生産管理講座
リーダーシップ論
リーダーシップ
現在の日本では、マネジメントとリーダーシップが混同されている。
マネジメントのスタイルのことをリーダーシップと誤解している。
マネジメントは、組織のフォーマルな階層を通して機能する。
マネジメントは決められた仕事(タスク)を効率よく行なうことで、現在のシステムをうまく機能させ続けることである。
マネジメント組織の典型的な例は官僚組織であり、裁判所のシステムが究極の姿であろう。
一方、リーダーシップは、組織をよくするための変革、とりわけ大変革を推進することである。
そのために、問題点を発見し、ビジョンと目標を作り出すことにある。
リーダーシップはインフォーマルな人間関係に依存する。
組織を動かすうえで、リーダーシップの発揮が重要になってきている。
組織を動かす立場にある人たちは、ますます複雑な人間関係や力関係の中に身を置くようになる。
リーダーは、それらの複雑な依存関係を手繰りながら、役割を果たす。
周囲に単にフォーマルな権力を及ぼすのではなく、インフォーマルな人間関係をうまく処理するのが、組織を動かす人々の重要な仕事になっている。
組織を動かす人々には、マネジメントを行ない、その上リーダーシップを発揮することが求められている。
マネジメントとリーダーシップの区別のできない人々は、変革をマネジメントの手法で推進しようとし、コントロール下に置こうとする。
これでは大規模で困難な変革を行なうことはできない。
一般的に、組織の上層部にいる人ほど、マネジメントよりリーダーシップの発揮に多くの時間を割く。
有能なトップ・エグゼクティブは、自分の時間の実に80%までもをリーダーとしての仕事に当てている。
できるエグゼクティブは、ほとんどの時間を誰か(必ずしも自分の部下とは限らない)と話して過ごしている。
話題は自分の職能分野にとどまらず、さまざまな分野に及ぶ。
そして、命令よりは、あれこれと質問することのほうがずっと多い。
「重要な」意思決定をすることは、実にまれであり、周囲の人々との絆を強めるためと世間話をしたり、冗談を言い合っている。
マネジャーは、直接コントロールできない人たち(組織を含む)や、協力的でない人たちに依存していることが多い。
だからこそ、仕事に極度のフラストレーションを感じることが多い。
なかにはパワーの乱用、自分の地位や名誉のためにパワーを獲得し、行使するまねじゃーもいる。
ゼネラル・マネジャーが計画立案、組織化、人員配置などを行なうには、仕事の性質上、複雑で微妙な手法が必要である。
その核となるのは、「検討課題の設定」と「人的ネットワークの構築」である。
ゼネラル・マネジャーの役割としては、状況が不確実できわめて多様であり、関連情報が多量にあるなか、何をすべきかを明確にしなければならない。
数多くのさまざまな人たちの協力を得て、仕事を成し遂げなければならない。
ただし、その大半の人たちに対しては、直接の統率権を持たない。
情報収集にあたっては、事業や組織、経営全般に関する最新情報を駆使して、相手に具体的な質問を投げかける。
大雑把な質問や、一般的な質問はしない。
それよりも毎日、仕事をするなかで重要な質問をいくつかして、検討課題の設定に役立つ情報を手に入れている。
ネットワークを構築するには、人間関係づくりの戦略を手を変え、品を変えて用いている。
関係を深め、ストレスの多い状況下でもそれを維持するには、仕事と関係のない会話やユーモアが役立つことがある。
ユーモアを交えたり、仕事以外の話題を持ち出すことが多い。
人間関係を維持するには、仕事上重要であるかどうかにかかわらず、相手にとって重要な事柄を話題にしなければならない。
全階層においてリーダーシップが必要である。
できるリーダーは必要とあれば、自分の上司を含めて、どんな人も引っ張っていくのである。
マネジメント階層の一番下に位置する人々ですら、リーダーとしての仕事に全体の20%の時間を使っている。
有能な人は、上司との関係のマネジメントを当然の仕事と考えている。
組織内で自分の成果の責任は自分自身にあり、自分と関わる人すべて(上司も含む)と良い関係を確立し、マネジメントする必要がある。
上司をうまくマネジメントすることは、上司の人となりと、上司が置かれた立場を理解し、自分自身とそのニーズを客観的に判断した上で、上司のニーズにもスタイルにも適した関係を築き上げ、その関係を長く保つということである。
そのため、上司と自分のお互いの期待に応え、上司に絶えず情報を提供する、信頼と誠実さに裏打ちされている。
そして、上司の時間と経営資源を無駄なく使うといったことである。
『できる社員は「やり過ごす」』というのは、当たり前な考え方である。
上司の指示にすべて従うというのは、極端な考えであるとともに無責任な考えでもある。
この考えに沿って、成果主義人事制度を導入したから失敗し、企業を破綻の危機に陥れた。
今、多くの企業でリーダーシップの不足が問題になっている。
カルロス・ゴーン氏の日産自動車の改革は、マネジメント過剰でリーダーシップ不足の会社にリーダーシップを回復させた改革と呼んで良いだろう。
カルロス・ゴーン氏の改革は、ジョン・P・コッター教授の8段階の改革プロセスを実行したものである。
8段階の改革プロセスは、トップダウンで行なわれる形式のものである。
多くの企業でリーダーシップの不足の状態になっているのは、1980年代のTQC運動から日本の産業研究に至る生産部門に対する妄信と呼応している。
それに対応して、更に管理を強化し、リーダーシップの育成を阻害してしまいました。
現在、日産自動車が再び停滞しているのは、リーダーシップ育成がうまくいっていないためと考えらる。
そのことは、人事部門を解体せず、温存したことが原因と思われる。
現在の日本では、まだまたマネージメントのスタイルのことをリーダーシップと誤解して、リーダーシップの本質を理解していないように見受けられる。
ジョン・P・コッター教授は、マネジメントとリーダーシップの違いを下記のように書いている。
マネジメントの仕事は、計画と予算を策定し、階層を活用して職務遂行に必要な人脈を構築し、コントロールによって任務をまっとうすることである。
また、リーダーとしての仕事は、ビジョンと戦略をつくり上げ、複雑ではあるが同じベクトルを持つ人脈を背景に実行力を築き、社員のやる気を引き出すことでビジョンと戦略を遂行することである。
日本の研究者としては、高橋信夫教授の「できる社員は『やり過ごす』」の著書ぐらいしかないのが現状である。
それも多くの研究者から異端視されているのが現実である。
ビジネスにおけるリーダーに求められる資質は、次のとおりである。
- ビジョン・価値観・使命感・理念・大義
- 目標・目的の設定能力
- 戦略性
- 動機づけ能力・人を動かす力
リーダーシップを発揮するためには、
- 機能的能力・マネジメント能力
- 人間的能力
である。
リーダーシップの近年の形態研究についてはR.R.ブレーク(Blake)とJ.S.ムートン(Mouton)の「マネジアル・グリッド(Managerial Grid)」、三隅二不二氏の「PM理論」がよく知られている。
「マネジアル・グリッド」は、管理者行動は仕事、生産への関心と、人間への関心の度合いの組合せによってとらえることができるという考えから出発したもので、縦軸に人間に関する関心を、横軸に業績に対する関心をとり、5つの基本的リーダシップ・スタイルが類型化されている。
- (1・1)型 消極型
- (1・9)型 人間中心型
- (5・5)型 中庸型
- (9・1)型 仕事中心型
- (9・9)型 理想型
今までの「マネジアル・グリッド」の捉え方は、「仕事・生産への関心」と「人間への関心」にトレード・オフの関係があるかのように考えられてきた。
“生産への関心”は、機能的能力とマネージメント能力である。機能的能力は、専門分野の知識と、普遍的な情報リテラシー能力等である。
マネジメント能力とは、PDCAの管理サイクルを回すことによって、仕事を改善する能力である。
しかし実際に思っているのは、刈り取りを優先し、部下を燃え尽きさせるというイメージで「マネジアル・グリッド」はできている。
ここで問題になるのが、“人への関心”の中身である。従来、日本のリーダーシップでは、因習的なムラとしての管理が“人への関心”であった。
人財管理では、“人への関心”は、『人の心に火を燃やす事のできる』という意味である。
ただ単なる『スキル』を超えて『マインド』の世界で人を駆り立てる人である。
つまり、“人への関心”とは、『人間的能力』を意味する。
人は、説明や説得を越えて納得した時、より良い大きな仕事をする。
『この人のあとに、ぜひ付いていきたい』という人が存在して、初めて人はリーダーたり得る。
しかし実際には、外から見て仲良くやっているように見えるかだけの評価でしかない。
つまり、「人間への関心」が高いとは、なあなあで仕事をしていて、効率が悪いと考えられている。
“人在”は従来は、スキルレベルは高いが、いまひとつ心が燃えてない人と言われていた。
これは人事部の言い訳であり、実際は本人のやりたい仕事と職務のミスマッチである。
見方を変えれば、派閥となっている部門が最大の障害となっている。
日本では「マネジアル・グリッド」がほとんど活用できない。
それは日本の組織が、各々の部門では仲良く成果を上げているように見えるが、部門を上げて協力することは少なく、全社的な成果はあまりあがっていない。
「マネジアル・グリッド」では良い成果が上がっていることになっても、実際に全社的な成果は上がっていないからである。
「PM理論」は、集団や組織における目的達成に指向したリーダーの働き、つまり仕事中心的な監督者行動であるが、それをP(Performance)とし、集団や組織の過程を維持強化する働き、すなわち部下中心的な監督行動をM(Maintenance)としたうえで、PとMは直交する座標軸において、P、M両機能の相互的強度によってリーダシップが類型化されるというものである。
PMは両機能の最高を示し、pmはその逆で最低のばあいを示している。理想類型はPMである。
状況に呼応するリーダーシップの理論(SL理論)
オハイオ大学のリーダシップ研究センターのポール・ハーシーとケネス・H・ブランチャードの考えたリーダーシップ・モデルでは、指示的行動と協労的行動を軸として分析される。
4つの基本的なリーダー行動を、高指示低協労、高指示高協労、高協労低指示、低協労低指示と呼ぶ。
これら4つの基本スタイルは、本質的に異なるリーダーシップ・スタイルを表している。
指示的行動とは、リーダーが、グループのメンバーの役割を組織化し明確化することの程度、すなわち各人がどのような活動をいつ、どこで、どのように達成しなければならないかを説明しようとする度合いを指し、組織構造の明確化やコミュニケーション経路、業務達成手段の確立への努力を特徴とする。
協労的行動とは、リーダーがコミュニケーション・チャンネルを開き、社会連帯的指示と心理的撫和を与え、相手の行動を促進することによって、自分とグループ・メンバーとの関係を維持することの度合いを指す。
(高)
協 労 的 行 動
(低) |
高協労低指示 (スタイル3)
|
高指示高協労 (スタイル2)
|
低指示低協労 (スタイル4)
|
高指示低協労 (スタイル1)
|
|
| | (低) 指示的行動 (高) |
SL理論は、効果的リーダーシップ・スタイルを部下のマチュリティ(成熟度)の程度との関係で考えている。
SL理論では、部下の課題達成マチュリティのレベルが高められるにつれ、リーダーは部下のマチュリティが中程度に至るまでは、指示的行動を減じていき、あわせて協労指向的監督行動を増していくことが必要であるとされる。
部下のマチュリティが平均(中程度)以上のレベルに達した場合、指示的行動だけでなく、協労指向的監督行動をも控えることが望ましい。
こうして部下の課題達成だけでなく、心理的にも成熟(マチュアーに)せしめようとするわけである。
部下のマチュリティが低いレベルから高いレベルに移るに従い、適切なリーダーシップ・スタイルが変化していく。
リーダーシップ・スタイルは、高指示/低協労、高指示/高協労、高協労/低指示、低協労/低指示へと変化していく。
| 基本スタイル | 効果的な場合 | 非効果的な場合 |
高指示 低協労 |
目標達成の方法を明確に熟知していると受け取られ、頼り甲斐があると思われる。 |
他人に一方的にやり方を押し付け、時に不愉快と思われ、短期的な成果にしか関心を持っていないように見られる。 |
高指示 高協労 |
目標の設定、仕事の組織化というグループのニーズを満たすとともに、高度な社会連帯支持をも与えてくれているように見られる。 |
必要以上に仕事の指示に熱心で、時に対人関係が誠意のないうわべだけのものと見られる。 |
高協労 低指示 |
部下に暗黙の信頼を寄せ、彼らの目標達成を促進することに意を用いていると見られる。 |
基本的に和を重んじ、人間関係を損ねたり、「いい人」という自分のイメージを傷つける恐れのあるときには、仕事を犠牲にすると見られる。 |
低協労 低指示 |
仕事の進め方については、部下の決定に正しく任せ、社会連帯的な面でもほとんど不必要な干渉はしないと見られる。 |
求められているのに、必要な仕事の組織化や社会連帯的指示の提供を怠けると見られる。 |
高指示/低協労的リーダー行動は、部下の役割を明確にし、何を、どのように、いつ、どこでなどいろいろ作業の仕方を一方的に教えるという特徴を持つので、これを「教示的(Telling)」と呼ぶ。
マチュリティ・レベルの非常に低い人たちを意思決定に参加させることは「無知を集めること」であり、「盲人が盲人を導く」ようなものである。
したがって、指示的リーダーシップが最も効果を高める。
高指示/高協労的リーダー行動は、ここでもなお多くの指示がリーダーによって下されるので「説得的(Selling)」と言われる。
この場合、情報交換および社会的連帯的支援を通じて、部下がリーダーの指示を心理的抵抗なしに受け入れるよう努力が払われる。
高協労/低指示的リーダー行動は、対象となる部下の側に、仕事の遂行に必要な知識と技能が備わっているので、相互の情報交換およびリーダーの促進奨励的行動を通じた、双方の意思決定への参画が見られるので「参加的(Participating)」と読んでいる。
低協労/低指示的リーダー行動は、部下が課題関連マチュリティも心理的マチュリティも高いので、責任責任権限を大きく委譲し、監督のあり方も大まかなものとなり、部下に「思いどおりにやらせる」ことになる。
これを「委任的(Delegating)」と呼んでいる。
管理監督行為とは、部下の行動を高度に構造化し、部下にこと細かな指示を与えること、と思われていた。
このスタイルは組織の下層における教育レベルの低い未熟練労働者には適切であるかもしれない。
高いマチュリティの行動がとれる、教育レベルの高い、意欲的な人たちには、このような指示と統制による管理監督を行うのは疑問である。
最近では、マネジャーの役割は、部下の責任負担能力が向上するにつれ、変えられなければならないと分かっている。
マチュリティと教育レベルの高い労働者を扱う場合、マネジャーの役割は格式張った厳格な監督・統制から、一般的でゆるやかな監督・統制へ移行すべきである。
状況に呼応するリーダーシップの理論(SL理論)では、リーダーシップ・スタイル・プロファイルを下記のように分類している。
リーダーシップの基本スタイルが、4つのスタイルの中の2つにまたがる場合、もしくは基本スタイルと副次スタイルを含む「二重スタイル・プロファイル」について分析している。
リーダーシップ・スタイル・プロファイル1−3
「X仮説Y仮説」プロファイルとも呼ばれている。
スタイル2およびスタイル4への柔軟性を欠くプロファイル1−3の人たちは、人間はX仮説かY仮説かのどちらかであるという目で部下を見る。
ある種の人間は、怠け者で信頼がおけず無責任であると思っており、こんな連中を働かせるためには、強制するか、褒美で釣るか、それとも罰しなければならないと考え、細かい点まで監督する傾向を持つ。
また、ある種の人間を創造的な意欲のある人たちだと好意的にみて、これらの人たちに対しては、社会連帯的な精神的支援を与えるだけで十分と考える。
このリーダシップ・スタイル・プロファイルを持つマネージャー達は、自分の監督下にある部下たちについて「良い奴」「悪い奴」あるいは「見方」「敵方」に分類していることが発見されている。
このプロファイルのマネージャーに、マチュリティのやや低いレベルの部下が付けられると、この部下をマチュリティのやや高いレベルへか、あるいはマチュリティの極めて低いレベルへのどちらかへ持っていってしまう。
このスタイルのマネージャーの問題点は、自分の嫌いな部下のポテンシャルを伸ばすためには、ほとんど何もしないことである。
このマネージャーは、嫌いな部下たちに対して常に高指示/低協労の監督を行うことによって、これらの部下たちを未熟な状態に押し込んでしまうのである。
それと共に、この種のリーダーは、委任を完全に行って、部下の成長を図ることができず、このマネージャーに対する心理的依存をいつまでも続けさせる傾向を持つ。
リーダシップ・スタイル・プロファイル1−4
このプロファイルの人は、前述の「X仮説Y仮説」プロファイルの人に似たところを持っている。
だが、他人に対する個人的な好みを善悪二者択一で決めることはない。
彼の分類基準は、有能さの程度にある。
これらのマネージャーは、有能なら放っておくが、無能なら「つきまとって」細かく監督するする。
このスタイルのリーダーは、危機状況における働きかけに優れている。
問題解決に時間的余裕のない、しかも、重大な危機に見舞われた組織へ働きかけを行う場合、この種のリーダーはうってつけだろう。
この種のリーダーは、統制的働きかけに巧みで、危機状態に飛び込み、これを急旋回させて、うまくいくと、人々を高いマチュリティ・レベルへ押し上げることがある。
このプロファイルを持つリーダーが、マチュリティ・レベルが普通のレベルを示すグループをリードする立場に置かれると、部下のマチュリティが成熟かるか、あるいは退化するかのいずれかで扱ってしまいやすい。
リーダーシップ・スタイル・プロファイル2−3
このスタイルの人は、平均的マチュリティの人たちを部下にしたときには問題がない。
しかし、厳格な規律を必要とする場合や、マチュリティの極めて低い人たちを相手にする場合、反対に有能な人たちへの委任度を高めて彼らをいっそう育てようとする場合には問題がある。
教育水準が高く高度に工業化されている地域では、このスタイルが最も多い。
このプロファイルを持つリーダは、普通程度のマチュリティを持つ人たちをリードするときには極めて優れたスタイルである。
だが、このプロファイルを持つマネージャーが、自分の能力をさらに伸ばすためには、必要に応じて、スタイル1およびスタイル4を使えるよう励むべきである。
リーダーシップ・スタイル・プロファイル1−2
このプロファイルを持つマネージャーは、協労的姿勢を高めたり低めたりする能力を持つことが多いが、「偉そうに振舞って」いないと、つまり、指示をしたり命令したりしていないと、気持ちが落ち着かないようである。
このプロファイルの人は、マチュリティの極めて低いか、相対的に低い相手に対して有効である。
生産現場や製造工場のように、生産への大きなプレッシャーがかけられている職場の人たち、あるいは時間の非常に切迫した危機的状況にさらされているマネージャーにとって、このスタイルが極めて有効であることが多い。
しかし、このリーダーシップ・スタイルを持つマネージャーは、危機が去り時間的切迫が薄れると、部下を十分に成長せしめることができない。
リーダーシップ・スタイル・プロファイル2−4
このプロファイルの人たちは、一般に基本スタイルがスタイル2で、副次スタイルがスタイル4という形をとりやすい。
このプロファイルは、対話的で高い協労的行動に満ちた環境で、指示的に振舞うとともに協労的でもありたいと願うマネージャーの特徴である。
このプロファイルでは、スタイル3を経ずに、スタイル2からスタイル4へ移るため、仕事を持ち込まれた時、部下はこの上司から負担をかけさせられたという感じを持つに違いない。
もしスタイル3を経てスタイル4へ移ったとしたら、このやり方を懲罰的とみず、報償的行為とみなしただろう。
リーダーシップ・スタイル・プロファイル3−4
このプロファイルの人たちは、協労的行動を高めたり低めたりする能力を持つ傾向にあるが、他人の行動のお膳立てをしたり、教示をしたりすることを苦手とすることが多い。
したがって、このスタイルは、マチュリティのやや高い相手、また極めて高い人たちに接するときには適当であるが、マチュリティの退化しつつある再指導の必要な相手や、学習過程の初期段階にあってもっと指示の必要な未熟な人たちに接するときには、問題を起こしがちである。
このプロファイルは、「上から」の指示をほとんど必要としない老練で有能なスタッフに恵まれた組織状況にある、優秀なトップ・マネージメントの特徴であることが多いのである。
組織構造の最下のレベルにある監督者から、トップマネージメントと呼ぶレベルをみた時、各階層それぞれにおいて有効なろマネージャーたるためには、異なったリーダーシップ・スタイル・プロファイルが必要である。
低レベルにおける監督層では、リーダーシップ・スタイル・プロファイル1−2を示す傾向が多い。
逆に、有能なトップ・マネージャーは、リーダーシップ・スタイル・プロファイル3−4をとることが多い。
第一線の監督者は、基本スタイルが1で、副次スタイル2が適当である。
彼らが昇進すれば、基本スタイルが2で、スタイル1と3を副次スタイルに持つ方が適切である。
しかし、工場出身者はリーダーシップ・スタイル・プロファイルを変更することが難しく、仕事の構造を構築したり、創造的な仕事はできない傾向にある。
ミドル・マネージメンには柔軟性が必要である。
彼らは必要に応じて指示的なスタイル1もしくは2の働きかけをせねばならないのと同時に、協労的なスタイル3と4をとらなければならない。
伝統的にマネージャーの役割は、計画、組織化、動機づけ、統制にあるとされてきた。
要するに、マネージャーは何を、いかになすべきかを指示してきたのである。
金銭による刺激、賞罰などを操って、労働者を動機づける努力をしてきたのである。
したがって、管理監督行動とは、部下の行動を高度に構造化し、部下にこと細かな指示を与えること、と思われてきた。
前述のように、このスタイルは組織の下層における教育レベルの低い未熟練労働者には適切であるかもしれないが、高いマチュリティの行動のとれる、教育レベルの高い、意欲的な人たちには、部下の責任負担能力が向上するにつれ、変えられなければならないと分かっている。
人事管理概論で、『多くの日本の製造業が、それも歴史ある大企業に業績の悪い企業が多い。
それらの企業では生産システムが生産指向であるとともに、人事システムも生産指向に対応して、この2つが強固に結束している』と書いた。
生産部門のリーダーシップは、高度の仕事の構造化において、細かな点におけるまでの『命令と統制』によってなりたっていることが多い。
つまり、“年功序列賃金”“終身雇用”“企業内組合”という日本企業の3種の神器を使って、社員の囲い込みによる画一化を行っている。
更に、職務記述書を細かく規定することによって、仕事の高度の構造化が成し遂げられている。
生産部門は慣れ親しんだ高度の仕事の構造化における『命令と統制』の管理スタイルを変更したくないと想い、変更を阻止しようとする。
工場では高度の仕事の構造化における『命令と統制』以外のリーダーシップを身に付けることができない。
それだけでなく、上司が高度の仕事の構造化における『命令と統制』のリーダーシップを保持している場合は、部下のリーダーシップの進歩を妨げている。
そのために、生産部門では改革を行っていく意欲よりも、過去の仕事をそのまま続けていくことを望んでいる。
一方で、人事システムが創造的仕事を重視しない、または否定し、ルーティン業務のみを重視している場合がある。
この場合、開発部門等の知識創造を必要とされる部門が、ルーティン業務化され成果が上がらなくなる。
これは生産指向から顧客指向に転換した現在において致命的な欠陥である。
人事システムがルーティン業務指向であるために、生産部門は『命令と統制』のリーダーシップを保持できる。
人事システムのルーティン業務指向は、生産部門の後ろ盾によって保持される。
過去の事実が経験を通して墨守不能とわかっていても、変化を受け入れることができず、かたくなに新しい事実を拒否する。
結果として、いつまでたっても生産指向から顧客指向への転換は行われないことになる。
そのため業績の悪い大企業は、人事システムがネックとなり全く新しい高度な仕事の構造化できていない。
実践
今日の企業をとりまく環境はダイナミックに変化している。
環境変化に対して企業そのものも変化しなくてはならない。
有能なマネージャーたらんとするためには、企業内で起こる変化を、変化が起こるまで座して待つだけで満足してはならない。
変化を計画し、指揮し、統制する方策をマネージャは考え出さねばならない。
変化を計画し、実践しようとする場合には、この変化を助けるドライビング・フォース(推進力)と、レストレーニング・フォース(抑止力)が働く。
人間に起こる変容を4つのレベルで捉えられる。
- 知識上の変化
- 態度上の変化
- 行動上の変化
- 集団行動もしくは組織行動の変化
知識における変化は、本や記事を読んだり、尊敬する人から何か新しいことを聞いたりすれば、知識は変わる。
態度の背景となる構造は、感情という要素が、好悪いずれかの方向をもって加わっているので、知識の構造とは異なる。
感情という要素が加わることによって、態度変化は知識上の変化よりも難しいものになる。
個人の行動における変化は、前二者のいずれより、遥かに難しく、また時間がかかる。
例えば、マネージャーが意思決定における部下の参画・参与の効果について知識を持っていた場合、いや、さらに進んで、こうした参画を許すことが仕事の成果を上げることにつながる、と感じていても、委譲を進めることができず、部下と意思決定の責任を大きく分かち合うことができないかもしれない。
この知識、態度、行動相互間の落差は、マネージャーたちが権威主義的雰囲気の中で経験を積んできたせいかもしれない。
この過去の経験が「落ち着ける」習慣の型を形成せしめるのであろう。
個人の行動を変えること自体極めて難しいが、集団や組織に変化を導入しようとすると、さらに複雑なことになる。
1人や2人のマネージャーのリーダーシップ・スタイルなら、効果的に変容せしめることもできようが、組織全体を通して従業員の参画のレベルを上げようとすれば、これは極めて時間のかかるプロセスとなる。
つまり、なん十年もの間に、形成された習慣、気風、伝統を変えようとするに等しいからである。
変化の順序にみられる2つの型がある。
- 参画的変化サイクル
- 規制的変化サイクル
参画的変化サイクルは、個人なり集団なりに新知識を与えた時に始まる。
そのデータ(知識)を、まず集団が受け入れ、このデータ(情報)に対する好意的態度と望ましい方向に向かう積極的姿勢がその集団に生まれるよう期待される。
このレベル(段階)の変化での効果的方策は、目指す目標にいたる方法を新しく選び出し定式化する過程へ個人なり集団なりを参画せしめることである。
これは問題解決への集団参画である。
次の段階は、こうして生まれた積極的姿勢を、実際の行動に結び付けることである。
この段階は、ずっと難しい。
意思決定への部下たちの参画度の増大に心を配る(態度)ことも意味のあることだが、実際に何事かを行うに際して参画を実行(行動)してみることも、それ自体の意義を持つ。
この場合の有効な方策は、まず、職場集団の正式、および非公式リーダーを選んで、予定する変化の方向への彼らの指示をとりつけ、これがうまくいったら、職場の他の人たちが尊敬しリーダーと認めるこれらリーダーを通じて、リーダーの行動を見習うように仕向けて、変化を実現していくことである。
規制的変化サイクルは、全組織に、上級マネジメント、地域社会、法律といった外的圧力によって変化を押し付けることに始まる。
ポジショニング・パワーを使用して、参画的変化サイクルとは逆に、集団の行動から個人の行動、態度、知識へと影響を及ぼす方法である。
参画的変化サイクルは、達成意欲の高い、責任回避せぬ、かつ、新しく導入された方式でのやり方に知識を持ち、経験のある個人ないし集団に対して、概して適切である。
換言すれば、対象課題についてマチュリティの高い人たちに向いているのである。
変化がひとたび実施され始めると、これらの人たちは変化実践の責任を遂行するうえで極めて有能である。
これらの人たちは、変化と向上を歓迎する反面、規制的(高指示/低協労)な形で実施されると、かたくなに変化に抵抗する。
強圧的規制的変化スタイルも、抱負の小さい、依存的な強いらぬ限り責任を回避しようとする個人や集団に対するときには、極めて適切であり生産的である。
事実、こうした人たちは、それに対する経験も十分でなければマチュリティも十分でない意思決定を迫られるよりも、リーダーから指示を受け、行動のあり方(構造)を指示されることを望む。
責任を担う機会に恵まれたこともなく、しかもマネージャーの指示に頼りきりのスタッフに対して、変化を参画的に導入するのは不適切である。
変化の過程には3つの局面がある。解凍(Unfreezing)、変化(Changing)、再凍(Refreezing)である。
解凍(アンフリージング)
解凍の目的は、個人なり集団なりを、変化に向けて意欲づけ、用意せしめることである。
これは人間に作用している(心理的・社会的)諸力を再編成せしめるところの「溶解」のプロセスであり、これを通して、変化への必要を意識させるためのものである。
急激な解凍の必要がある時には、次の要素が共通して存在するようである。
- 変化の対象とされる相手を、慣れたしきたり、日常の情報源、日頃の付き合い仲間、といったものから隔離する。
- 一切の社会連帯的指示を転覆ないし破壊すること。
- 対象となる相手に屈辱的で自己の矮小さを思い知るような経験を与え、それによって、これまで本人が抱いてきた態度や行動が無価値なものと意識させて変化へ動機づける。
- 変化する姿勢、意欲をすかさず報い、変化を嫌う姿勢・態度を徹底的に罰すること。
変化(チェンジング)
人間がひとたび変化へ意欲づけられると、新しい行動様式を受け入れる気持ちが生まれる。
このプロセスは、次の2つのいずれかで起こりやすい。
ひとつは、同一化および内面化である。
同一化(Identification)は、相手を真似ることを通じて、新しい行動様式を習得する場合の相手というモデル、そういったモデルが1つないし複数で存在する時に起こる。
内面化(Internalization)は、うまくやるためには、どうしても新しい様式の行動をしなければならない、といった状況に置かれた時に起こる。
もうひとつはの方法として、力と服従がよく議論される。
支配的立場にある人間が、賞罰を操作して相手を強制的に変化させるのがそれである。
この場合、変化強制者がそこにいる間、行動が変化したように見える。
しかし、変化強制者がいなくなると、変化がもとに戻ってしまうことが多い。
再凍(リフリージング)
人柄および他人への心くばりの仕方の両方、もしくはどちらかに、新しく習得された行動が組み込まれ、固定化されることを「再凍」という。
新しい行動の習得中に、そのまま内面化されるものとすれば、つまり再凍が自動的に促進されていることになる。
このことは、『変化の過程にある人が、期待される方向へ絶えず強化促進を受ける』環境に置かれることがいかに大切か示している。
多くの教育プログラムの効果が短命であるのは、習得した行動様式を強化促進することのない環境、いや、敵意すら持つ環境へ被訓練者が帰っていくからである。
知識創造過程として次の3点が重視されている。
『場』とは知識創造を行う『場』であるとともに、知識創造を活発にする『場』でもある。
よく言われることに、ホンダの自由で闊達な雰囲気で、若い人の意見もよく聞いてくれるというのは、まさに知識創造の『場』を重視しているからである。
自由闊達な企業風土というのは、知識創造の『場』、最近よく言われている“気楽にまじめな話しのできる場”が多くある企業である。
イノベーション遂行のためには、異なる分野や思いがけない情報との接触が不可欠である。
トヨタではトヨタ生産方式などが知識資産であると言える。また、ホンダでは本田宗一郎氏や優秀な経営者の言動が書物になり、知識資産となっている。
藤本隆宏教授の分析で有名になった重量級のチーフ・エンジニアは、まさに知識創造のリーダーシップある。
参考文献
- 『リーダシップ論』(いま何をすべきか) ジョン・P・コッター著 1999年12月 ダイヤモンド社
- 『できる社員は「やり過ごす」』 高橋信夫著 2002年7月 日経ビジネス人文庫
- 『行動科学の展開』(人的資源の活用) ポール・ハーシー、ケネス・H・ブランチャード著 1978年5月31日 生産性出版
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