資材手配
自動車産業は総合組立産業と言われているように、原価の内70〜80%程度を部品として購入している。
1台のクルマの部品点数は2万点とも、3万点とも言われている。
実際には自動車会社に納入される部品は既にサブアセンブリーされていて、部品点数はこれよりは少なくなる。
数え方によって部品点数は異なってくる。1つの自動車工場はおおむね170〜180社のサプライヤーから部品調達を行っているという。
技術情報として部品表があり、形は少し違っても世界中の自動車メーカーが使っている。
構造的部品構成を用いる方式「2段階のストラクチャー部品表」を使用するのが一般的である。
部品の加工や製品の組立順序を意識して親部品と子部品の関係を持ち製品構成を表した部品表である。
一元化された部品の管理に適し、全体的には部品構成の誤りの削減に大きな効果が期待できる。
MRPでは、「ストラクチャー部品表」で、部品・資材の使用量を算出する。
カンバン方式ではこれを内示に使ったり、カンバンの数を変動させている。
自動車部品会社から自動車会社への納入方法には、下記の3とおりある。
- シンクロ生産
- 順序納入(シンクロ納入)
- ロット納入
シンクロ生産は、クルマを生産する順番に、部品を生産し納入する方法である。
溶接組立部品の場合は、ボディの生産計画は2〜3日前に部品会社に渡され、ボディの生産順番に部品を生産して納入する。
艤装ラインでは、艤装ラインに投入される1時間ほど前に塗装済みボディの順番が決められる。
艤装ラインにおけるシンクロ生産は、部品会社が主に自動車工場に入り込み、艤装ラインの順番に部品を生産する。
インパネやドアが、本ラインとは別に生産される。
順番納入(シンクロ納入)は、生産する順番に部品を納入する方法である。
溶接組立部品の場合にはシンクロ生産に移行しつつあるが、一部は先に部品を生産し、後から順番に並び替えて納入する方法がとられている。
順番納入で一番有名なのがシートである。自動車工場近郊に立体倉庫を持ち、自動車工場の生産順番によって1台1台のシートの納入指示を受け納入する方法である。
その他、組付け済みのタイヤ・ホイールなどがある。
自動車工場の生産順番は、艤装工程が1本のラインで、順序が入れ替わらない事から利用されている。
実際のシート等の納入指示はALC(アセンブリーライン・コントロール)というコンピュータ・システムによってなされる。
ロット納入は、通函単位のロットで1日何回か納入する方法である。艤装ラインの大部分の部品がロット納入される。
部品手配は予告、内示、購入、納入指示という手順によってなされる。一般に購入と納入指示は同時期に行われる。
このロット部品の手配・納入方法に、トヨタ生産システムのカンバン方式と、コンピュータ利用のMRPでの手配方法の2つの方法がある。
車体工場、塗装工場、艤装工場で部品・資材手配の方法も異なる。
車体工場では、計画した生産計画のどおりの順番で生産が行われる。オプションの変更でも受ける影響は少なく、色の変更は全く影響を受けない。
塗装工場での資材手配は塗料が主である。1台あたりの使用量はほぼ決っているが、車体色変更の影響を受ける。その他、塗装のやり直しがあると使用量が変わる。
塗装は生産3日前の塗装色の変更を受け、実際はカンバン方式のような現物主体の資材手配が行われる。
資材手配でもっとも問題になるのが、艤装ラインである。
溶接組立後の特別検査や手直し、塗装後の手直しや再塗装がある。
また、最近は少なくなったがツートンカラーは、2度上塗りラインを通らなくてはならない。
艤装ラインの生産順序は、最初の溶接組立の生産順序と変わってしまう。
更に、艤装ラインの負荷を平準化するために、生産順序が変わってしまう。
そのため、艤装ライン上で実際に生産される車種の順番は、部品手配行なった計画の順番とは異なっている。
カンバン方式もMRPも、艤装ラインを部品の欠品なく流すために、バッファーとしての在庫を持っている。
両方とも在庫ゼロの調達方式と呼ばれているが、これは余分な在庫がないという意味である。
カンバン方式とMRPの特徴的な違いは、バッファーとしての在庫の持ち方にある。
カンバン方式はスーパーマーケット方式と呼ばれているように、必ず売り場には最低限の在庫を持っている。
ただ、日本の自動車会社は多品種少量生産と言われているが、その中でもトヨタ自動車は量産している。
量産していて、1本の艤装ラインで生産する車種が少なく、グレード数も多くない。
そのために、カンバン方式はトヨタ自動車の生産実態を反映している部品調達方式と言える。
その他の自動車会社はMRPを採用している。
MRPでは、時間軸で先に必要になる部品を余分に持つことで対応している。
部品調達の基本原則は、余分な在庫を持てば必ずムダが発生してしまう、というものである。
ところが、生産現場ではいつかは使う部品なので、部品を多く持っても無駄にならないという考えが蔓延しやすい。
余分な部品を持てば、設計仕様の変更、生産モデルの変更等の時に、廃棄せざるを得ない部品が多数でてくる。
このようなMRPの欠陥に対処するため、日産自動車では生産順序遵守生産方式が採られている。
生産スタートした溶接組立の生産順序を変更せず、その順番で塗装ライン、艤装ラインと流し、完成車にしようとするものである。
注文どおりに生産するという最も基本的な考えを形にしたものである。
生産ラインでは、おなじグレードの型式をまとめて流す方が効率が良いなどと考えがちであるが、この考えは間違っている。
ラーメン屋でお客の注文した順番で、ラーメンが出てこなければ誰しも怒るであろう。
お客様商売の基本的な原則が、工場では見えにくくなっている。
生産順序遵守方式によって、MRPの考えそのものの必要な部品のみを手配することができるようになる。
バッファーとしての部品在庫は、下記の理由で存在する。
- 部品の納入の不慮の出来事に遅れ(納入トラックのパンク等)
- 生産順序の変更による部品の予定より早い費消
- 組付け時における部品を不良にする確率
生産順序の変更は、溶接組立や塗装における手直しによって発生している。
溶接組立の生産順序を守るということは、それらの手直しをゼロにするということを意味する。
現実に、それらの目標は非常に高いと言わざるを得ない。
しかしながら、工場内で発生する無駄の根本的な原因は、それら手直しによって発生している。
工場には、無理をしてまでやることはないという安直な考えに支配されがちである。
まず、意識改革から始め、手直しなしで生産できる体制にしなくてはならない。
生産順序遵守方式は、生産を開始してから完成車になるまでのスループットの時間に目標を設けている。
それによって、塗装工場に入る前と、塗装工場と艤装ラインの間に過大なボディ在庫を持って生産順序を調整する安易な考えに流されるのを牽制している。
最近、ミルクランによる調達物流が行なわれている。
特に荷量が少なく(30〜40%)、比較的近隣の地域に複数のサプライヤーが立地している場合に、これを1台のトラックで巡回し、集荷したうえで積載効率を向上させる手法である。
供給方法には、ロット供給では箱ごと運ぶダイレクト供給、中の部品のみを運ぶ身のみ供給がある。
その他、キッド供給もある。
順序納入では、複数の順序供給部品を複数運ぶことになる。
その場合、定期的に部品を運ぶようにするため、それぞれの部品の収容数を同じ数に揃える。
これはキッド供給の変形でもある。
キッド供給は、余分な部品を持たない有効な方法である。
MRP
MRP(Material Requirements Planning)は資材所要量計画と訳されており、計画作成(プランニング)のソフトであり、統制の機能はない。
MRPは立案された製品の生産計画を受けて生産に要する、組立品、部品、原材料の所要量を求めるコンピュータ・ソフトである。
MRPは、計画に基づく押し込み方式(プッシュ方式)とも言われている。
MRPはアメリカの生産・在庫管理協会(APICS:American Production And Inventory Control Society)の提唱により1970年に誕生した。
自動車のみならず電気機器メーカーなど組立産業では、資材の調達から生産指示、生産までのトータル計画立案に利用されている。
MRPは日程計画の大日程計画、中日程計画、小日程計画の順に計算をやり直すことによって、実行する生産計画を消費者が注文した車種に合わせて、資材手配を行う特徴がある。
多品種の資材所要量の計算や計画変更の短時間での計算には、コンピュータを利用しなければ計算できない。
多品種少量生産の効率化では、「必要量を必要な時に作る」こと、製品を作り過ぎないこと(過剰生産)と欠品・在庫切れ(販売機会損失発生)を起こすことなく素早く生産することである。
生産計画の変更時には、MRPの計算をやり直したり、計画変更によって必要になる部品、余剰部品を明らかにすることができる。
MRPでは、精度の高い生産計画、在庫量、部品表(製品構成技術情報)、製造工程能力のデータを必要とする。
生産計画は、何を、いつまでに(納期)、いくつ(生産数量)作るのかという確定した情報である。
在庫量は、現在在庫量、引当在庫量、注残、有効在庫量などである。
ただ、MRPは生産能力についてはラフな見方をするので、段取り替えを必要とするロット生産の生産管理には向いていない面がある。
つまり、生産計画をもとに生産能力を計算すると、資材手配の制約を反映できない。
MRPの計算ロジック
最終製品を独立需要品目、その製品を構成する品目を従属品目と呼ぶ。独立需要品目の生産計画が基準生産計画(マスタースケジュール)であり、時間ごとに区切られたバケットごとに製品の生産数量が記入される。
基準生産計画にそって期間内に必要となる部品の数量といつ、どれだけ必要かという計算を策定するシステムである。
現在のように納期を重視する時は、完成時からバックフォワードでリードタイムを設定する。
生産計画、部品表、在庫、注残を基として、次の5つの機能を順次実行する。
- 純所要量計算
従属需要品目の要求されている量を、ある一定の期間(タイム・バケット)毎にまとめて純所要量を算出する。
- 納入数量計算
計算された純所要量を基に在庫や注残への引当てをする、期間別に必要な納入数量を計算する。
- ロットまとめ
期間別の必要納入数量を基に部品に設定されているロットサイズを用いて手配に最も適した数量にまとめる。
- リードタイム計算
ロットまとめされた数量の納期からリードータイムを差し引き、その発注日または着手日を算出しオーダーを作成する。
このリードタイムは手番と訳されている。
- 在庫量計算
上記のロットまとめされた数量から、次のタイム・バケットに渡す在庫量を計算する。
1回に計算するタイム・バケットが複数ある時は、次のバケットの計算を行う。
なお、一般にはMRPは1日単位をタイムバスケットとしていることが多い。
自動車会社では1日8回納入時間帯を設定しているので、タイムバスケットを1日8回以上に分けているものと考えられる。この場合は、タイム・バケットの数だけ2から5の計算を繰返す。
一方、自動車の組立では大日程計画・中日程計画・小日程計画と計画策定を行って、資材手配を幾度もの予告・内示してから確定する。
自動車でもパソコンでも最終消費者の要望によって生産を行う場合には、色・オプション等の装備の比率は大きく変わらない。
見込み生産や特別仕様車を生産する場合には、内示なしに部品手配を変えることになり、部品会社に対応できるかどうかの確認する等のソフトな対応が必要になる。
マツダにおける部品調達
『実例 自動車産業のJIT生産方式』 門田安弘著にMRPを使い部品手配しているマツダの例が掲載されているので紹介する。
ディラーの注文をもとにマツダが部品メーカーに対し、年間生産計画や月毎の調達数量を内示する。
さらに「旬オーダー」といって10日間の確定注文を納品カード(パンチカード)の形で出していた。
旬オーダを出す10日に1回、平均50万枚ずつを発行し、これを女性社員10人が取引先300社ごとに仕分けした配布ボックスに入れておく。
取引先メーカーはマツダに納入した際に、運転手がこのボックスに立寄り、自社の引き出しからこの納品カードを持ち帰り、その指示にしたがって生産するという仕組みである。
ところが車種の多様化でこの納品カードの発行量が増え、納品カードの出力作業だけでなく人手に頼るハンドリング作業自体が限界に来たと感じていた。
そして何よりも10日ごとに生産計画や部品注文を確定する今のやり方では、日々発生する顧客との注文のずれが生じ、在庫をそれだけ抱え込むことになる。
そこで取引先の納入指示を納品カードによらずにすべて電子化し、できるかぎりディリーに注文する仕組みに切り替える方がよいと判断した。
納入カードをパンチカードから「バーコード付き納品書」に直し、そのバーコード納品カードを部品業者の方で作成してもらって部品といっしょにしてマツダへ納品してもらう予定である。
その場合、このバーコードカードは納品書としての役割を有するだけになり、部品の納入指示そのものはオンラインの通信によって迅速に伝達されることになる。
マツダは完成車の組立てを開始するより平均15日前に出していた納入指示を4日前に短縮できたという。
カンバン方式
カンバン方式は、納入カンバンを使用し、自動車メーカーと部品メーカーの間の部品納入に使われている。
カンバン方式はトヨタ生産方式でジャスト・イン・タイムを実現する手段である。
MRPのような計算を繰り返すことなく、現物による管理を主体にした、つまり部品統制を効率よく行う納入方式である。
カンバン方式での納入は、後工程引取(プル方式)と呼ばれている。
カンバン方式そのものには計画立案能力がなく、カンバン数の増減によって対応している。
そのため、生産変動を少なくするために、艤装ラインを流れる車種の平準化が必要になる。
特に、ロット生産する機械加工と、1個流しのライン生産との部品のやり取りに大きな威力を発揮している。
機械加工に時間がかかりロット生産の生産計画の割り振りに、簡単なロジックで問題解決を行っている。
アメリカでカンバン方式が、今でも盛んに研究されているのはこのような理由によるものと考えられる。
『トヨタの現場管理』(門田安弘著)によるとトヨタはサプライヤーに対し、2種類の情報を提供する。
第1は事前に決定された月次生産計画で、これは前月の半ばにサプライヤーに伝えられる。
第2は日次情報で、顧客会社(つまり、トヨタである)に供給される実際の部品の数量を具体的に指定したものである。
これら2形態の情報は、トヨタ側の引取方法に応じて代替的に使用される。すなわち、後補充方式と順序引き方式である。
順序引き方式は、混流の艤装ラインの車両投入順序計画表に合致した順に各種部品を納入する方法である。
この順序計画表は「ユニットオーダーテーブル」と呼ばれ、1日16回、いずれもトヨタに納入する4時間前に毎時に組付けラインに伝達される。
月が変わると1日の所要量が変動するので、その所要量に合わせたカンバンの数量に変える必要がある。
後補充方式は、外注カンバンを利用する方法である。
月次生産計画に基づいた部品納入内示が、旬確定とディリー確定によって修正される。
これがカンバンが回ることによって納入指示が出される。
カンバン方式では一般的に1日昼勤・夜勤で8回納入される。その内時間区分1、3、5、7又は2、4、6、8で1日4回納入している。
ラインでは通函から最初の1個目の部品を取り出す時、通函からカンバンを取り出し、近くのカンバン用ポストに入れる。
これを1日16回決められた時間にポストからカンバンを回収する。回収したカンバンのバーコードを読ませて、新しい納品書を発行する。
カンバンと納品書を部品メーカーに返却し、1日後の同じ時間帯に部品にカンバンを付けて納入する。
納品と同時に納品書を読ませ、計上処理を行っている。
また、カンバン方式では所要量チェックにより不良部品数量を把握していると考えられる。
カンバン方式は後補充方式と呼ばれるように、ラインサイドに一定の在庫数量があることを前提として方法である。
よって、ラインサイドの在庫数量の管理しやすくなっている。
なお、武蔵プレス工業が誤品納入防止用に『デジタル画像入りカンバン』システムを販売しているので参考にしてください。
左側にある『背番号』は部品番号伝達の誤りをなくするために、
長い部品番号の代わりに『部品メーカー名』+『背番号』で部品番号を表している。
MRPとカンバン方式の利点と欠点
カンバン方式は、基本的には生産ラインのバッファーとしての在庫を一定に保つように、部品手配も行なっている。
そのために平準化を行なわざるを得ず、1ヶ月を単位期間としている。
生産変動は人手によって、カンバン数を増減させることによって行う。
生産車種の平準化とは、車種やグレードの異なる車種を何台か間隔に流し、固まって流さないことをいう。
これによって、部品の使用量も平準化し、必要最小限度の部品在庫に留めることができる。
この1ヶ月内で行えるのは、限定された色とオプションの変更だけである。
平準化によって部品納入を平準化し、部品会社の生産能力を効率的に使用できるようにしている。
カンバン方式では、カンバンが回ることによって資材手配の小調整を自動的に行う利点がある。
資材手配の小調整は、生産計画の小調整と、生産計画外の小調整がある。
生産計画の小調整は、月単位の生産計画の内示に対し、旬確定と車体色・オプション設定のディリー確定との差である。
そのため、部品手配の平準化を維持するために、上記のオプション変更は10%程度と制限されている。
生産計画外の小調整は、車体工場や塗装工場での手直しによる生産順序の変更、取り付け不良の発生による部品補充がある。
生産計画外の小調整は、在庫管理の小調整とも言える。
カンバン方式では、ユーザーのオプションに対する要望を十分に反映できていないという欠点を持っている。
ディーラはお客様の注文に迅速に対応するために、予め生産枠を確保している。
実際にお客様から注文をもらった時、オプション変更が10%程度の制限されているため、必ずしもお客様のオプションに対応できるとは限らないのである。
この場合、ほんとうに顧客が望むオプションと異なるクルマを、仕方なく販売するようになってしまう。
カンバン方式は、標準化された大量のクルマを売ることができるトヨタ自動車だからこそ、うまく使えこなせたのかもしれない。
販売台数の増加傾向にあるRV車は多くの工場オプションが設定されていて、今以上に顧客の工場オプションに対する要求を実現させる必要性が高まるだろう。
更に、将来インターネット販売が一定の割合を占め、車体色と工場オプションの変更を直接顧客に開放する可能性がある。
ディリー確定で色・オプションを機動的に変更できないため、『顧客の望むクルマを作る』『売れたクルマをうまく作る』に障害になっていた。
ただ、カンバン方式は段取り替えを必要とするライン切替え方式の生産形態では、MRPよりもうまく対応することができる。
少ない在庫で、管理工数も少ない優れた資材手配方式である。
ひとつのラインで複数の製品を作っている場合、MRPで生産の順番をつけるのは非常に難しい。
MRPは計画第一の部品手配システムである。
MRPは生産能力と資材調達の制限を考慮しなければ、どのような生産計画の資材手配計画を作れる。
生産計画が座席予約型生産計画で部品手配を行っているのは、艤装ラインの生産能力と内製しているエンジン・コンポーネントの生産能力を考慮しているためである。
また、資材調達の制限は、別途確認しなければならない。このことはカンバン方式でも同様である。
MRPは計画を作成するだけであり、変動するバッファーとしての部品在庫を管理する仕組みを必ずしも持っていない。
自動車工場では、車体工場や塗装工場での手直しによる生産計画の小変更が常時に発生している。
元の生産計画より遅れるクルマがあるということは、元の生産計画より早く生産するクルマがあるということになる。
このような生産計画よりも早く生産したり、遅くなるクルマがあり、正確な部品在庫は把握できないことを表している。
特に、ライン上で発生した部品不良に対して無力である。
その場合は、1点ずつ不良を確認し、作業者が勘と経験と度胸で、その都度別途部品を補充手配をしなければならない。
この2点によって、MRPは必ずしも自動車工場に適した部品手配システムであるとは言い難い。
良く言われることに、MRPをうまく機能させるためには、大きなペイントボディのストックを持って、部品手配を行った完成車投入順序計画どおりに、艤装ラインにペイントボディを流すという考えがある。
そのためには、巨大なスペースと設備が必要であり、余分なボディストックの仕掛品在庫を持つようになってしまう。
この計画の致命的な欠点は、生産を始めた時点から完成車になるスループット時間が大幅に増えてしまうことである。
このようなスループット時間の増加は、予想外の品質の低下とコストの上昇を招くものである。
現在MRPを使用した部品手配は、次善の方法として安全在庫を多く持つことで対応しようというものである。
そのために、MRPに対して下記の修正を行っている。
- 部品のリードタイムを増やし、多く在庫を持つ
- MRPの手配の他に、ダブルピン方式の在庫を別に持つ
- 常に部品在庫を監視し欠品しそうな場合には、MRPの手配外で部品を発注する。
1番目の方法では、正規の部品取付の時間よりも、たとえば4時間早く部品納入時間として設定する方法がある。
例え、車体工場や塗装工場の順番の入れ替えで、予定より速くペイントボディが出てきても、その部品は存在する。
しかし、使用量が増加傾向にあると過剰在庫になり、逆の場合は過小在庫となる。
そのために欠品が起こりやすくなり、KKDで在庫管理をすると不要な在庫まで追加注文する結果になる。
艤装ラインに流れるクルマに装着される比率によって、必要とするバッファの在庫量の率が変動する。
1時間に1個必要な部品は、2個になったり3個になる可能性もある。
つまり、100%から200%のバッファーが必要かもしれない。
しかし、80%の装着率を持つ部品は、最高でもあと20%分が必要になるだけである。
つまり、最高で25%のバッファーとしての在庫があれば、十分である。
2番目は、欠品するとラインを停止せざる得ない部品を対象として行われ、MRPの手配外で部品在庫を持ち、ダブルピン方式と同じ運用をする。
3番目は多大な手間がかかるので、限られた部品しか対応できない。
MRPによる部品手配は、計画上の在庫は少ないが、統制する上で多く手間がかかり、多くの在庫を持たざるを得ないというのが現状である。
また、機械加工等の複数の工程の生産計画を連動させることはカンバン方式では可能であるが、MRPではできない。
例えば、エンジンの生産計画を考えてみれば、エンジン組立は混流で行われる。
これに対して、部品手配をMRPで行なうと、部品手配はできる。
しかし、エンジンブロック、カムシャフト等のロット生産し、加工時間の必要な複数の工程の部品の適切な生産計画は作成できても、統制しにくい。
これらのロット生産する部品に対しては、適切な在庫を持ち、伝統的な山積みと山崩しで生産計画を立案しなければならない。
同様のことは部品会社においても発生する。
自動車会社はMRPで部品在庫を削減できる反面、部品会社が持つ部品在庫を増加させている。
また、この時在庫をどの程度持ては良いかを全く示していない。
これらのことは、エンジン工場の概要の中で“エンジン等の生産計画”に記述したので参考にして下さい。
MRPの特性として、ひとつのラインで2箇所以上で使用する部品はひとつの手配として部品が手配されてしまう。
ボルトやクリップのように、異なる場所で共通のものを使用する場合には、それぞれの場所で適切な在庫を確保しなければならない。
ボルトやクリップは作業者が手持ちの部品箱の中に入れて在庫を持ったり、パーツフィーダーを使っている場合は適切な在庫を持たなければならない。
そのため、そのようなボルトやクリップは、MRPの在庫量より多くなる。
艤装ラインでの部品手配では、今までのカンバン方式とMRPによる優劣はつけがたかった。
MRPは計画立案のソフトであり、カンバン方式は制御の方式であり、求めているものが異なっている。
MRPによる手配を行っている企業に求められるのは、在庫管理に係る多大な統制管理コストの削減である。
カンバン方式を採用している企業に求められるのは、オプション変更等による生産の自由度を拡大することで顧客対応力を向上させることである。
将来は、カンバン方式がMRPの機能を吸収する形での電子カンバンに発展するものと考えられる。
電子カンバンの数をMRPによって増減させることによって、オプションをほぼ100%反映させた部品手配計画作成システムになる。
MRPの欠点である微調整ができないというのは、コンピュータの処理能力の向上によって解決されるものと考えられる。
MRPは生産計画どおりの部品手配を行うものであり、生産がそのとおりに行われているかを保証するものではない。
計画と実行を混同し、非常に大きな無駄を生じさせている。
カンバン方式はバッファーとしての在庫計画はあるが、MRPでは在庫計画を立案していないことが多い。
そのために、MRPでは在庫が管理されず、大きな問題となっている。
つまり、目標としての在庫量が設定されていないため、在庫管理ができないのである。
部品手配の元となった生産計画と、実際に艤装ラインに投入されるクルマは異なっていることは既に述べた。
これに対処するため、適切な在庫計画が必要である。たとえば、全部品を必要時に対して1時間はやく納入する等である。
艤装工程はライン生産であり、艤装ラインの初めの端にボディが下りた段階で、将来使用される部品数は確定される。
上記の在庫計画を管理するために、艤装ラインに投入する前に1台1台の所要量計算を行ない、バッファー内の部品在庫で管理できるかどうか確認する。
次に、不良品管理はラインでの部品費消を監視するシステムが必要になる。
もともとカンバン方式では通函の中の最初の部品を使用した時、カンバンを外し、決まった時間にカンバンを回収している。
カンバンが外れるタイミングでカンバンのバーコードを読ませることにより、部品の費消状況が把握できるという利点がある。
回収されたカンバンの数と艤装ライン上のボディの流れより、費消が計画以上に進んだ部品、つまり計画より実在庫が少ない部品が判明する。
計画以上に費消が進んだ部品は、取り付け不良が発生したとして、電子カンバンでの発注量を1単位増加させる。
不良品を多く出す部品には、不良に備えたバッファーを持ち、これを管理する。
当然、現物としての不良部品の確認作業は必要である。
これらによって、ラインサイドの実在庫を高い精度で管理することが可能となる。
ラインの進度にあわせた部品手配ができ、後工程引取(プル方式)を維持できる。
それだけでなく車体工場や塗装工場での手直しを反映して、出現の確率を反映して安全在庫を持った発注ができる。
さらに艤装ラインが2時間程度と、生産順序割付から艤装ラインまで1時間ほどあり、部品欠品が発生する1時間から3時間前までには欠品が確定するので、緊急の部品追加も可能になる。
この方式のカンバン方式では、ものとしてのカンバンは必ずしも納入時間帯ごとに返却しなくても良くなる。
これによって、カンバンが空通函といっしょに返却したり、紛失したりすることによるトラプルを避けることができる。
ICタグが普及し、カンバンに使用されるようになれば上記の方法が一段と現実味を帯びてくると予想される。
しかし、電子カンバン方式でも“決まった部品を効率的に補充するシステム”にしか過ぎない。
自動車会社の部品在庫を削減されたが、部品会社では発注に備えて在庫は増加してしまうのが現実である。
現在の課題は、自動車会社・部品会社を含めたサプライチェーンでの在庫の縮減である。
カンバン方式・MRPに関わらず、ほとんどの自動車メーカーの色・オプションを含んだ生産計画が確定するのは、生産の3日前である。
しかしながら、部品メーカーに渡されるデータは不完全なものである。
カンバン方式では月別の内示データだけで、確定したデータとは直接結びつけられていない。
MRPでも自動車メーカーから提示される数字はロットまとめされた数字で、実際の必要数や確定数はわからない。
このことは少品種多量の部品を納入していたころの名残りと考えられる。
これからも多品種少量部品が増える傾向にあり、無駄を省くために内示データと確定データは対応できる形で部品会社に提示する必要がある。
これによって、工場で発生している部品取付け不良率が部品メーカーに明らかになってしまう。
しかし、これは工場に注意を促す効果を持っており、刺激になって良いことだと考える。
さらに、市場のニーズを読みながら、品揃え(車種・オプション)そのものを編成していくことの重要性が大きくなってきている。
市場への洞察を基にした仮説が重要であり、その仮説を販売データによって迅速に検証して、仮説そのものの軌道修正していくことが重要である。
単なる販売情報では、お客様か欲しくて買ったのか、在庫処分で安かったから買ったのかの販売情報が不足している。
売れ筋情報を商談段階からうまく集め迅速に分析することが、生産計画のみならず、部品・資材手配においても重要になっていく。
つまり、カンバンが帰った時点、MRPの確定発注が出た時点のみの情報では部品手配は成立たない。
1月前とか、3ヶ月前の内示が必要であり、生産期間の長い部品は在庫を持つことによって対応している。
内示の予測がSCM(サプライチェーン・マネジメント)全体のコスト削減で重要度を増している。
集め分析したこれらの販売データを部品会社と共有することによって、生産計画の再検討や生産統制に使われている無駄な作業を大幅になくすることができる。
例えば、BTO(Build to Order)を実現させるものは既存の生産管理技術ではなく、どの部品が必要になるかという販売に対する洞察である。
新車発売開始時には過去の販売実績データがなく、どのグレード、どのオプション、どの色のクルマを発注したらよいかわからない。
そのため発売前に販売店の人たちを集めて、発売前のクルマを見せ、発売時の販売台数や好みのオプションなどを推計し、生産計画台数とする。
しかし、この方法では精度が高くなく、実際には発売直後の売れ筋のクルマの動向を見ながら生産計画を修正していく方法がとられている。
伝統的に、アメリカでは開発時から実際に販売予定のモデルを公表し、広く消費者から不満な点などを直していて、同様の動きを目指している日本企業もある。
今後は、トヨタ自動車のガズーのように、消費者からダイレクトに情報を取れる仕組みの構築も重要になってこよう。
調達・購買の情報化
1991年以来、日本の自動車市場は低迷し続けている。
当初は車種の絞り込みや部品共通化等のコスト削減策を中心に行われていた。
最近の消費者の価値観の移行や多様化に対応するため、バラェティに富んだ製品を市場にタイムリーに投入している。
そのため設計開発、生産、物流では更なる多種生産への体制への移行を迫られている。
これら生産現場に求められる要求をまとめると次のようになる。
- 販売価格を下げる(製造原価の削減)
- 変動に対する生産フレキシビリティの向上
- 受注から納品までのリード時間短縮
- 在庫レス経営への転換
- 調達・製・販の連携度強化
SCMラベルによるノー検品
自動車工場への部品納入は、物流においては無検品納入で、商流においては納品書をコンピュータに読ませることによって経理上の計上につなげている。
ピッキングの省力化・正確化を目的としたSCM(シッピングコンテナマーキング)ラベルの使用がある。
このラベルは、部品会社や納入代行業者がピッキングされた単品別部品を入れるコンテナやパレットに付けられる。
部品会社や納入代行業者から事前出荷情報(ASN:Advanced Shipping Notice)を、自動車会社に電送する。
これにより、検品がSCMラベルのスキャニングのみで済むようになることである。
信頼されるピッキングと、単品梱包の際のスキャニングによる再チェックを基に事前出荷情報を作成する。
ピッキングが終わったパレットの部品のバーコードを読ませることによって、SCMラベルに含まれる部品に誤りがないかを再チェックするものである。
現在の部品ごとの納品書では、部品が納入されてコンピュータで読み取らせるのに時間がかかっていたのが、SCMラベルでは即時に納品を確認できる。
また、納品書の読み込みの工数を大幅に短縮できる利点もある。
SCMラベルの最大の利点は、現物の流れと、代金支払いの商流の流れを1本化できることである。
流通業界ではデジタル・ピッキングが行われている。
物流センター等におけるピッキングを行なう場合に、ピッキングすべき商品の位置にデジタル表示された表示器がピッキングすべき数量を点灯表示することによって、商品知識がなくとも正確・容易にかつスピーディにピッキングすることができる仕組みをいう。
一部の部品にはこのデジタル・ピッキングを採用することができると考えられる。
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参考文献