生産管理講座

統計的品質管理(SQC)



統計的品質管理は品質管理の基礎知識


 日本の品質管理は世界最高水準と言われてきたが、品質管理はハウトゥ化を経て、退化してきているように感じる。 その傾向が著しいのが、統計的品質管理ではないかと思う。

 品質管理が取り扱う問題は、次の2つの視点があると考えている。
  1. 平均値の安定
  2. バラツキを押さえる

 1番目の平均値の安定は、加工するものの長さ、重さ等を所定の値に設定し、保証する方法である。 これは生産を行うにあたって、あまりにも当たり前のことと考えられていた故に、ほとんど品質管理で問題にされることはなかった。

 例えば、薬局での薬の調合が良い例になると思う。 薬を1回分それぞれ図るのではなく、例えば16回分をまとめて図り、増量剤に近い薬と混ぜ合わせ、これを目分量で2等分、4等分、8等分、16等分と分け、最後は目分量で調整する。 一見、非科学的な方法と思われるが、成分の平均値は高い水準で合っている。 問題になるのは、1回分のバラツキだけである。

 このことは薬局に限らず、機械加工現場でも加工方法を変えることによって精度を出す方法を暗黙知として行われていた。 平均値を安定を証明する方法は、演繹的方法で行われる。 このようなルール(プロセス)で加工を行っているので、このように結果(平均値が安定している)を示す。 更に、統計的検定を使って、この結果を強化する。 平均値の推定には、少なくとも100から400のサンプルが必要となる。少量生産では対応できない。 もしも平均値の一定という条件がなければ、バラツキを押さえるという現在の統計的品質管理は成立たなくなってしまう。
 ISO9000sの品質管理システムは、この平均値の安定から設定している。 だからこそ、最初は当たり前の品質管理をくどく書かされると思われていた。

 2番目のバラツキを押さえることこそ、統計的手法を問題解決の手段として多く用いる品質管理を統計的品質管理(SQC:Statistical Quality Control)と呼ばれているものである。 統計的品質管理は、アメリカのベル研究所で行われた2つの研究に端を発する。 ひとつはシューハート博士(W. A. Shewhart)の管理図法であり、ものひとつはダッヂ(H. F. Dodge)とローミング(H. G. Roming)による抜取り検査である。 シューハート博士の『工業製品の品質の経済的管理法』の著書が1931年に出版され、管理図や統計的方法がアメリカで工業に応用された。
 また、同時代、イギリスのロザムステッド農事試験場では、フィッシャ(R. A. Fisher)により実験計画法の基本的な考え方が提唱された。 これらの手法が我が国に普及し始めたのは1950年代である。

統計的品質管理の4原則

  1. 目的明確化の原則
     データをとる目的を明確にし、アクションの対象を的確に把握することである。

  2. 数量化の原則
     工程や検査ロットに対してアクションするには、統計的に処理できる数量化されたデータであることが必要です。すなわち、データの位置やバラツキを整理して数量化することである。

  3. 層別化の原則
     目的とする母集団の内容ができるだけ等質になるように層別する。製造工程で、品質のバラツキを大きくする要因には、例えば材料のメーカー別、産地別、機械のそれぞれの特性とくせ、作業条件別、作業者の性質、熟練度の違いなど、色々ある。 したがって、工程を解析する場合には、過去のデータを要因別に分類して調査しなければならない。このようにデータまたは母集団をいくつかの層に分けることを層別といい、その部分集団を層という。 例えば、A作業者とB作業者が造った製品のできばえの品質が、同じようなバラツキを持っているかどうかを調べるためには、A作業者とB作業者の製品に他の製品が混じることのない状態で層別を行なわなければならない。

  4. 確率化の原則
     工場でデータをとるのは、それによって工程やロットなどの母集団に適切なアクションをとるためであり、試料はその母集団を忠実に代表していなければならない。 すなわち、試料を母集団から、かたよりなく、アトランダム(at random)に抜取ることが必要で、このように抜取ることをランダム・サンプリング(random sampling)という。 品質管理用語では「ランダム・サンプリングとは、母集団を構成している単位体あるいは単位量などが、いずれも同じような確率でサンプル中に入るように、サンプリングすること」と定義している。 データはランダム・サンプリングによって初めて確率の場にのる、すなわち、統計的な考え方の基本となる最も重要な原則である。

正規分布

 偶然原因だけによる変動をしているデータの集まりであれば、このデータの分布は中心極限定理に従い正規分布に近似できる。 機械加工等の物理的数量の計測値のバラツキは、偶然によって起きていると考えられ、多くは正規分布に従う。 分布の中心に平均があり、分散の平方根がシグマ(標準偏差)で表される。シックス・シグマのシグマはこれである。 一般的な管理図では、3シグマ法といって、平均から上部・下部管理限界として各々3シグマずつ距離をとる。 この上限・下限管理限界の間に、99.73%が入り、管理限界の外に出た時に、その原因を探求して、除去するための努力をする。
 シックス・シグマは、上限・下限管理限界に6シグマを使用した場合、この管理限界の外に品質保証のための品質品位がくる状態のことをいう。

抜取検査(sampling inspection)

 全数検査は、検査の対象となる製品の集まり(これを検査ロットという)の全数について、1個1個検査することである。 全数検査を完全に行なえば、その製品の品質を完全に保証することができる。 しかし、ボルト・ナットのように値段が安くて検査個数の多いものに、莫大な時間と費用をかけて全数検査を行なうことは、経営の立場から不利であり、また限られた時間内で全数検査を完全に行なうことは、人間の能力からみて不可能に近い。 特に紙の引裂試験や電球の寿命試験などのように、その製品を破壊したり商品価値をなくしてしまわなければ、その特性を測定できない破壊検査のような場合には、全数検査を行なうことは全く不可能である。 このような場合に、抜取検査を適用する必要がある。

 抜取検査は全数検査よりも検査個数が少ないので、検査の時間と費用が少なくてすみ、経済上の立場からおおいに有利である。 抜取検査は検査ロットの全部を個々に調べるのではないので、検査に合格したロットの中に、1つも不良が入っていないと断言することはできない。 したがって、自動車のブレーキなどのように不良品がひとつでも混入することが許されない重要な部品には、抜取検査を適用することはできない。 このように全数検査と抜取検査にはそれぞれ特徴があるので、これをどのように使い分けるかは、品質保証の程度と経済性の立場から考えてきめねばならない。 従来、工場では直感的・慣習的に、あるいは全体の数の何%を抜取るといった具合のパーセント抜取が行われてきた。このようなやり方では、信頼してロットの品質を保証することができない。 そこでこれに替わる新しい抜取方法が必要になる。この新しい抜取検査の適用が必要になる。この新しい抜取検査は、ロットから資料を抜き取って調べ、その結果をロットの判定基準に照らし合格・不合格を判定する検査をいう。 この場合ロットの大きさと資料の大きさの関係、ロットからの試料の抜取り方、判定基準などは、経済的な要求に基づいて、統計的方法によって定める。

実験計画法(design of experiment)

 会社では、製品の品質向上、不良率の低減、原価低減、販売促進等に日夜苦心しているのですが、なかなかこれで良いというところにはいかない。 色々と原因と思われるものを考え出しては手を打っているのだが、効果の方はあったりなかったりで、結局当面の作業に追われどおしであることが多い。 好ましからぬ結果に対しては、それが品質であろうと販売量であろうとコストであろうと、必ず原因があるはずである。 しかし、多くの場合特定できる1つや2つの原因でなく、種々の原因にの働き方にも強弱や相互作用があり、これをつきとめるといっても一筋縄ではいかないことはご承知のとおりである。 しかし問題の解決には、何としても好ましからぬ原因を把握しなければならない。それには技術上の知識経験が必要であるということはいうまでもないことであるが、単にこの知識経験によるだけでは、一般に解決は困難であることが知られている。 例えば、ある製品の強度を上げたいという場合、この強度に影響する幾つかの原因(例えば、温度、時間、材料の成分など)があるはずだ。 このような原因を品質管理用語で因子(factor)というが、これらの因子の内でどれが種として影響しているのか、最適条件は何かなどについての情報を得たいことがしばしばある。 このような場合に最も経済的にかつ精度良く情報を把握する手法、それが実験計画法です。 つまり、品質特性のとる値が同じ条件下で繰返しても品質が一定とならず、若干のバラツキを伴なう場において、実験のやり方と実験データの解析仕方を与える方法がある。 実験のやり方では、局所管理、無作為化、反復の3原則と多因子要因実験の原則がある。

管理図

 管理図(control chart)は、シューハート博士が名づけてから長く用いられている。 統計的に求めた限界線を持ち、管理に用いられるグラフであり、抜き取り検査に対応した統計的手法の1つである。 これは生産工程が安定な状態にあるかどうかを調べたり、あるいは工程が安定な状態を保っているかをチェックするために用いられる。 多くの日本の企業では全数検査を主体にした品質管理を行っており、意外な程全く管理図について理解していない企業が多い。

 工程を安定した状態に保つために、上方と下方に管理限界(control limit lines)を設けて、管理状態がこの内側にあり安定しているか、それとも線の外側に出ていて異常な状態かを見分けるために使う。 最も基本的な、また最も実際的な多用されている管理限界はバラツキ(標準偏差)の3倍(3シグマ)の値を使用したものである。 バラツキの分布が正規分布(normal distribution)であれば、99.7%はこの管理限界の中に入る。

 製品にはお客様の品質の要求として、規格限界が決められている。 管理されたバラツキの状態で、規格上限と下限が、上方と下方に管理限界の中にあるときは、工程能力(process capability)が十分あるという。 最近、流行になっているシックスシグマは、規格上限と下限の間に工程のバラツキ(標準偏差)の6倍ずつが入るように工程を管理する方法である。 但し、シックスシグマは標本調査による工程の管理の手法であり、工程そのもののバラツキをみることはできない。 工程能力とは質的能力を示すものであり、工程能力を高めることは、品質管理の目標でもある。管理された工程でも、工程能力が不足している場合は、長期的改善を行なう。なお、生産数量に対しては生産能力、品質については工程能力という。 管理図は、その用途によって、計量値のものと計数値のものに大きく別けられる。

(1)計数値の管理図

  1. Xバー-R管理図(x-R chart)
     管理する品質特性値が長さ、重量、時間、電気抵抗、引張りの強さ、純度などの場合に用い、平均値の変化にx管理図(x chart)を、バラツキの変化にR管理図(R chart)を使用する。

     平均値の標本分布について下記が認められている。
    • 母集団が平均値μ、分散σの正規分布する時、大きさnの標本の平均値Xバーは、平均値μ、分散σ/nの正規分布する。
    • 母集団が正規分布でなくても、標本の大きさnが大ならば、標本平均値のXバーの分布は近似的に正規分布と考えてよい。
    • 正規母集団の場合、大きさnの標本から計算した標本分散をSとすれば、(Xバー−μ)/(S/平方根(n−1)は自由度n−1のt分布をする。

     これらのことからをもとにして管理図が作成される。 だか母集団の平均値μの値と、母集団が正規分布するかどうかがわからなくてはならない。 そのために標本数100から400の調査を行って、上述のことがらを調べる。 平均値については、加工目標値と平均値に大差ないときは加工目標値を使用することが多い。
     日常的な管理では標本数10数個をとり、上下限界値として2シグマをとると、異常がなくとも20回の1回程度の異常値がでる。 日常的に工程をチェックするには、この程度の異常値が出る方がよいと考えられる。

  2. x-R管理図(x-R chart)
    x(メジアン:median)とは、偶数データのときは中央値、偶数データのときは中央の2つのデータの平均をいう。つまり、x-R管理図は中央値と範囲の管理図である。

  3. X管理図(Xchart)
    個々の測定値の管理図です。大きな変化を検出するのに向いている。

    (2) 計数値の管理図

  4. P管理図(P chart)
    不良率管理図(fraction defective chart)ともいわれ、不良個数Pnを検査個数nで割った不良率Pを管理する場合に用いられる。

  5. Pn管理図(Pn chart)
    不良個数管理図(defective unit chart)ともいわれ、試料中の不良率Pnにより管理する場合に使用する。

  6. C管理図(C chart)
    欠点数管理図(defect chart)ともいわれ、各ロットに含まれる欠点数Cにより管理する場合に用いられる。

 生産条件を正しく保つためには、管理図を見て、異常が判別できなくてはいけない。 管理図ほど有名でありながら、その使い方が誤解されている生産手法は他に例をみない。 工程能力は、生産工程における品質の程度を表している。管理図はこの工程能力を管理するための道具である。 直接、製品の品質管理を管理図で行うという大きな誤りを犯している例が多い。 管理図は工程能力の管理を通じて、製品の品質管理に役立てる道具である。現在の品質管理では、『100%良品』というのは常識である。

 上限管理限界と下限管理限界は本来、生産工程のバラツキ(標準偏差、シグマ)の数値を使うものである。 下記のように管理図の異常を検出することによって、生産工程の異常を知り、異常の場合には本来あるべき水準に戻す行動を起こす役目を持っている。 企業が製品の品質を保証する水準である品質品位を、上限管理限界と下限管理限界に使用するという過ちを犯していることが多い。 バラツキが品質品位より少ない場合には、管理外に出ることなく、管理図の機能を果たし得ない。 逆に、品質品位よりバラツキが大きい場合には、管理外に出ることが多く、管理図では品質管理できないということで管理図が使われない。  管理図は生産工程を管理するものであり、60%しか歩留まりがなくても、歩留まりを上げる活動が管理図である。 品質品位よりバラツキが少なくとも、品質ヒヤリハットや、品質を更に向上させる役割を持っている。 100%の良品が保証できない時は、当然のことながら全数検査を行うのである。 検査を人の手で行なっても、機械で行なっても、もともとの生産工程で不良品の数が大きく振れると、全数検査を行ってもミスが発生しやすくなる。

 時には、予想外に品質のバラツキが少ない時がある。 この時の予想外の結果が出た時の状況を研究することによって、生産工程の水準を向上させることができる。

  1. 管理状態
    上下の管理限界内で、かつ中心線の上下に同程度バラツイている。

  2. 管理限界外
    上下の管理限界より外に打点されているときは、異常が発生している。

  3. 7つ異常の連
    中心点の上下どちらかに7点以上の連をつくるときは異常です。

  4. 上昇・下降傾向
    7点以上、上昇したり下降したりしたときは異常です。

  5. 周期性
    一見よさそうですが、一定の間隔で周期的に動く場合は、その原因を調べる必要がある。

生産者危険と消費者危険(producer's risk and consumer's risk)

 OC曲線(検査特性曲線:operating characteristic curve、OC curve)とは抜取り検査でロットの不良率と検査方法(サンプル数n、合格判定個数a)によるロットの合格する確率を図示したもの。 検査の判定基準に必要である。

 一般的には、生産者危険を5%、消費者危険を10%ととることが多い。


環境のバラツキを押さえるのが品質管理


 消費者志向と言えば、品質の判断を製造していた企業から、消費者が判断することだと言われている。 これは正しい。しかし、消費者が望んでいるのはそれだけだろうか。 実際には、消費者の欠陥を見る目が一段と厳しくなっている。 以前では、欠陥が明らかになった時点で修理すれば済んでいたものが、今では欠陥がないものとして購入している消費者が増えている。 そのためには、品質の一段の向上が必要となっている。

 工業製品と農産物の生産を比べてみよう。農産物は天候によって生産量の変動が激しく、価格変動も大きい。 その点、工業製品の生産は安定していて、価格も大きな変動はない。 これは農産物は、人工的に生産条件を決定できない天候の影響を大きく受けているためである。 そのために太古の昔から灌漑を行い、品種の選抜を行ってきた。最近では施設栽培ということで、自然環境からのマイナス影響を遮断しようとしている。

 工業生産でも品質のバラツキのもとになる自然環境からの影響を排除しようとしている。 工場の場合には、製造工程で機械・設備、材料、生産方法、人の作業を一定に保つことによって、生産過程を確実に再現するのである。 工業生産というのは、良品の生産を再現し続ける活動であるというる。その時に品質のバラツキが出るのは、自然の影響受けているからである。
 この世の中には、純粋な鉄は存在しない。 自然の状態である鉄鉱石に含まれる不純物や、精製過程で使用する資材の影響を受け、いくらかの不純物を含んでいる。 そのために、この素材を製品にした時のバラツキが出る。
 また、加工時においても温度や湿度等の生産場所の自然環境が、品質のバラツキの原因になる。 雨の影響避けるために建物の中に部品を置いたり、湿気を呼ばない建屋にする。 埃に弱い半導体部品等は、クリーンルームを使って作業する等である。

 フォード・システムは20世紀の初め『コンベア・システム』と『部品の標準化』で、生産性を上昇させた。 コンベア・システムはアダム・スミス以来の分業の考えによる生産性向上とともに品質向上手段でもあった。 つまり、作業を専門化して習熟化を図ることによって品質のバラツキを押さえ、品質を向上させた。
 もうひとつの『部品の標準化』は、原材料のバラツキを押さえることである。 それによって、特別の技能なしに組立てできることを保証するものでもある。 つまり、特殊な技能は品質に対してバラツキの度合いを増幅する要因である。 なるべくこのような特殊な技能の使用をやめ、作業を標準化する必要がある。

 生産工場の改善には、“イノベーション”と“カイゼン”がある。 “イノベーション”は設備やコンピュータ・システム等の高価な投資を行うことである。 しかし、このような設備やシステムを導入しても、機械やシステムを使って生産を行うのは人である。 設備やコンピュータ・システムを導入しても、頭初から設定の能力を十分に発揮することはほとんどない。 つまり、設備やコンピュータ・システムに対するヒューマン・インターフェイスが不十分であったからである。 日本企業のQCサークルでの成功は、いまや英語でも使われる『カイゼン』であると言われている。 このカイゼンは、『金がないなら知恵を出せ、知恵がないなら汗を出せ』といったように、費用かけずにおこなうカイゼンである。 設備やコンピュータ・システムに対するインターフェースを確立し、それらの持つ機能を十二分はっきさせるのが目的であった。

 日本の品質管理はデミング博士やデュラン博士が第二次世界大戦後に持ち込んだ統計的品質管理と一致する。 この統計的品質管理は、“避けられるバラツキ”と“避けられないバラツキ”に分け、“避けられるバラツキ”を対策することである。 つまり、どちらかというと“流出対策”を主とした事後対策である。

 QC活動で問題が顕在化した状態で行うQCストーリーやQCの7つ道具は、まさにこの場合の“カイゼン”である。 その後、顕在化していない問題で、品質を上げるためのQCストーリーや新QCの7つ道具へと発展して、筋道はたった。 しかし、新QCの7つ道具は使いきれるという程度まで普及しなかった。
 このデミング博士、デュラン博士の品質管理は、日本の製品の品質が悲惨なほど悪かった歴史的背景を持って成り立ったものと考えられる。 だから、“避けられないバラツキ”を品質改善の対象とはしなかった。

 この“避けられないバラツキ”を品質改善の対象としたのは、田口メソッドを考案した田口玄一氏であった。 田口メソッドは、統計的手法であった実験計画法を品質管理に応用したものであった。 雑音を表すS/N比で、“避けられないバラツキ”を雑音にたとえ、この雑音をもっとも小さくする加工方法を見出す方法である。 “避けられないバラツキ”を最小にすることで、品質を高める方法である。 1980年代のアメリカでは、品質管理のコンサルタントといえば実験計画法や田口メソッドを熟知したコンサルタントであったという。

 この品質管理活動の本流をさらに発展させたのは、アメリカのシックス・シグマであろう。 シックス・シグマという言葉の認知度は上がったが、日本では概要はあまり明らかになっていない。 従来のQC活動が3シグマで、1000に対して3の不良を管理するのに対して、シックス・シグマでは1000,000に対して3.4の不良を管理する。 従来の品質活動に比べシックス・シグマは、1000倍の精度を要求する。 もっとも、標準偏差シグマの値を半分にすれば良いのである。 しかし、思い付きを主としたQC活動では達成は難しい。 体系づけられた品質管理があってこそシックス・シグマは達成できる。

 シックス・シグマは、

を融合した品質管理と考えられる。

 一番目のプロセス・マネージメントは、『リ・エンジニアリング』という本で日本に紹介されたが、一時的なブームに終った。 最近では、TOC(制約条件の理論)で全体最適を実現させる手段として紹介された。
 しかし、日本の生産システムは一般に工場経営は4つの要素、いわゆる4Mでman、machine、material、method で細分化して行っていた。 つまり、Manの人について標準作業を設定し、動作経済の法則、ヒヤリハット等によって人の作業のバラツキを押さえようとしている。 Machineの設備・機械についてはTPM活動等によって、いつも同じ性能引き出せるようにする。 materialの材料についても、材料・部品の標準化によって、バラツキをなくする。つまり、100%良品を確保する。 Methodの生産方法についても作業標準やQC工程表を使う事によって、品質のバラツキを押さえていることが品質管理の重点となっている。。

プロセス・マネージメントは、全体のプロセスを見直し、全体最適を実現する方法で、パラダイムの転換であった。 そのために未だにプロセス・マネージメントを理解できる人は限られている。
 生産システムが細分化されているため、日本企業は顧客指向に転換できないだけでなく、事後対策から事前対策重視の品質管理にも転換できない。

 全てのプロセスを同じように扱うのではなく、労働安全衛生マネジメントシステムに使われているリスクアセスメントを活用する。 同様に、安全な食品の提供することを目指して導入されたHACCP(Hazard Analysis Critical Control Point)の影響を受けていると考えられる。 HACCPは1960年代に宇宙飛行士の食品の安全確保のために開発された食品の安全性確保と保証システムである。 人の身体や生命に害を及ぼす危害(Hazard)を分析(Analysis)し、その危害を消滅させるか、安全なレベルに低減させる方法と過程(Critical Control Point)を特定し、 その方法を確実に運用することにより、安全な食料品を提供することを目指している。 この『人の身体や生命に害を及ぼす危害』を『品質に害を及ぼす危害』と置き換えれば、食料品以外の品質管理でも使用できる。

 プロセス・マネージメントを強化する方法に、ベンチマーキングがある。 これは知識の移転に対して、受動的から能動的への移行がある。 QC活動に『水平展開』がある。水平展開は受動的な手法であり、水平展開による改善には押し付けられた改善という気持ちが残る。 これに対してベンチマーキングそのものに積極的に品質改善を行うという能動的な意志がなければできない手法である。

 2番目のタグチ・メソッドは前述したとおりである。

 また、提案制度がある。アメリカのサジェスチョン・システムを取り入れたものである。 日本の提案制度は全員参加ということで、内容より数を重視した制度になってしまった。 金で提案件数を買う制度となってしまって、本来の趣旨は失われてしまった。 1年間に1万6821件の提案を出した人もいたという。休日もなく毎日毎日46件の提案を書かなくてはならない。 この提案を考え、提案書を書く時間を考えれば、どの程度時間をかかるか、これをコストに換算すればいかほどかかるであろうか。 仕事をしなくても提案書を書いていれば、仕事になるという形式的なものになっている 本来の、働く人たちの職場や仕事のやり方に対して、自分達の意見を反映できるということで、人情味を出せば良いと考える。



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