生産管理講座

品質管理



品質管理とは


 以前は、企業にとって品質こそが最も重要ですと書いていました。 現在では、企業にとって品質保証こそが最も重要ですに書き直しました。 依然として、消費者はモノを所有するという考えは重要ですが、何年間に渡ってサービスを買うという意識に変わりつつあります。 企業は単に品質の良い製品を作り込むだけでは不十分で、消費者が思っている期間に渡って品質を保証することが重要になっています。 企業は消費者の期待に対して、顧客満足で応えることが重要になってきました。 その時、商品の品質のバラツキを抑えて、当たり外れのない商品づくりは根底としてあります。

 1980年代に、日本車が世界を席巻していた頃の品質は、信頼性、耐久性の『不満足でない』という意味の品質でした。 具体的には、ユーザーの苦情の出る割合を常に低く抑える地道な努力をして、ユーザーの信頼を勝ち得ました。 それらの情報は知識として社内に蓄積し、製造部門から設計・開発部門に品質情報としてフィードバックさせる仕組みが重要です。

 その頃の欧米企業は、品質とコストはトレードオフの関係にあるという固定観念を持っていた。 たぶん、欧米企業の考える品質は、日本企業のそれより広かったのではないかと思う。 欧米企業では、日本で性能と表現される部分を多く含んでいたのではなかろうか。

 現在、韓国企業の躍進を見ると、1980年頃の日本の自動車産業の強さが見えている。 欧米の自動車会社が信頼性という品質に注目していなかった時に、そこの間隙をついて、欧米企業よりも低価格で小型車を販売していた。 当時の日本企業には、マーケティング力があったのである。
 現在、韓国企業は日本企業と競合しないようハイリスクな国を中心に販売し、これが成功した。 日本の自動車会社は、韓国の自動車会社は低価格で販売を伸ばしていると考えている。 1980年頃の欧米企業が、日本の自動車会社を見ていた考えによく似ていると思われる。

 ひとつの大きなトレンドの中で、日本車が隆盛し、韓国車が隆盛したのではなかろうか。 日本車にみられる「いいものを安く」は、お客さまの考えを必ずしも反映したものではなかった。 お客様は、品質はそこそこで、価格もそこそこのクルマを選んでいるのではなかろうかと思われる。 ただ、品質はそこそこという水準でありながら、お客様の嗜好をよく研究尽くされていたから、1980年代に日本車は世界を席巻した。 しかし、日本車は成功要因であった信頼性という品質にこだわったためと、円高によってかつての低価格でクルマを提供できなくなった。

 そのかわり韓国が低価格で、そこそこの品質のクルマを提供する国として登場してきて、かつての日本車が占めていたポジションに立った。 1980年代、日本自動車会社は、漸進的改善コストと品質を両立させた。 しかし、その品質は故障しないという信頼性と、耐久性だけだった。 性能一辺倒の欧米企業に対して、そこそこの品質のクルマを提供する国として日本が台頭してきた。 しかし、欧米企業が顧客嗜好の下で信頼性と耐久性にも目を向け、日本の品質にキャッチアップしていった。 信頼性と耐久性については日本企業の方に未だ優位性はあるが、欧米企業はキビキビと走るという独特のポジションを確保した。 『不満足である』という意味の反対語は『満足している』ではなく、『不満足でない』である。 『満足』と『不満足』は考えの軸が違う。 日本車は『不満足でない』状態にあるが、『満足している』項目が少ない。 それに対して、欧米のクルマは『不満足でない』状況とは言いがたいが、『満足している』項目がそれ以上に大きい状態にある。 日本車の現在の状況は、韓国車と競合しやすいポジションになっている。 日本車には、信頼性という品質のみに依存しない、欧州車と異なるポジショニングを作り出さなくてはならない。
 品質といっても、製品の信頼性や、あるいは初期性能の素晴らしさ − つまり実際に三ヶ月乗ってみても、性能面でユーザーの期待を裏切る部分が出てこないといった性能の素晴らしさを意味するだけではありません。 外観はもちろん、内装のセンスや使われている材料など、その車の魅力を構成するさまざまなもののクオリティ、さらには各種サービスのクオリティも含まれます。 その商品やブランドをユーザーにきちんと認識してもらうために、サービスのクオリティはますます重要です。(373ページ)

 自動車を語る時に、感動や喜びといった人間の感情を無視することはできません。これは今後も変わらないでしょう。 車には美学があります。また、車という存在によって乗り手を自由にするという、他の製品にはない特徴もあります。 乗り手のステータス、もしくは個性の表現になるという側面もあるでしょう。 そういった意味からすると、乗り手は車に対して感情的なこだわりを持つものなのです。 ですから、車体のデザイン、内装、材質の手触り、操作部の配置などがとても重要で、そういったものが“感情的な判断”に影響を与え、時には車を購入する決定的な要因になることもあります。 その一方で、価格はもちろんのこと、例えば室内空間の広さ、エンジンの馬力、操作性、信頼性なども、車を購入する時の重要な要因となって、こうした要素は“理性的な判断”に影響を与えます。 ということですから、私たちメーカーが追い求めているのは、どうしたら品質、価格、納期といった“理性の分野”でも、 ブランド・イメージやデザイン、ステータスといった“感性の分野”でもユーザーに満足していただけるかということなのです。(374ページ『カルロス・ゴーン経営を語る』)
 信頼性や耐久性と言う意味の品質は、『工業化社会』を代表した考えであった。 魅力的品質という商品力は、一部は知的財産権で保護されていたり、一部は消費者との関係の中から生まれた暗黙知であったり、ブランド力であったりする。 そのために模倣することができなかったり、作り出すのが非常に難しく、『情報化社会』での考えである。 現在、日本の製造業に業績不振の企業が多いのは、『工業化社会』のパラダイムである信頼性・耐久性の品質に固執し、『魅力的品質』に対処を誤っているからである。 最近、派遣労働者が多く生産現場に入っているが、コスト削減にはなっても、品質は低下せざるを得ない状況になっている。 この場合、品質とコストは両方成立せず、トレードオフの関係にある。

 「JIS Z 8101品質管理用語」では、品質管理の定義は以下のように定められている。

 「品質管理(Quality Control):買い手の要求に合った品質の品物またはサービスを経済的に作り出すための手段の体系。 品質管理を略してQCということがある。 また、近代的な品質管理は統計的な手段を採用しているので、とくに統計的品質管理(Statistical Quality Control,略してSQC)または、統計的工程管理(Statistical Process Control,略してSPC)ということがある。
 品質管理を効果的に実施するためには、市場の調査、研究・開発、製品の企画、設計、生産準備、購買・外注、製造、検査、販売及びアフターサービス並びに財務、人事、教育など企業活動の全段階にわたり経営者を始め管理者、監督者、作業者など企業の全員の参加と協力が必要である。 このようにして実施される品質管理を全社的品質管理(Company-Wide Quality Control、略してCWQC) 又は総合的品質管理(Total Quality Control、略してTQC)という。」

 つまり、品質管理とは
  1. 顧客や社会の要求する品質を十分に把握し、
  2. これに適合する品質の製品を経済的に作り出して市場に出し、
  3. 顧客や社会の満足を得るために、企業活動の全部門が品質の改善と維持を効率的に行う
体系である。


品質の定義


 品質については種々の考え方によって定義されている。
品質特性(quality characteristic)は品質そのものを評価する対象項目であって、これはできるだけ数量的に表示されることが望ましいが、その数量値のことを品質特性値(quality characteristic value)という。 品質特性は真の特性と代用特性(alternative characteristic)とに分けられる。
 例えば、自動車の乗り心地はシートの性能、路面からの振動の吸収、エンジン等から発生する振動、走行安定性等々の多くの要因から成り立っているが、この真の品質特性に対して、車の振動を使うのが代用特性である。

(a) 企画品質
 企画品質とは、商品企画段階で決まる品質で、顧客の要求している品質を定義し、製品コンセプトに盛り込む品質のことである。

(b) 設計品質
 設計品質(ねらいの品質:Quality of design)は設計図において規定された品質で、設計者が販売面、技術面、原価面などを考慮して決めたものである。運用上のバランスを加味したものが品質目標である。

(c) 製造品質(quality objectives)
 製造品質(できばえの品質)は実際に製造されたものの品質で、適合品質(Quality of conformance)ともいわれ、設計品質と多少の違いがある。 設計品質の決定の際には、製品の商品価値(すなわち売価)、工程能力(技術的な能力)、原価などを考慮するが、実際には能率の影響で製造品質が変動する。 このような品質が品質標準となる。作業標準どおりにやれば作れる品質である。

(d) 使用品質(fitness for use、usage quality)
 使用品質とは、顧客(消費者)に製品が渡って、実際に顧客がその商品を使用したときの品質で、一般的には製造品質と使用品質は一致しない。 検査部門が検査の判定の基準として使用する品質が、検査標準である。車の場合は検査標準を下回った不良品とはならず、再整備して検査標準に適合するものにするため、この場合不良率を使うよりも直行率(nonadjusted ratio)を使う方が好ましいと考える。



当たり前品質、一元的品質、魅力的品質

次に、品質のもうひとつの分類には、顧客の満足度や購買意欲に与える影響度で分類がある。

(a) 当たり前品質(must-be quality)
 当たり前品質とは、あって当たり前と受け止められている特性である。 あって当たり前と思っているので、それが満たされている時よりも、それが欠けている時に気が付く。 私たちはその特性が満たされていないことを不満に感じるが、満たされているからといっても、そのことを当たり前だと感じるか、あるいは全く何も感じない。 つまり、当たり前瓶質は“不満足がない”という状態の品質である。 全て揃っていることを当然と思い、少しでも欠けている欠陥と考えられてしまう品質である。 一般的に、信頼性や耐久性が該当している。また、この品質は後向き品質(backward quality)とも言う。

(b) 一元的品質(one-dimensional quality)
 一元的品質とは、私たちは自分のニーズがうまく満たされないとがっかりとし、うまく満たされれば、満たされるほど満足感を感じる。 例えば、クルマの場合、価格や燃費、馬力等がこれに該当する。
 最近ではニーズが満たされていない時は“不満足である”という当たり前品質の性質を強く持つようになった。 逆に、ニーズがうまく満たされた時は、“満足である”という魅力的品質の性質を強く持つ。 スペック主義の反省から、それらの中間は閾値として中立的である。

(c) 魅力的品質(attractive quality)
 魅力的品質とは、私たちをよい意味で驚かせる。私たちもやってもらえるとは思っていなかったニーズ、誰もが期待していなかったニーズを満たすことになる。 期待されていなかったので、なくても意識せず負の効果はないが、あれば正の効果を持つ。 魅力的品質は強化すればするほど、その効果は比例的以上に大きくなると考えられる。 顧客満足度はある意味では、魅力的品質そのものである。 この品質は前向き品質(forward quality)とも言う。

 自動車について一番大きな魅力的品質は、明確なコンセプトと特徴的なスタイルと考えられる。  しかし、魅力的品質はすぐに他社から追随模倣され、日々陳腐化していってしまう。 前年までは『魅力的品質』だった特性が、翌年にはもはや『当たり前品質』になることもある。 更には、流行遅れということで欠点になることすらある。

 1980年代に、世界を席巻した信頼性の品質は、欧米市場では確かに『魅力的品質』だったと言える。 しかし、1990年代に日本の自動車産業の研究が進み、欧米の自動車会社が信頼性の品質にキャッチアップすると、『当たり前品質』になってしまった。 だから、日本の自動車会社の信頼性の品質が少し高くても、かつての競争力は取り戻すことはできなかった。

 多くお客様は自分たちのニーズを表現することができないでいる。 もしくは、表現の仕方のわからないこともあるし、そんなニーズが満たされることは現実にはありえないと思っているかもしれない。 お客様を喜ばせたいならば、こうしたニーズを満たす手段を描き出し、提供することが必要になる。 つまり、お客様のニーズを超えた、又は、ニーズを先回りした製品、サービスを提供することが魅力的品質である。
 また、当然のこととしてあるお客さまにとっては『魅力的品質』であっても、他のお客さまにとっては中立的あったり、逆に欠点・欠陥としてしか考えられない品質であったりする。 そのためにターゲットとする顧客層を明確にし、それらのお客様にとって『魅力的品質』の製品・サービスを供給することが重要となっている。 そのためには、お客様に離れずについていくことが必要である。

 最近では、当たり前品質、一元的品質、魅力的品質の考えを更に発展させたアトリビュート・マトリックスという考えがある。

  基本的特徴    差別化的特徴    決定的特性  

肯定的特性

あって当たり前ちょっと違う興奮する

否定的特性

我慢できる文句を言いたい何だこれは

中立的特性

だから何なのおまけならほしい

 ホンダは1980年代の後半に、乗用車にカップフォルダーを導入した。
 これは安価な『興奮する』特性の代表例が、先ほど述べたホンダのカップフォルダーです。 乗用車にカップフォルダーをつけるコストは非常に安価なものではあるのですが、このありそうもなかったパーツは、ホンダの販売成績に驚異的な効果をもたらしたのです。
 一度カップフォルダーの便利さに馴れた人にとって、これは不可欠な装置となり、他の自動車メーカーもカップフォルダーを導入せざるをえなくなりました。 ホンダだけの「興奮する」特性も、あっと言う間に自動車の「あって当たり前」特性になってしまったわけです。 いまでは、顧客にとってカップフォルダーが装備されていないクルマは、クルマとして通用しないほどです。(85ページ『起業戦略』)
 当時、カップフォルダーはカーショップ売られていた後付けのカッコ悪いものしかなかった。 ホンダはこれを最初からクルマの設計に取り込むことによって、スマートなカップフォルダーにした。 カップフォルダーの情報は全自動車メーカーが知っていたが、これを設計に組み込むかどうかというところに企業の創造性の差が出た。 これこそが『工業化社会』から『情報化社会』へのさきがけであったと考えられる。
 現在、セールスプロモーションで最も効果を発揮するのが『口コミ』情報である。この口コミ情報を発信させるのが、購買後の感動や話題である。 このアフターインパクトとしての感動や話題は『魅力的品質』や『興奮する』特性によってもたらされる。 このアフターインパクトによる口コミは、パブレシティや広告と比べて、より強い持続的なインパクトを顧客に与え、ブランドを樹立できる。


品質保証とは


 品質保証(Quality Assurance)は、

『消費者の要求する品質が十分に満たされていることを保証するために、生産者が行う体系的活動』

である。
 重要なのは、品質保証たりうる体系化された計画を持ち、実行することである。 主に、自動車部品会社に適用されるISOのセクター規格であるISO/TS16949では、開発に対してAPQP(製造品質計画:Advanced Product Quality Planning)が決められている。 量産になれば、PPAP(量産品承認プロセス:Production Parts Approval Process)を提出し、品質保証を行うことになる。

 そのための手段として、製品やサービスの品質を一定以上の水準を確保することのみではない。 『品質は工程で作り込む』時代ではなくなっている。完成した製品の品質さえよければ、それでよい時代ではなくなっている。 『品質は工程設計で作り込む』時代になっている。 品質は、人の行う作業、機械設備の設定またはその両者の組み合わせで決まってくる。 それらは製品設計や工程設計を行う時に、作業標準まで決めてしまう。 その時に、コントロールプラン(QC工程表)として、工程FMEA(故障モードと影響分析)として行う。 コントロールプランはISO/TC16949等で使われる言葉であるが、かならずしも従来から使われているQC工程表とは異なる。 工程FMEAを行ったQC工程表のみが、コントロールプランとなる。

 コントロールプランは、工程フローが書かれ、それに対する人が行う作業に対する面と、機械の設定に対する2つの面について守られる数値や作業内容が書かれている。 その後に、それら2つを管理する方法が書かれる。 それら2つの作業が適切に行われていることをチェックした記録である。 最後に、異常事態発生時の対応が書かれる。

 人が行う作業面は、作業標準書を整え、確実に作業標準の作業が行えるように教育・訓練することである。 作業標準書は工程設計を行う時に、エンジニアリング部門の人たちが書くもので、生産現場の作業長はこれを生産現場の言葉に直すだけである。 昔と違って、作業現場の作業長が一から作るものではなくなっている。
機械の設定は、規定の品質を作るために、機械の設定を確実に行なう。 その上で、人の作業のやり方と機械設備の設定が、適切に管理されているかの妥当性を検証する。 人の作業でやりにくく面やムダがあれば是正する。

 ISO/TC16949には、危険度優先順位数がある。
    重要度×発生頻度×検出度
である。これを使って工程FMEAを行う。 この危険度優先順位数が大きい場合は、フールプルーフ(ポカヨケ)を作る。 それができない場合は、人の作業の教育・訓練を十分に行う。

 お客様に保証する品質を保証品位という。
 従来は品質保証のためには、第一に消費者の要求品質を正しくつかむことであり、第二には要求品質または使用品質を十分に反映するように、製造した品質が設計品質に適合するように製造工程を管理するとともに、検査により保証を確認することであった。 つまり、指示された品質、または表示し顧客が当然と考える品質を満足していることについて、明確な信頼を顧客に与える全ての計画的・体系的な活動であった。

 不良を減らすために厳重な検査を行っても、不良は減らない。工程検査や最終検査(出荷検査)を厳しくすると、不良を見つける精度は向上する。しかし、不良そのものは減らない。 不良を根本的に減らすには、加工・組立工程や作業の管理を保証し、所定の品質の製品ができていることを証明しなくてはならない。 そのためには製品設計や工程設計において、製造品質のバラツキに影響する要素を管理して(源流管理:source control)、工程や作業の中で設計品質(狙いの品質)により近いものを作ることに品質管理の重点を置かなければならない。

 最近では、顧客に対して信頼感を与えることに対する重要性が増してきた。 納品した製品の品質や性能について、製品のライフサイクルを通じて一定の条件を満たすことを保証しなくてはならなくなった。
 また、欧米で一般的なISO9000シリーズの品質管理システムは、品質について信頼感を与えるための手段として、重要性が認識されつつある。食品業界ではHACCPを導入する企業が多い。

 こうした「お客様に100%の良品を」という思いがあるからこそ、ホンダの品質目標は100%ではなく、120%となる。 100%を目標とすると、99%でも満足をしてしまう怖れからだ。 「良品の目標は120%」とは、つまり不良品はただの1個も出すなということだ。
 「モノをつくる以上、ある程度の不良は仕方がない」と初めから100%をあきらめてしまう会社と比べ、モノづくりに取り組む姿勢がまるで違っている。(220ページ『ホンダ流個性を生かす仕事術』)
 また、品質保証は品質記録の集大成であるとも言える。 品質保証の基本はあくまでも『消費者の要求する品質が十分に満たされている』であり、消費者からのクレームを重視しない企業には品質保証は存在しない。
 最後にもうひとつ、これまでのトヨタの開発の集大成ともいうべき点がある。 それは機能評価のマニュアルがデータとして整理されており、それをベースに検査チェックが照合されていく、というところだ。 この徹底したデータ取りで、いわゆる「営業的実験」、つまり耐久テストなどを行なうようになっている。
 トヨタがここでやろうとしているのは、検査員の個々の経験で判断するのではなく、数値的に判断できる領域は数値で判断するという、これまでのデータを使った品質の標準化(データ化)といえる。 言葉を換えれば、新人のエンジニアでも、この品質マニュアルに基づいて品質チェックができるようなシステムになっているわけだ。 これが、トヨタの品質を支える“門外不出の秘伝”だといえる。(117ページ『トヨタとホンダ』)

企画品質時における品質保証:品質機能展開(quality functional diplomat)

 その中で企画・設計段階での品質保証としては、品質表(品質機能展開)がある。 消費者が望む品質を企画品質に作り込むことを品質企画といい、企画品質を設計に反映させる事を品質設計と呼ぶ。 この品質企画と品質設計を効率的に行う手法として、品質表(品質機能展開)がある。 いかにして真の顧客の要求を把握し、それと一致するものを商品概念として構想化することである。

 ただ、品質機能展開は、設計時において機能からお客様満足を導く一方向の役目をしているわけではない。 お客様が不満を持っている時や、満足度が低いときに、お客様の不満度から機能を見直すという双方向の役割を持っている。 近年、品質機能展開は機能からお客様満足を導き出す一方行に偏り過ぎたのではなかろうか。 それが、現在の日本の閉塞感につながっているのではなかろうか。

設計品質時における品質保証
 最近のITの発達によって、3次元CADやシミュレーションソフトによって、コンカレント・エンジニアリング推進でき、設計段階で製造段階の不具合を洗い出すことも可能になっている。 これは生産管理概要で述べたフロント・ローディングが、品質管理においても大きな成果をもたらすことを示している。

  1. 実験計画法(タグチメソッド)
     実験計画法は生産を行う時の条件をどんどん変えて、バラツキを比較する。 自分で自由に決められる設計条件をできるだけ多く選び出し、それらを組み合わせて実験を行う。 そして、使用条件を変えて、それぞれの設計条件によるバラツキの大きさを比較するのである。
     その時、重要な点が3つある。 ひとつが対策の効果を効率的に評価するために『直交表』を使いやすくしたことである。 2番目が機能性の評価を行うための『SN比』、そして3番目が経済的な評価を行う『損失関数』である。
     例えば、使用条件や設計条件をすべての組合せで行うとしたら、非常に多くの実験を行わなければならない。 これを『直交(バランス)している』少数の組み合わせを行えば、全部の実験を行ったのと同じ成果が期待できる。
     測定器としてのラジオの良否は、信号対雑音比(Signal Noise Ratio=SN比)によって表すことができる。 SN費の数値は、大きければ大きいほど良い。
     安全係数は、掛かる力に対して、製品の強度が何倍あるかという数字である。 損失関数は、トラブルが起こった時に予測される損害額の平均と、製品の価格を使って経済的根拠をもった安全係数を求める関数である。

  2. デザイン・レビュー
     まず、品質保証体系として、企画品質、設計品質、製造品質の段階で行うデザイン・レビュー(Design Review:設計審査)がある。設計とは、製品やサービスが実際に提供できるための具体化と考えられる。 したがって、品質の設計において重要なのは、設計どおりに製造したばあいに、企画されたものといかに一致したものになるかである。 たとえば、設計図として描かれた図面をみて、できあがった製品を想像したものが、企画されたものと合っているかどうかを検討してみれば評価できるだろう。 しかも、それが安い価格でできるような検討がなされているかである。時として、デザイン・レビューはコスト・レビュー(CR:Cost Review)と兼ねて行われることが多い。 このように原価を設計段階で計画することを、原価企画(cost planning)と呼ぶ。
     ただ、品質管理は制度やハードウェアを整備しただけでは、不十分である。 個々の部品を集めたものが製品ではない。 それらの部品は、相互に強い関連性と整合性を必要とする。 個々の部品の設計者が、担当する部品以外の部品の知識を持ち、全体にどのような影響を与えられるかを知らなくてはならない。 品質保証は、制度やハードウェアに、設計者個人の知識が融合して行なえるものである。

製造段階での品質保証体制

 クルマは多くの部品からできており、部品間の緊密な相互調整を必要とする。 まとまりの良さやトータルバランスが重要である。 そのため、ユーザークレームに対し、しぶといと思えるほどの対応が重要である。

 製造段階での品質保証体制としてPRP(Prerequisite Programs)が必要であり、あらかじめ整備実施されていなければならない。 PRPには、適正製造基準(GMP)、作業標準(SOP)、QC工程表、チェックシート等がある。 基本はあくまでも作業者に対する教育と訓練である。 作業者が持っていない技能や技術を身につけさせるのが教育で、教育で受けた内容をいつでも出せるようにするのが訓練である。 トヨタ生産方式では、3日で一人前にすることを目標としている。 そのために、作業長等の教育・訓練体制を充実させ、高いモラールを維持する仕組みをとることが必要である。

  1. 適正製造基準(Good Manufacturing Practice:GMP)
     適正な品質の製品を製造するために必要な、生産工場の設備や製造方法(作業手順)などについて定めたものである。

  2. 作業標準(Standard Operating Procedure:SOP)
     GMSに定められている事項をさらに具体的な作業標準(手順)として、その詳細を定めたものである。 正しい作業のより所になるもので、工程設計の段階から作り込んでいく。 普通は、適用範囲、使用原材料・部品、使用設備・機械・治工具、点検器具、作業方法、作業条件、作業上の注意事項、作業時間、事故の場合の処置、作業原単位、使用設備、機械の保全、作業の管理項目とその方法、作業人員と作業資格、製造工程の順序などを規定する。 作業標準は、会社によって作業指導書(operation instruction chart)と製造技術標準に分けることもある。 なお、作業標準には、作業者の責任分界(上級者の指示を受けるべき事項・交替の際の引継事項など)、作業条件の記録方法および作業記録の補完について規定することが望まれる。

  3. QC工程表(quality control Process chart)
     これは品質管理の基礎となるもので、主要工程ごとに、管理項目、品質特性、管理の方法(判定基準、管理方法、処置)、備考などの項目に区分した様式によって記載するもので、作業標準の一環を成しているとともに品質計画書でもある。 すなわち、製造品質を工程で造り込むために、原材料・部品の段階から出荷にいたる全工程で、管理項目と品質特性について誰が、いつ、どのように方法で管理し、その結果がどうであるのかを一覧表にまとめたもので、加工工程における品質保証プログラムを表している。

  4. 工程能力
     一般に、製造工程でばらつきを設計公差内に全数入れるためには、工程能力指数のCp値を1.33以上にするかのいずれがが必要である。
     Cp=1.33にしたら、不良率は100万件中3.4件となり、実質的に不良ゼロといえるので、抜き取り検査などの簡略な検査法が可能となる。

             Cp=a(設計公差)/6σ≧1.33   (σは標準偏差)

  5. 工程能力図(process capability chart)
     工程能力を表すために、管理図と同様の図表を作り、主として時間的順序により品質特性値の測定値を打点するもので、特性値が規格の上限線と下限線の間にあれば工程が安定しており、規格を満足していることがわかる。

  6. 品質ポカヨケ
     ポカヨケしは、ポカミス(careless miss)を防ぐこと。人がちょっとした気の緩みから犯す過失を防止する。 あるいはそれによって引き起こされる不具合を低減するための工夫である。 バカヨケ、ポカヨケまたはフールプルーフ(fool proof)という。作業者が誤った方法で作業しようとしてもできなくする工夫である。 工程FMEA(故障モードと影響分析)と危険度優先順位数によって、フールプルーフを設定する。 フールプルーフを設定できない場合は、作業教育・訓練を十分行って、品質保証しなければならない。

  7. チェックシート(check sheet)
     工程の管理に必要な全ての項目や図が、あらかじめ印刷された一定様式の用紙で、テスト記録、検査結果、作業の点検結果について、チェックした結果を記録できるようにしたものである。 これにより、指示どおりのチェックがなされ、その結果に対する処置が確認できる。

  8. 品質ヒヤリハット運動
     ポカミスが発生したり、後工程へそのミスを流しかけたりした時、つまり品質ヒヤリハットした時に記録したり、予見したりして問題点をつかみ、改善に結びつける。

  9. 不良品サラシ台
     不良をいましめるため、現品を人目に付くところにさらして再発を防止する。不良品置場との違いは、ある一定期間での発生頻度の多いものや、不良損失金額の大きいものを上位数点選定し、さらし首にする点である。 これによって、作業者の品質意識を向上させることに結び付け、改善を促進したり、再発を防止する。

  10. ISO9000シリーズ(ISO9000s)
     ISO9000シリーズによる品質監査は、購入者が明確に示した品質要求を確実に作り込めるようなシステムを作り、それが維持されているかどうかを第三者が継続的に審査するもので、主に製造品質に近い品質を保証するものです。 どちらかというと、顧客の品質に対する信頼性を与えるものである。
     品質管理技術のハウトゥ化が進んでいる最近の傾向を考えると、今後ますます重要性は増すものと考えられる。


販売における品質保証

 いくら品質管理の行き届いた工場で製造し、しかも包装・保管・輸送時に品質を保護して、顧客に届けた製品でも、顧客に正しく使用してもらわなければ、その真価を発揮することはできない。具体的には次のとおりです。


使用段階での品質保証

 設計、製造、流通過程で品質管理を行って、優れた製品を顧客に提供しても、顧客の正しい使用・保全が伴なわなければ、その製品は十分な機能を発揮することができない。そのためにはメーカーのアフターサービスが必要である。 また、顧客の使用中の品質情報を正しく把握して、メーカーにフィードバックしなければ、さらに良い製品を設計し、製造することは困難です。 アフターサービスの品質保証活動は、生産と消費(または使用)の間の橋渡しを行って、今後の商品企画における品質の維持・向上に役立てることが多い。

参考ホームページ



参考文献


Mail


生産管理概論, IE(Industrial Engineering), トヨタ生産方式, VE/VA, セル生産方式, TOC(制約条件の理論), 品質管理, QCサークルについて, 総合的品質管理(TQM), 統計的品質管理(SQC), ISO9000シリーズについて, ISO14000シリーズについて, シックスシグマ手法について, 自動車の品質問題の変遷について, 設備管理とTPM, レイアウト管理, 生産計画の立て方, 資材手配, 資材手配の実際, 在庫管理, 購買管理, 財務分析, 原価企画, 情報システム, インターネット, 人事管理概論, 人事考査, 人的資源管理, リーダーシップ論, 組織論, ナレッジ・マネジメント, コーチング, 安全管理, Q & A

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