フローター釣行記

99年11月某日、岡山市からやや北西にある隣町の小さなダム湖にフローター(キックボート)を浮かべた。実は夏には入手していたのだが、実釣に使用するのが今頃になってしまった。この日がフローター3回目の釣行である。

前回と前々回は釣行時間に余裕がなかったり、途中で竿を折ったりして中途半端なままで、フローターのテストが出来ただけだった。しかし、この浮遊感はなんと言えばよいのか、かなり癖になりそうな感覚である。下半身無重力状態とでも言うべきか。

この日は時間に余裕があるものの、あいにくの天気だ。普通こんな天気にバス釣りなんぞしないのだが、どうやら週間天気予報から考えると、気温的にこの日が最後のチャンスのようだった。さすがに寒風吹きすさぶ中では竿も出せないだろう。また、なんとか今年中に魚の顔をみてフローターでの釣果を記録しておきたいという変なこだわりもあり釣行することにした。

私が購入したフローターはSTILLWATER社のデルタオープンフロントSFS107である。フローターは大きく分けて、その形状からO型、U型、H型の三種類がある。歴史的に言えば、トラックのタイヤチューブを利用したO型が元祖(現在もO型の多くのチューブはタイヤチューブ)である。日本で現在バス釣りのアイテムとして扱われているが、元はといえば、故国ではトラウトを狙うフライフィッシャーマンが、バックスペースの取れない湖沼での使用を考えてはじめたと言われている。なかなか日本でそういった使用の想定は難しいかも知れないが、何カ所か使えそうな場所があるので、来年は使用レポートが書けそうかなあ・・・話が横へそれた(^^;)。

SFS107はU型である。フロントが開口しており、乗り降りが楽だ。また後部が三角形の頂点のようにすぼまっており、移動時の水の抵抗が少なくなるようにデザインされている。川崎のプロショップヘイズで購入した。ここは日本のフローターフィッシングのさきがけであり、ショップ自体が持っているフローターに関するノウハウは多分日本でもトップレベルであろう。オンラインショッピングもやっているので、興味のある方はHPを訪問されたし。

さて、釣り場についてチューブに空気を入れて膨らませているとついに空が泣き始めた。準備を終えレインジャケットを着込んでから、静かに湖面に滑り出た。雨は降っているが風もなく、また他の釣り人も皆無で貸し切り状態。いい感じである。#6の9フィートロッドにバスバグを結び岸際をチェックしてゆく。期待に反してか、案の定かわからないが、さすがにもう晩秋ともなると水面に興味を持つ奇特な魚は少ないらしく、魚の反応はない。三十分は過ぎていたと思うが、岸から5mくらい離れた場所に斜めに顔を出している立木のポイントでようやく小さな反応があった。バスだ。直ぐに同じポイントの別の場所から一匹フライに出てきた。25cmのバスだった。フローターでの初釣果である。

気をよくして、今度はゾンカーや重たいシンカーを巻いたストリーマー等で広い範囲を探る釣りに変えた。フローターの場合ボートと違って自分のキックで移動しなければならない。次から次へとポイントポイントに素早く投げどんどん移動して行くというような釣りは向かない。まあ物理的にも無理なんだが、気分的にものんびりしてしまう(笑)。ハーリングしたり、適当に投げながら、エントリーした場所とは反対側の小さなインレットにやってきた。

タングステンアイを付けた妙な形をしたジグのようなストリーマーを引っ張っているとあたりがきた。チヌのような抵抗をするその魚はやっぱりブルーギルだった。22cmとギルにしてはまあまあのサイズで、さっきのバスよりもたくましさを感じる個体だった。このあたりで釣りを始めてから2時間ほど経過している。ネオプレーンのウェーダーごしに水の冷たさがだんだん負担になってきた。一度砂が堆積し小さな州が水面にでているところで休憩を入れた。用意しておいたおにぎりをほおばり、お茶を飲んで再びこぎ出す。

結局再びさっきのバスが釣れた場所までなにも反応が無く戻ってきてしまった。時刻は午後4時である。最後のチャンスに立木回りをハードポッパーでじっくり狙ってみる。トップウォーターのルアーと同様に、水面に浮くフライはその場にステイさせることで、長時間姿をアピールすることができる。着水後、ストラクチャーの側まで移動させたら、なるべく動かさずにじっとステイさせる、このパターンで20cmと30cmの二匹のバスをなんとか追加することができた。

フライでバスを狙うには季節的に遅すぎたような気がする。初夏から晩夏くらいが一番面白い釣りが出来そうだ。もっとも私はそのころは山中の渓流にいるはずなので、ジレンマにおそわれそうだ。

#フローターは浮いている間は気分がいいものだが、水にはいるときと上がるときに注意が必要である。足ヒレ(フィン)を履いたままでは非常に歩きにくいし、バランスも取りにくい。また水から上がるときは、浮力のためいままで無重力だった足に急に体重がかかるので身体が必要以上に重たく感じられる。宇宙からの帰還状態である(笑)。くれぐれもご注意を。