モ−ツアルトさんは生涯旅人であった.もしかしたら彼はどこかの星から旅の途中でこの地球に立ち寄り,そして足早に去っていったのかもしれない.そう思えるほど彼は限りなくわれわれに近い心を持っていた反面,因習や時代感覚や18世紀の人間の常識が欠けており彼の心は宇宙的であった.彼は生まれながらに優しくて細やかで美しい心を持っていたが,決して慎ましやかでなく,自己主張の強い自信家であった.
彼の生きた200年以上前のヨ−ロッパの交通機関は馬車か船であり,多くは馬車に揺られて,何日もかけて旅をした.彼の旅した範囲は信じられないくらい遠く広大である.いったい何のために?
幼年時代は父親レオポルドがわが息子の才能を見せびらかすために,また息子の中に音楽の天才を見た父親が息子に広く音楽に目を開かせる,つまり英才教育のために.この試みは大成功したが,反面,同年代の子供たちと一緒になって遊ぶこともなく,世間知らずの変わり者になった.
モ−ツアルトさんは父親以外には先生はなく,学校にも行かなかった.音楽以外の教育もすべて父親が教えた.
青年期以後はより良い地位への就職と収入を求めて必要以上に徒労な旅をした.母親と2人で旅行したパリでは,母親を一人宿に置き去りにして音楽会,社交,女遊びに明け暮れ,母親は寂しさと心痛で死んでしまった.
一方,彼が旅行から得たものは?.父親からは教えて貰えなかった自由の世界,多くの人々,とくにハイドンとの出会い,それにかなりの収入を得たにもかかわらず貧困.それからコンスタンツエという愛妻,悪妻との出会いと結婚.フリ−メイソンへの加入,世間知らずの彼は利口に立ち回ることが出来ず,ただひたすらに音楽の中で走った.そして余りに早く命を使い果たして35歳という若さで死んだ.
彼の23曲の弦楽四重奏曲は彼の「心の旅」を私たちに語りかける.
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主な参考文献:
1.日本語文献
属 啓成:モ−ツアルト I,II, III(音楽之友社,1991)
海老沢 敏:モ−ツアルトの旅 1,2,3,4,5(音楽之友社,1991)
吉田秀和(編訳):モ−ツアルトの手紙(講談社,1974)
柴田治三郎:モ−ツアルトの手紙(上,下)(岩波書店,1984)
井上和雄:モ−ツアルト 心のの軌跡(音楽之友社,1990)
新音楽辞典(音楽之友社,1999)
その他.
2.英語文献
R. W. Gutman: MOZART; Harcourt (San Diego, NY, London, 1999)
H. Mersmann: LETTERS OF WOLFGANG AMADEUS MOZART; Dover (NY,1972)
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