法に似せて、一人ひとりのお客様の要望に対応した営業に移行しようとしている。
それに対して、多くの日本企業の生産部門は、横並び意識でトヨタの生産方式と比較して『オペレーション効率は良い』と思っている。
結果、生産部門が生産効率を優先させ、営業部門の足を引っ張っているのである。
トヨタ並みの販売力を持たないとなりたたない状況に追い込まれたのである。
『イカロス・パラドックス』として書かれている内容と同じ状況である。
オペレーション効率によって、いかなる製品も低コスト・高品質(高信頼性)で作れることによって、おざなりの商品を作ってしまい、若者離れを引き起こしてしまった。
トヨタ自動車は『イカロス・パラドックス』を奥田元社長の改革で乗り切り、更に強くなった。
理論どおりに生産できる製品は、生産管理のノウハウは生産機械やそれに付随するソフトウェアに吸収される。
このような製品を作るには規模の利益が重要となり、賃金の安い国に生産が移転しやすい。
理論どおりに行かず、試行錯誤でしか生産ノウハウが確立できない製品が、日本には向いている。
最近、このことは「すり合わせ技術」と呼ばれている。
但し、生産における「すり合わせ技術」ではなく、設計における「すり合わせ技術」である。
参考ホームページ
参考文献