こんなエピソードがある。かつて米ビックスリーの1つだった旧クライスラーの会長兼最高経営責任者(CEO)のロバート・イートンは、94年の年頭会見で、「我々は日本メーカーに負けない生産効率を実現した。もはやトヨタに学ぶものはない」と発言した。 コンサルタントを雇ってトヨタ生産方式を自社工場に導入し、大幅な生産性向上を果たすことに成功したからだ。トヨタ生産方式は、1978年に当時トヨタ自動車の故大野耐一副社長(1912〜1990)が『トヨタ生産方式』という本によって一部が公開された生産方式である。 日本企業の業績の低下が激しくなっている最近の状況を打破するために、トヨタ生産方式の研究が進みつつある。
その数ヵ月後、クライスラーの1人の幹部が「トヨタ生産方式を完全に学びとったかどうか確かめたい」と、米ケンタッキー州にあるトヨタのケンタッキー工場を訪問。朝早くから丸1日かけて念入りに視察した上で、帰る間際にこう漏らした。
「今日はほんとうに疲労困憊した。クライスラーはまたトヨタに何も学んでいないことがはっきりと確認できたよ」(32ページ『トヨタはどこまで強いのか』)
トヨタの成功の秘密は何かと問われれば、私はトヨタ生産方式を挙げます。 「どこが秘密だ、もう十分世界的に有名じゃないか」と思われるかもしれませんが、これが単なる生産システムだと認識している限り、トヨタという会社の本質を理解したとは言えないでしょう。
トヨタ生産方式は製造システムという以上に、トヨタの経営全般に染み渡った哲学なのです。 世界のトヨタマンの体に組み込まれたDNAなのです。このDNAを私は「不断の努力で自分を高めていく意思」と理解しています。 製品の質を高める、顧客に心から満足してもらうために自分を磨く。これは当然、楽ではない、厳しさ、苦痛を伴うのも確かだ。
(中略)
常により良いものを追う姿勢がいかに人間の成長にとって大切なのかを理解し、それを自分の仕事に応用できたのです。
なぜなら、1つの小さな成功は次の改良に向け良いスタートを切ったに過ぎず、さらに良い方法はないか、改善できるところはないかと進んでいくからです。 この不断の努力を社員のやりがい、生きがい、喜びに変えてしまうところが、トヨタとほかのシステムの決定的違いと言えます。(28〜30ページ『トヨタはどこまで強いのか』)
東京大学経済学部教授の藤本隆宏は、トヨタ生産方式の指導者から次のような話を聞かされた。
「トヨタ生産方式の強みは何か。初級者は、在庫が少ないことだと考える。 中級者になると、問題を顕在化させ、生産性向上、品質向上を強制するメカニズムが含まれていることだという。 しかし、上級者は何と言うか。問題を顕在化して解決する作業を繰り返すうちに、問題がない状況が不安になって、みんなで一所懸命問題を探し始めることだ」
藤本は言う。「何万もの社員が、いわば問題解決中毒になっているような状態。それがトヨタの凄みだ」(32〜33ページ『トヨタはどこまで強いのか』)
トヨタ生産方式の手法は、ジャスト・イン・タイム(just-in-time)と自働化(automation with a human touch)という2つの手法を基本にして発展した。
ジャスト・イン・タイムは、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」という生産に流れを作ることである。
最終的には、お客様を最終工程と考え、社内だけでなく、部品会社まで見えない糸でつないている。
トヨタ生産方式は、どこまでも「消費者を第一」に考える、マーケット・インの思想によって貫かれたシステムであるという発想である。
トヨタ自動車ではジャスト・イン・タイム方式を、カンバン方式で具体化している。
しかし、ジャスト・イン・タイム=カンバン方式 ではない。
各工程をカンバン方式で連動させているだけである。
自動車以外の他の業界では、ジャスト・イン・タイムをカンバン方式以外で実現しても、それはトヨタ生産方式である。
生産に流れを作る重要なキーワードが『100%良品』であり、流れの中で徹底されたムダ取りである。
TOQ(制約条件の理論)やサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)に似た考え方を既に持っていた。
消費者を志向しながら、同時に利益を生み出すモノづくりを目指すのが、トヨタ生産方式である。
ムダな在庫を持たない、ムダな経費をかけない、ムダな設備を持たないのである。
キャッシュフロー経営に似た考え方を既に持っていたことになる。
「ジャスト・イン・タイム」は豊田喜一郎氏が最初の発案者だと言われている。
つまり、「ジャスト・イン・タイム」のバックボーンとして、トヨタ自動車が第二次世界大戦後に在庫を抱え過ぎて倒産しかかった経験があると考えられる。
この時、豊田喜一郎氏は社長を辞任し、その後しばらくして他界した。
この経験によって、最も最後の後工程を消費者と考え、売れた分だけ生産するというシステムを作り上げた。
切れ目なくモノが流れるのを妨害している要因すべてムダである。
このムダを取って、可能な限り速いペースで滞りなく流すところにトヨタ生産方式の特徴がある。
不確実性のコストの増加の回避は、売れるか売れないかわからないクルマは生産せず、売れるクルマのみ生産することである。
将来、売れ残ったクルマを叩き売りするコストを発生させないことである。
それはクルマに限らず部品にもあてはまり、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」という思想によく現されている。
『生産量と必要数がイコールにならなければ絶対にいけない』のである。
『必要数』とは『売れ行き』のことである。すべて市場の動向から決ってくる。
したがって生産現場にとって『必要数』とは与えられる与件であり、勝手に数量を増減することができないことは明らかである。
大量生産とスピードアップによる生産性向上よりも、1個流しや段取り時間の短縮によって切れ目なくモノが流れるシステムによる生産性の向上を図ったのである。
例えば、自動車の組立ラインでは、各工程の組付け作業に必要な部品が、必要な時に、必要な量だけ、その工程に到着しなければならないということであり、部品の到着が早すぎても、遅すぎてもいけないのである。
これをトヨタ生産方式では、後工程が前工程から必要なものを引き取るという後工程引取り方式で実現した。
後工程引取り方式はよく考えられた方式である。スペース節約のために引取り部品の置き場は限られている。
微妙のタイミングで引き取るには後工程引取り方式の方が、前工程押し込み方式よりも優れている。
更に、待ち時間が発生するのは自部門の戻った時であり、別の作業を行うことができる。
しかし、前工程押し込み方式では、待ち時間はそのままムダな時間になってしまう。
後工程引取り方式の利点を持ってジャスト・イン・タイムを実現するための管理の道具が、『かんばん』である。
かんばんの一番の役割は生産・運搬の指示である。
かんばんにとって重要な点は、情報の流れとモノの流れを一致させることである。それも部品補充の情報が、コストをかけずにモノに付随して流れることである。
コンピュータにかかる費用が劇的に低下した今、電子かんばんシステムに移行しても、かんばん本来の機能に変更はない。
ここで組立ラインでは1台ずつ流れ生産を行なっており、鋳造やプレスではロット生産を行なっているから、同期化を図るためには、段取り時間の短縮によりロットサイズを極力縮小することが必要である。
一般に、段取り作業はシングル段取りといって10分を切ることを目標としている。
段取り時間の短縮は直接コスト削減を目標としているわけでなく、売れるペースで生産を行うためにネックとなる段取りコストの増大を減少させるためにある。
トヨタでは、月次の生産計画を立案しており、月次生産予定として各工場や協力メーカーに伝達されるが、日々の各工程への実際の生産指示は、最終組立ライン1箇所に伝えられ、他は順次工程が前工程から必要なものを必要な時に必要な量だけ、かんばんを使って引取ることによって行なう。
生産が当初の計画どおり進行することは実際にはない。日々の生産計画の微調整はかんばんで行なっている。
かんばんを円滑に運営するためには、生産の平準化(Production leveling)が前提条件となる。
生産の平準化とは、最終組立ラインが部品を前工程から引き取る際に、各部品の量と種類を平均化して消費するように、いろいろな車種を混流生産することである。
ジャストインタイムが全社的に達成されれば、工場における余分な在庫は完全に排除されることになる。
在庫削減の本当の意味は、製造現場の問題点を顕在化させ、問題解決の改善活動を通じて製造上のムダを排除し、製造コストを下げるには、キャッシュフローの節約が大切であり、少人化が重要である。
少人化とは、同じ生産を行なうために必要な作業者の人数を減らすことをいう。計算上0.1人とか0.5人減ったというのは少力化であって少人化ではない。
少人化の代表的な例は、設備面では機械の工程別配置とU字型の機械レイアウトの採用である。これによって需要量の増減に応じて投入する作業者数を増減し、サイクルタイムを調整する。
また、作業面では、このような工程系列のなかで作業可能な多能工の育成を進めている。
多能工が複数の機械を取り扱う手順などを示したものが標準作業である。標準作業は、標準作業組合せ票と標準作業票にまとめられる。標準作業には、サイクルタイム、作業順序、仕掛品の標準手持ちが表示されている。
ここでサイクルタイムとは、各生産ラインが1つの部品(または製品)を何分何秒で作らなければならないかを示すものである。
すなわち『サイクルタイム=1日の稼動時間/1日の需要量(生産必要数)』である。
たとえば、需要量が増えた場合は、サイクルタイムを短縮しなければならない。
標準作業は、現状の作業を見直すための手段でもあり、標準作業の改訂が常に行われている。
カンバンは、トヨタ生産方式のジャストインタイム生産を実現する管理の道具である。これはスーパーマーケットからヒントを得て考え出されたものであると言われている。
スーパーマーケットは、客にとって、必要とする商品を、必要な時に、必要な量だけ買うことができる店である。
生産現場においては、この考え方を利用して、前工程(スーパーマーケット)へ後工程(客)は、必要な部品(商品)を必要な時に必要な量だけ引取り(買い)行く。そして、前工程は引き取られた量だけ生産補充する。
このように、カンバン方式は作り過ぎを防止しながら全体としてジャストインタイムを実現する道具であるが、
カンバン方式を実施するための前提条件には、次のようなものがある。
テイラーは、言うまでもなく、能率を時間と動作の観点から捉えようとした元祖である。 もし作業を全体の流れに基づいて一度バラバラに分割し、のちにその各部分を部分ごとにほんとうに理想的な形に修正し、ふたたびひとつの流れに統合することができさえすれば、その作業グループは、真に最高の遂行能力をもつことになる。 これが、テイラーの基本的主張である。(エクセレント・カンパニー、p33)ジャスト・イン・タイムの考えは、いかなる生産台数でも利益の出ることを目指した考えでもある。 量産しなければ利益のでない体質を持った企業が、量産を維持するため、無理な販売を行なって自滅していった。
トヨタ生産方式のもう1つの柱は「自働化」である。「自動化」ではない。ニンベンの付いた「自働化」である。
「自働化」は知恵を使って生産するという、日本の“ものづくり”の強さそのものを表している。
最近は機械が高性能・高速化しているので、何かちょっとした異常が起きた場合、例えば、機械の中に異材が混入したり、スクラップづまりをして、設備や型が破損すると、何十、何百という不良の山を瞬く間に築いてしまう。
このような自動機械では、不良品の量産を防止することもできず、また機械の故障を自動的にチェックする働きも組み込まれていない。
自動織機は、経糸が1本でも切れたり、横糸がなくなったりした場合、すぐに機械が止まる仕組みになっている。すなわち、「機械に善し悪しの判断をさせる装置」がビルド・インしてあるのである。
「ニンベンのある自動機械(automation with a human touch)」の意味は「人間の知恵を付加した機械」という。
例えば、「定位置停止方式」とか、「フルワーク・システム」とか、「バカヨケ」その他、もろもろの安全装置が知恵として付加されている。
この自動機にニンベンをつけることは、管理という意味も大きく変えるのである。すなわち人は正常に機械が動いているときはいらずに、異常でストップした時に初めてそこへ行けば良いからである。
だから1人で何台もの機械がもてるようになり、工数低減が進み、生産効率は飛躍的に向上する。
例えば、機械加工の工程において、縦に旋盤、フライス盤、ボール盤といったように、生産の流れにそって、各々5台ずつ並んでいたとする。
ここで1人の作業者が旋盤5台扱うことを「多数台持ち」といい、このような職場の編成をジョブ・ショップという。
それとは別に、1台の旋盤、1台のフライス盤、1台のボール盤といったふうに1人の作業者が、多数の工程を担当することを「多工程持ち」といい、このような職場の編成をフロー・ショップという。
このように多数台持ちや多工程持ちを実現するには、機械が加工完了で止まるようになっていなければならないとか、異常が発生した時にそれを発見して安全の側にとまらなければならないという要求が出てくる。
この自働化という考え方は、機械のみならず、手作業ラインまで拡大されている。
ある手作業ラインで異常が発生した場合、作業者はストップボタンを押してラインを停止させることができる。ラインが停止すると『アンドン』と呼ばれる表示板が点灯する。
この表示板を見て管理者や監督者は異常を確認し、原因の対策を行なう。ここで重要なことは、二度と同じ異常が発生しないように真の原因をつかみ、徹底的な対策が施されることである。
また、このあんどんに代表されるように、生産状況の正常・異常が目で見て瞬間にわかるようにする方法を『目で見る管理』という。かんばんや標準作業なども目で見る管理の方法である。
従来の自働化は品質保証の手段であったが、生産予定数量になったら停止するという機能も備わった。
「自働化」は単に「自動停止装置付き機械」ではなく、源流管理の考え方である。糸が切れる時はムダが始まる時、作業者のムダが始まる時ストップボタンを押す。
源流管理こそがコスト削減のキーポイントである。それゆえに「目で見る管理」が重視される。
もうひとつの本質は、人の作業と機械の作業を分け、機械でできる作業を人にはやらせず、機械でできない人が行わなければならない仕事を担当させる。
作業者にとって意味のないムダな作業を除くことは1人ひとりの働きがいを高めることに通じる。
人ならではの能力を充分発揮させる仕組みとして、自働化は人にやさしいと言っている。
トヨタ生産方式は目で見て問題がはっきりしない場合に、「5回のなぜ」を繰り返して、原因の向こうに隠れている「真因」を突き止めるという、きわめて科学的な態度を積み重ねてつくり上げられてきた。
「問題を顕在化」させたうえで、「5回のなぜ」を繰り返して、「真因」を突き止め、現場の人間の知恵によって「改善」を施す。
とかく人は問題が起きないようにと考えがちである。
そうではなく、問題が起きた時こそ、改善のチャンスと捉える前向きな取り組みを行っている。
このことはトヨタ生産方式はただ単に改善することを目的にしているのではなく、改善を行える人を育てることを目的にしているからである。
しかし、「5回のなぜ」は辻褄合わせなら簡単にできるが、本当に実践するには原理・原則を理解していなければできない。
トヨタ生産方式が改善も行いながら、人を育てることを目標にしているからである。
何かトラブルが起きた場合に、不具合の発生箇所だけに目を向けるのではなく、異常を引き起こしている真の原因、つまり「真因」にたどり着くまで、「なぜそうなったか」徹底的に考えよという意味だ。
それにより再発防止につながる「対策」が取れる。
きちんとした「対策」を取らず、異常発生箇所の「処置」だけで終わらせると同じ問題が繰り返される。
「現地、現物、現実」という三現主義は、単に「現地で、現物を見て、現実を知る」のみを現しているのではない。
これは問題が発生した因果関係を考える上で、前提条件を示しているだけである。
「現地で、現物を見て、現実を知る」ことが目的ではなく、因果関係を考えるひとつの手段にすぎないのである。
(中略)
かんばんを増発するのはあくまで「処置」。増発したところで、かんばんはまた紛失するだろう。
油でくっつかないようにケースの外に出して初めて「対策」となり、問題解決につながる。(81〜82ページ『トヨタはどこまで強いのか』)
働いている人についても、多くの改善を積み重ねて、能力がフルに発揮できる体制をつくろうとする。
何事もゼロから見直す努力をすれば、改善の余地はいくらでもあるし、それが進歩につながっている。
人間の「知恵」を信じるだけでなく、いかにして知恵を発揮する機会を現場で働く人に与えるかが重要である。
トヨタ生産方式の神髄は、「社員1人ひとりが、自分の仕事のやり方について、問題点を見つけて、解決し、改善をしていくチャンスを与えられ、社員が一体となって、より優れた企業をつくるために働いている」という点にある。
トヨタ生産方式では、標準作業や生産工程などを厳密に決めている。
知識を重視し、改善のための前提になる、と考えているからである。
作業標準書は知識を伝え、知識を劣化させない手段である。
作業標準は生産変動によって、作業者を異動しても直ぐに作業できることを目的として作成されるマニュアルとしての機能を持ち、品質を保つ。
トヨタ生産方式では、熟練度の低い新入り作業者について、「3日間で一人前にする」ことが目標となっている。
そのために、誰もが「目で見てわかる」作業標準でなければならない。
大野耐一氏が作業標準書の必要性を最も感じたのは、第二次世界大戦中に生産現場の熟練工たちが召集令状によって抜けていった時であった。
熟練工たちはしだいに素人の男性や女性に変わっていったからであった。
作業標準のもうひとつの役割として、改善を行う時のベースになるものである。
標準作業が決っているから、改善すべき点も見えてくる。
上から言われた内容を黙々とやるだけでなく、たえず現場の人間は標準作業をモノサシに、自分で考え、自分で解決していける。
作業標準を作成する過程は、次のようになっている。
1980年代にアメリカにおいて、日本自動車産業の生産方式が研究された。
日本自動車産業の生産方式と言われたが、実際にはトヨタ生産方式を中心として研究が行われた。
『リーン生産方式が世界の自動車産業をこう変える』では、トヨタ生産方式を理想化してリーン生産方式として書かれていると言われている。
トヨタ生産方式は、トヨタ自動車企業破綻しかけた時の影響を大きく受けている。
『顧客の創造と維持』に投資を集中させ、効率化に対して徹底的にコストをかけず、投資を行なわないものであった。
しかし、1980年代に自動車工場の自動化が、大幅に進んだ。
北米での利益を効率化投資に使い、キャッチアップを図った。
『トヨタ方式の真実』に書かれているように、一時期トヨタ自動車はトヨタ生産方式の本質を見失っていた。
『トヨタ式人づくりモノづくり』の冒頭に、大野耐一氏が米国ケンタッキー工場に赴任する張富士夫氏に、「張は、売れているときのやり方を知らないから」とアドバイスした話しが載っている。
トヨタ生産方式は、単なるケチケチ方式ではない。
これはトヨタ生産方式がいろいろな局面にある、多様な業種に適用できることを示している。
トヨタ生産方式の本質は、モノづくりは人が担う、自律的な人を作る方法なのである。
トヨタがアメリカに工場を建設した時、非常に多くの時間を従業員の採用のために使った。
トヨタ生産方式のものの見方・考え方を習得できる適切な人を選ぶことを重視している。
また、自営業の要素の多い農業従事者の自律的な考え方を重視し、工場進出に農村地域を選んだ。
さらに、トヨタ自動車では社員の育成のために、トヨタウェイ2001等を作った。
トヨタ生産方式に共感し、自立的に仕事をする人を採用、配置、育成するシステム全体が、トヨタ生産方式である。
トヨタ生産方式の源流は、第二次世界大戦の前後の航空機会社にあるという研究がある。
この研究が的を得たものならば問題はない。
しかし、全くの見当違いだけならばともかく、トヨタ生産方式の本質を覆い隠すような内容である。
トヨタ生産方式の本質は、売れた順番にひとつずつ生産することである。
在庫を持たない生産方式と言われているが、部品会社のような受注生産ではないので、最低限の在庫はもたなくてはならない。
また、アメリカのように在庫を持って、販売会社の要求に対応しなければならない地域もある。
それで、不要な在庫を持たない生産方式であると言われている。
カンバン方式等のトヨタ生産方式を実践する上での道具は、身近なところから見つけ出し、改良を加えている。
かつて自動車修理工場では内装に使われているクリップを外すのに、マイナスドライバーの頭を叩いて、独自の道具を作っていた。
カンバン方式はこのマイナイドライバーと同じで、源流を調べても意味を持たない。
売れた順番に、売れただけ生産するというのは、生産部門には大きな負担となる。
そのため、生産部門は、同じ車種をまとめて生産した等の都合の良いことを考えがちである。
最低限の在庫を維持するのは難しい。
常に、過剰生産への誘惑がある。
トヨタ生産方式は、安直になりやすい生産部門に自制を求める生産方式である。
そのためにも人材育成は重要である。
参考文献